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"The Cold War and American Science"日本語訳,1月25日出版 [仕事とその周辺]

(1/22)出来ました。→姿。末尾に他にも追記あり 最新情報はこちら
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cover300w.jpgこのブログでだいぶ前から紹介していました(例えばこの記事)、アメリカの軍産学複合体についてのドキュメンタリー本、ようやく出版の運びとなりました。書店に並んだらぜひ手に取ってご覧ください。帯に書かれる予定の文章と、奥付部分を紹介します。かなり派手なカバーも(右の写真)。
軍事研究と科学者との関わりをテーマにした翻訳本としては、原爆開発や、著名な科学者を題材にしたもの以外はあまり見かけない。本書は、現代アメリカの理工系有名2大学における、第二次世界大戦から米ソ冷戦期の軍事研究を、個人と組織の両面から描いたドキュメンタリーである。一般に知られているような著名な科学者はほとんど登場せず、MITとスタンフォードという超一流の大学とはいえ、いわば「普通の」研究者たちがどのようにして軍事研究に組み込まれていったかを、詳細に明らかにしたものである。
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米国の科学と軍産学複合体 ――米ソ冷戦下のMITとスタンフォード *
(原題:The Cold War and American Science ―The Military-Industrial-Academic Complex at MIT and Stanford, Stuart W. Leslie)
1月25日 初版第1刷発行 372ページ
著者 スチュアート・W・レスリー
訳者 豊島耕一・三好永作
発行者 高須次郎
発行所 緑風出版
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最終章に出てくる「3月4日のマニフェスト」は、本には収録されていませんが、こちらに翻訳を紹介します(筆者訳)。1969年春、軍事研究に反対して立ち上がったMITの学生による、3月4日のストと集会への参加を呼びかけた文章で、原文はUCS(Union of Concerned Scientists,憂慮する科学者連盟)のサイトにあります。
「3月4日のマニフェスト」
Japanese translation of the 'March 4 manifesto'

科学的および技術的知識の誤用は、人類の生存に対して大きな脅威を与えている。ベトナムでの行為を通じて、私たちの政府は、賢明で人道的な決定を下すという能力についての信頼を揺るがせた。また政府は、我が国が持つ巨大な破壊力をさらに拡大する意図を持つ不穏な兆候もある。

このような事態の進展に対する科学界の対応は絶望的なほどにバラバラな状態である。これらへの対応策を考える小さなグループと、政府内でこの流れを食い止めようとしたがほとんど失敗した少数の優れた男たちがいる。懸念を持つ大多数の人たちは傍観者にとどまっており、影響力がない。私たちはもはやこの問題に関わらないままでいることはありえないと感じている。

したがって、私たちはMITと全国の科学者と技術者に、一致協力した行動とリーダーシップのために団結することを呼びかける。

これらの目的のため、私たちは以下のことを提案する。

1. 科学技術が現実にまたは潜在的に重要性を持つ分野における政府の政策の、批判的かつ継続的な調査・検討を始めること。

2. 研究成果の応用を、現状の軍事技術重視から、環境問題や社会問題という緊急を要する課題解決の目的に方向転換するための手段を考案すること。

3. 学生に対して、破壊的な兵器システムの構築の仕事に加わる前に、科学と技術の恩恵を人類にもたらすことに専念するという可能性と希望を伝え、そしてここで提起された問題を精査するよう求めること。

4. ABMシステム、核兵器の拡大、化学兵器や生物兵器の開発など、誤った助言による、そして危険なプロジェクトに対する断固たる反対を表明する。

5. 科学者や技術者を組織化して、彼らの、より人間らしく、文明化された世界を求める望みを、効果的な政治行動に繋げる可能性を探る。

これらの目標を達成するための第一歩として、私たちは同僚たち(教員と学生)に、3月4日にMITでの研究活動を停止し、現在の状況の分析とその代替案の考察に専念するための1日に参加するよう求める。その日、私たちは、集中的な議論と、上で提案された方針に沿ったこれからの行動の計画立案に携わることを提案する。

