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岸田政権の「原発最大限活用」方針に反対、科学者会議福岡支部の委員会の声明 [仕事とその周辺]

この声明が対象とする政策は、以下にある「12月開催予定のGX実行会議」で22日に決定されましたが、その直前の19日に、日本科学者会議・福岡核問題研究会が発表し、メディアなどに送った声明です。その研究会のサイトにも掲示されています。(関連記事:岸田首相の原発回帰策は温暖化対策への妨害である—『反戦情報』11月号掲載の拙稿

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岸田政権の「原発最大限活用」方針に反対する
——今も続く福島第一原発の大惨事を忘れたのか——


 岸田首相は12月8日,原発再稼働への総力結集,既設炉の最大限活用,次世代革新炉の開発・建設などに取り組むとする原発政策を発表した.それによると,政府は原発再稼働への総力結集,既設炉の最大限活用,次世代革新炉の開発・建設などに取り組むとしている.これは本年8月24日の第2回GX実行会議(GXはグリーン・トランスフォーメーション)での首相指示を受けて検討が進められ,総合資源エネルギー調査会電力・ガス事業分科会原子力小委員会の11月28日の原案に沿うものとされる.12月開催予定のGX実行会議を経て,この方向が今後10年間のロードマップの一環となるものと見込まれる.

 気候危機とロシアによるウクライナ侵攻などによるエネルギー危機と脱炭素化という長期の達成目標へあらゆる方法を動員すべきとの口実で,原発推進へ政策転換を図るものである.しかしこの転換には,次のように幾つもの重大な問題や矛盾がある.

1 拙速で民主主義に反する
 2011年の福島第一原発事故以後,政府は原発依存の低減化を目指すとしていた.国民の大半が脱原発を指向するなか,先の参議院選挙の公約にも掲げず,短期間に原発最大限活用方針に政策転換を図ろうというのは,拙速で民主主義に反する.

2 再稼働は事故発生のリスクを高める
 40年以上前の設計に基づいて建設され,10年以上運転休止していた既設原子炉の再稼働は事故発生のリスクがより高くなることは否定できない.既設原子炉の40年以上の運転期間延長は,個別の原子炉により事情は異なる可能性があるにしても,ほとんどの技術システムはその老朽化の進行により事故発生確率が高くなることは明らかである.例えば,核燃料という膨大な放射能を閉じ込める圧力容器の,いわゆる脆性破壊の危険は,主にその危惧から廃炉とされた玄海1,2号基を全国にいくつも生き延びさせることになろう.また,日本の原発メーカは2009年には,海外向けには改良された次世代型軽水炉の売り込みを行いながら,今日まで日本国内の規制基準にはそれらを取り入れず,原発の古い設計基準を継続し続けてきた事は,悪質なダブルスタンダードと言わざるをえない.

3 原発の推進は再生可能エネルギーの導入を妨害する
 気候危機に対応できるための時間は多くを残されていないが,次世代革新炉の開発・建設には長時間を要し,2030年まで間に合わないであろう.また有意な発電量を確保するには莫大な費用と技術者の動員を要する.さらに,ウランの資源量は天然ガスの6割ほどでしかないにも関わらず,使用済み燃料の保管・管理には数万年以上を要する.温暖化対策にあらゆる可能な対策を急いで取らなければならない時に,余計な問題に関わっている余裕はないはずだ.

4 「敵基地攻撃能力」など大規模な軍拡は原発のリスクを格段に高める
 岸田政権が11月22日に発表した,「国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議」による「報告書」は,国産ミサイルの長射程化など敵基地攻撃能力を「反撃能力」と言い換えて公然と書き込むなど,質的にも規模的にも軍事力の拡大を打ち出した.しかしすでに日本列島を構成する4島全域には,極めて脆弱で危険性の高い福島の被災原発や青森の再処理工場等がある.

 昨今のウクライナ情勢は,原発がドローンなどによる戦略的に極めて重要な攻撃目標であることを露呈している.したがって,敵基地攻撃能力を保有し,核燃料サイクル開発を維持しつつ原発増設を進めるという政策は,ひとたび戦争ともなれば,破壊されると壊滅的な被害を容易に生じうる施設を維持しかつ増やすことになる.それは,上記軍拡と併せて,国土と国民の安全・生命・財産を損なう恐れを危機的に高める,愚かな国家規模の自滅的行為であり,許されるものではない.

 以上,政策決定プロセス,安全工学的側面,気候危機対策,また国土の危機管理等のあらゆる面で,今回の政府の決定は不当であり,私たちはこれに強く反対する.