もしあなたが私たちの深刻な懸念に共感され、すぐに実行できる象徴的な表現方法を求められるならば、3月4日の行動にご参加ください。
次の写真は上記、憂慮する科学者連盟のサイトからMarch-4-1969_event2.jpg
"3月4日のマニフェスト--March 4 Manifesto"に言及しているページが2つ見つかります。
ON POLITICAL PARTY TACTICS AND SOCIAL MOVEMENT STRATEGIES IN THE ERA OF "GLOBALIZATION"
Noam Chomsky - Deterring Democracy
book800w.jpg 出来ました。→
27日追記:新聞広告出ました。(下の写真、中央)
たまたま左横に並んでいるのが日の丸・君が代強制問題の本なので、これに関する私のブログ記事の一つにリンクします。
「『起立』する人の責任」
コロナ感染症対策に関して、「自粛警察」の出現などで、日本社会は「同調圧力が強すぎる」などとよく言われます。しかしその根源の一つを作っているのが、まさにこの日の丸・君が代強制という「同調圧力」ではないでしょうか。
28日追記:緑風出版のサイトにも広告が出ました。
29日追記:本に出てくる組織や人物の関係を図式に整理していますので、内容のチェックの一助に、またはお読みになるときに参考にして下さい。ただし翻訳作業の便宜のために作成したもので、正確性や網羅性を保証するものではありません。
ryokufuPR210127.jpg
2/4追記:この本を引用した文章、「科学の軍事利用と科学者の抵抗」を2016年に「日本の科学者」に発表しました。
1401577.gif2/11:遅まきながらツイッターで宣伝しました。

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封じ込めに成功している和歌山県の知事のメッセージ [社会]

感染者数の推移(12/29現在.NHKサイト)
wakayama-vovidcases.jpg

知事のメッセージ(和歌山県庁サイト)
wakayama-pref.jpg

知事の長いメッセージの締めくくりは次の文章です。
12月25日コロナに関する菅総理の記者会見がありました。その際、尾身分科会座長は、「コロナ対策には急所があるんです。」と言って人々の守るべき生活態度を示されました。しかし私は、急所は、しかももっと大事な急所は別にあると確信しています。それは知事の配下にあるすべての公の資源を投入して、感染症法を用いてきちんとした保健医療行政を展開することです。しかも、現実のデータに基づいて科学的、論理的考察から技術を高めてこれを行うことです。その確信は上記に示したような現実のデータを科学的かつ論理的に考察することから出てきます。
次は4月の記事ですが、野尻孝子技監という優秀なスタッフの貢献も大きいかと思われます。
和歌山県に見る、クラスターを防いだ柔軟さと決断力(Wedge REPORT、2020年4月3日)
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封じ込めに成功した国に学ばないのか [社会]

オーストラリアは、12月26日の新規陽性者数9人、ニュージーランドでは27日までの過去96時間の新規陽性者数16人(1日平均4人)。人口はそれぞれ 2499万人と489万人、日本よりは相当少ないものの、感染者数は何桁も違う。雲泥の差。まさに封じ込めに成功している。
(画像クリックでそれぞれの国の最新情報へ)
オーストラリア
AUS26Dec2020covid19.jpg
ニュージーランド
NZ23Dec2020covid19.jpg

ヨーロッパやアメリカのひどい状況はメディアで伝えられるが、上のような成功例はほとんど報道されない。日本の失敗を目立たせることになるので、多分政権に気兼ねを、忖度をしてのことだろう。

mainichi201227corona1.jpg今日の毎日のコロナウイルス「家庭での」対策特集も、検査(pcr 検査、抗原検査)には全く触れていない。「家族が感染を疑われたら」の項目でも、早期発見(検査)、隔離が大原則のはずなのに、それに全く触れない。家庭内で「ソーシャル・ディスタンス」での生活など無理。実際、家庭内感染が増えている。