2022年12月19日
日本科学者会議・福岡核問題研究会
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岸田首相の原発回帰策は温暖化対策への妨害である—『反戦情報』458号掲載分 [仕事とその周辺]

(末尾に東北大・明日香壽川氏の地球温暖化懐疑論関連の文書へのリンク)
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『反戦情報』458号が旧号になったので、掲載の拙稿を転載します。(挿入図は紙面ではモノクロ)

岸田首相の原発回帰策は温暖化対策への妨害である

    『反戦情報』458号(2022年11月15日)
         豊島耕一(元佐賀大学・理工)

岸田首相は原発の新増設や運転期間の延長、再稼働の促進の方針を打ち出した。政府の「GX実行会議」の初会合(7/27)の議事要旨に、岸田首相の発言として「原発の再稼働とその先の展開策など、具体的な方策について政治の決断が求められる項目を明確に示してもらいたい」とある。また、原発再稼働についてはこれより先、7月中旬の記者会見で、再稼働の実績がある10基のうち最大9基を動かすと述べている(毎日新聞8月25日)。

さらに8月24日の第二回会議では、西村GX実行推進担当大臣が、原発の運転期間延長も「資源エネルギー庁の審議会で検討を加速」する事項に加えている。つまり、岸田氏が直接明言したのは原発再稼働についてだけで、新増設や運転期間延長は諸々の審議会にいずれそれを言わせる、という算段のようだ。(“GX”は「グリーン・トランスフーメーション」の略らしい。)

いうまでもなくこの政策の錦の御旗は社会の脱炭素化であるが、しかしドイツ、フランスなどの西欧諸国と違って、福島原発事故を経た日本の原子力への依存度は、その唯一の用途である電力でも6%(2019年)、一次エネルギーに占める割合はわずか2.8%で、仮にこれを有意な割合に上げようとしても容易ではないだろう。

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今年のノーベル物理学賞 [仕事とその周辺]

今年のノーベル物理学賞は、前々から期待していた人たちなので、また自分の関心と近いところなので、うれしい気持ちです。技術とのつながりでは、量子コンピュータや量子暗号の基礎となるもので、キーワード #エンタングルメント ( #絡み合い )もいずれ日常語になるでしょう*。

受賞の3人のうちの一人、ツァイリンガーは、エンタングルメントよりももっとシンプルで、言わば「古典的」な量子論の命題である「万物は粒子と波動の二重の性質を持つ」ということを示す、見事な実験をしました。炭素原子が60個サッカーボールの縫い目の頂点に置かれたような「C60分子」というものがあります(右の図)。この、「どう考えても粒子でしょう」というモノも、やはり飛んでいる時には波になること、つまり「二重スリット」を通すと干渉縞ができることを見せてくれました。その論文はこちら。
http://davidlu.net/c60article.pdf
その中の「干渉縞」を示す図が左です。
C60.jpgBuckminsterfullerene-3D-balls.jpg
10/5リンク追記:
映画「カムイ外伝」の1シーンの「解釈」
12年前に所属学科のメディアに書いた文章「『波束の収縮』の謎への実験的アプローチ」

* 新聞では #量子もつれ の言葉が使われているようです。
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不織布マスクは静電気によってもウイルスを捕らえる [仕事とその周辺]

先日、原発裁判の傍聴の際、運動の仲間の1人がマスクをせず透明アクリルのマウスシールドを付けているので、何の飾り?と皮肉ると、「マスクの目は荒くてウイルスを通すから意味ない」というので驚いた。そこでとっさに「静電気で捕まえるの!」と応じたが、自分でも十分チェックしたことはなかったので、改めてネットサーチで調べた。すぐに、電気通信大学特任准教授の石垣陽氏の解説が見つかった。そのタイトルもまさしく「マスクの安全を守る静電気技術」。同氏は自作できるマスクも考案し、それを公表している。

下にその解説から切り取った図を引用。ウレタンなど左の2つはもちろん(真ん中は有名なアベノマスク)、たしかに目は粗いが、不織布マスクでは内側の層に「エレクトレット」*という仕掛けがあり、帯電している粒子はもちろん、帯電していなくても(電場勾配**によって)繊維に引き付けられる。(つまりウレタンマスク、アベノマスクにはこの効果はない。ウレタンマスク警察は意味があった!(^∇^)
mask-mechanism.jpg
その部分を「」で少し引用する。
「粒子を濾過するためには、フィルターの隙間は粒子径よりも小さい必要がある」というのは良くある誤解である。空気中の微粒子を濾過する場合は、主に次の4つの力が働くことが知られている(図2)。」
として、(1)慣性衝突 (2)さえぎり (3)ブラウン拡散 (4)静電気力 が挙げられている
「また帯電していない粒子も誘導分極により電荷を帯びて引き寄せられる性質がある。」

この少し前には、目を細かくしさえすればいいというものでもない、という話がある。
「圧力損失が大きくなる程、本来マスクを通るはずだった空気が顔との隙間に迂回してしまうため、漏れ率も大きくなる傾向にある。また捕集効率を上げるために単にフィルターを重ねると、その分、圧力損失も高くなり、結果として漏れ率が上がってしまう。」