マスクをみんながしていても、4月までに日本で4万人が亡くなるという恐ろしい予測も出ている(Institute for Health Metrics and Evaluation, Seattle, USA)。デタラメな政府を早くなんとかしないと・・・。

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毎日が反PCR検査キャンペーン? [メディア・出版・アート]

mainichi-pcr-201223r.jpg昨日(12月23日)の毎日の記事に驚く。格安PCR検査のことを大きく取り上げているが、見出しに踊るのは「陽性判定、届け出義務なし」とか、「精度にばらつき、懸念も」という、検査に懐疑的、否定的な文言ばかり。タイトルにある「一長一短」の一長に当たるものはまとめ欄に小さな字で書いてあるだけ。
世田谷区の保坂展人区長が提唱し推進している「社会的検査」のことには一言も触れていない(墨田区も)。また、感度も7割程度と書いているが、次の北大病院の9月29日の記者会見によれば約90%とのことだ。 

記事にある「陽性判定が把握されない」などの問題は、行政が積極的に無症状者の検査を無料で、または低額で実施すればすむことだ。いまだに「pcr不要論」「抑制論」を毎日は振りまくつもりなのだろうか?

今日NHK-BSが放映した、ドイツZDFのニュースでは、クリスマスで帰省する人が無料の検査場を訪れているところが紹介された。この違い、日本のメディアの鎖国ぶりには唖然とするしかない。
DSC_4996r.jpg
DSC_4995r.jpgDSC_5002r.jpg
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ナレーション:クリスマスが目の前に迫り、家族に会いに行く前に念のためにスピード検査を受けようとすることを多くの人が考えます。バーテンヴュルテンベルグでは23日と24日、無料で検査が受けられます。
救急医です。
「このスピード検査の確実性は95%以上です。もちろん陽性の人は出てきます。そういう人たちは、祖父母や両親に会いに行かないでしょう。」
ドイツ語のわかる人は直接ZDFのサイトの該当項目でどうぞ。
なお、これは3番目の画像からわかるように、PCR検査ではなく、迅速に結果がわかる抗原検査のようです。

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「日本学術会議の会員任命拒否事件について」 -- Pネット冊子掲載予定の文章 [仕事とその周辺]

IMG_2079w1000.jpgIMG_2078w800.jpg次は、この1〜2週間のうちに紙で発行される、「原発もミサイルもいらない 9条を活かす九州ネットワーク」(Pネット)の冊子に掲載される文章です。紙だけではサーキュレーションも限られ、また扱っている問題が切迫性のあることでもあり、先行してネットで公開します。(1401577.gif発行されました。toyosimaアットta2.so-net.ne.jpにメールいただければ送料込み400円でお送りします。)
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日本学術会議の会員任命拒否事件について

               豊島耕一(世話人・元佐賀大学理工学部)

            闘う君の唄を 闘わない奴等が笑うだろう
            -- 中島みゆき『ファイト!』より

            科学とは、断片的で互いに矛盾するビジョンのモザイクなのだ。
            だが、そうしたビジョンには、ひとつだけ共通点がある。その
            共通点とは、東洋のものであれ西洋のものであれ、ある地域で
            優勢な文化によって課された束縛に対する叛逆だ。
            -- F・ダイソン『叛逆としての科学』より

目次 1.違法性・法律上の前提
   2.なぜ「学問の自由」の侵犯か
   3.学術会議の「非軍事」の姿勢について
   4.拒否すべき「軍事目的研究」とは何か
   5.どう反撃するか

日本学術会議の会員任命を菅政権が拒否する事態が9月28日に発覚した。本稿執筆時点ですでに2ヶ月を経過したが、依然として事態は好転していない。多くの人が指摘するように、学問の自由そのものへの攻撃であり、つまり公然たる違憲行為であり、このままの状態が既成事実化すれば重大である。しかし10月3日の毎日新聞は、2016年の第23期の補充人事の際にも「複数人が首相官邸側から事実上拒否され」、人事介入は安倍政権も行っていたことを明らかにした。むしろ菅政権がそれを踏襲したのであろう。

発覚直後からテレビを含めメディアの報道は菅政権のやり方に批判的で、2日夜のTBS¬ニュース23では、コメンテータの堤伸輔氏が次のように発言[注1]した。
「こういう形で6人の任名が拒否されることになるとですね、今のVTRにあったように、自分達の普段からの研究や発言が何か問題があるのではないか、それによっても実際に不利益を被るかもしれない。あるいは今の政権から自分達は目をつけられるのかもしれない。そういう萎縮効果を、今回の方々だけではなくて広く学界全体に、実は及ぼしてしまうかもしれない。そういう意味合いがあると思います。」

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年末休暇を安全に家族とすごすためのPCR検査のタイミング・・フランスのテレビ [メディア・出版・アート]

フランス2、12月6日夜のニュース。年末休暇で帰省する際に、どういう検査を、どのタイミングでやれば、よりうまくコロナウイルス感染から防護できるかをアドバイスしています。

この番組サイト直行 12分経過から。
要点は以下のとおりです。
検査の種類:
PCR検査は信頼性95%、抗原検査( Antigénique)は信頼性62-80%
タイミング:
最初の男性のアドバイスは、家族で会う日に出来るだけ近い時期、つまりクリスマスの48-72時間前。
次のマスクの女性は、次のようなもっと慎重な対応を勧めている。7日前から隔離、そして検査し、それから家族に会いに行く。
日本のテレビもこういう情報を早く流した方がいいですね。安くできる検査所はまだ少ないようですが、唾液を郵送するタイプは少し高いですが、それでも例えば家族4人で「プール方式」でやれば一人あたり4,000円弱ですみます。
kensajiki.jpg
上から順に、「スクリーニング・カレンダー」「2020年12月」(のカレンダー)
21日に検査、24日がクリスマス・ディナー。
*12/11追記:もちろん最も安全なのは帰省しないこと、いわゆる「リモート帰省」です。
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NHKスペシャル「コロナ危機 女性にいま何が」-- 取材は深いが、「どうすれば」が見えない [社会]

nhksp201205.jpg(昨夜のFB投稿と同じ内容)昨晩(12/5)のNHKスペシャル「コロナ危機 女性にいま何が」を見た。もっとも苦境に追いやられている人々の現実に深く迫り、寄り添った優れた番組だった。しかし肝心の「セーフティーネット」には触れない。「生活保護」の言葉も1回出てきたというだけだった。この現実とこの制度との関連性には全く触れず、まるで無関係であるかのようだ。ましてや憲法25条にも触れない。(しばらく視聴できるようです。右の画像からジャンプします。ただし、無料ですが「NHKプラス」の登録が必要。)
 もし関連性がないのなら、つまりここで取材された人々には適用不能なら、なぜそうなのかを説明すべきだし、これでは全くこの制度が存在しないかのよう。もし財源が不足するなら、過剰な大企業の内部留保を放出させるべきだろう。
 このブログで繰り返し取り上げているが、現代版「打ち壊し」が、元三菱UFJモルガン・スタンレー証券チーフエコノミストの水野和夫氏によって提案されている。(毎日新聞2020年5月18日、次の画像クリックでジャンプ)
muzuno200520.jpg
(これを引用した当日の記事↓)
https://pegasus1.blog.ss-blog.jp/2020-05-18

やはり「生活保護申請デモ」が必要なのか。

昨日、ラジオフランス・アンテルナシオナルは、アルゼンチンがコロナで被害を受けた貧困層のために、高額財産に特別課税を実施すると報じた。詳しいことはわからないが、リード部分のグーグル翻訳(+アルファ)は以下のとおり。
アルゼンチンは高額の財産に課税します。 国の経済は大きな打撃を受けています。コロナウイルスの流行に対処し、最貧層を支援するために、特別な税金が課せられます。それはほぼ12,000人に影響を及ぼします。

argentina.jpg

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