漏れ、つまりマスクの縁から回り込んでくる空気を防ぐことが大事なことが分かる。結構これが大きいようだ。電車などでマスク姿をたくさん見かけるが、鼻の両脇など隙間を作っている人が目立つ。これでは多分半分近く漏れているのではないか。

水洗いした時にこのエレクトレットに影響が及ぶか、問い合わせ中。筆者はメガネ用の超音波洗浄器で不織布マスク(KF94)を洗って何度か繰り返し使っている。繊維は乱さないと思うが、エレクトレットはどうなのか気になる。
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* エレクトレットとは、物質の中に封じ込められた電荷(電気)のこと。普通、プラスとマイナスの電荷は一様に混ざり合っているので、静電気力は出ないが、これらを別々の領域に集め、物質内部に固定して、周りに静電気力を及ぼす。マグネットが磁気の「缶詰」であるのと同様、電気の「缶詰」。語尾の"-et"もmagnet に由来するようだ。専門的な説明がこちらに見つかった。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/ieejjournal1888/113/9/113_9_751/_pdf/-char/ja
** 電場の「強さ」が場所によって変化すること。電位勾配ではない。
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他のコロナ関連の基本的な技術情報:抗原検査の感度はPCRの1,000分の1
7/31 リンク追加 ちょっと古いですが、いろんな状況でのエアロゾル感染やマスクの効果について詳細に論じられています。
Transmission of COVID-19 virus by droplets and aerosols: A critical review on the unresolved dichotomy, Published online 2020 Jun 13.
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#新型コロナ #感染防止
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抗原検査の感度はPCR検査の1,000分の1という事実を広めないとザル検疫は止まらない [仕事とその周辺]

4/27 市中検査について倉持仁医師のツイートを末尾に追記. 8/3 タイトル変更(理由は末尾)。10/16追記:この記事への今日までのアクセスは、残念ながらまだ510に過ぎません。2023/1/13追記:抗原検査優先の謎を解く鍵は利権?
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コロナ感染拡大の初期、「PCR検査はしない方がいい」、果ては「発明者がウイルス検査に使ってはいけないと言っている」などというトンデモ言説がはびこり、これへの対策に手を煩わされた方も多いでしょう。さすがに今ではなりを潜めましたが、今度は「抗原定量検査はPCR検査と同等」というデマと戦わざるを得ない状況です。「抗原検査」の感度の低さ、つまり陽性者を見逃してしまうことが、特に空港検疫で重大問題になっていて、一時はメディアも追及しましたが(毎日新聞東京新聞)、残念ながら最近はほとんと見かけません。これまた、日本独特の非科学の風潮と戦うことにならざるを得ない状態です。国立遺伝学研究所の川上浩一教授がツイッターで奮闘しておられます(例えばこちらのスレッド)。

ただ、この問題を理解するのは、決して難しくはないものの、あちこち検索して調べるなど、慣れない人には特に面倒です。簡単で分かりやすい説明をあまり見かけません。そこで、自分で調べた結果を、一般の人にも「5分で伝えられる」ことを目指して(?)、記事を書いてみます。(なぜ物理の人間が違う領域の面倒まで見なければならないのでしょうか?)

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科学者会議「九州・沖縄シンポジウム」 [仕事とその周辺]

1401577.gif12/12 私の発表のレジュメスライドを公開します。 #文化的記憶喪失 #cultural-amnesia
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直前のご案内になりますが、12月11日(土) 午後1時~6時に、「民主主義の現状と未来」と題して、日本科学者会議(JSA)のシンポジウムがオンラインで開かれます。申し込み方法など詳細はJSA福岡支部のウェブサイトにあります。一般参加歓迎です。「九州沖縄地区」とあるのは、従来この地域の会員を中心に開かれているものだからですが、今回オンライン開催となり、全国・全世界から参加可能です。私も分科会Bの後半で報告を致します。
JSA福岡支部のサイトに案内があります。1401577.gifJSA本部のイベント案内にも。
http://jsa-fukuoka.sakura.ne.jp/topics/files/f13d8dd72b709ee0dc73240f26e9a245-14.html
申込先はなぜかこれにはなく、このサイトのトップページの方にあります。

Image_20211206_0001w1200.jpg私の発表「民主主義と非暴力直接行動」のあらすじを、項目でお知らせします。Bパート、15時20分-15時55分の枠です。(写真は宮城康博, 屋良朝博「普天間を封鎖した4日間」,高文研,2012年より)

民主主義と非暴力直接行動
1 はじめに − 理系なのになぜ「文系」的な話をするのか
2 「非暴力直接行動 - NVDA」(または市民的不服従)とは
3 世界における最近のNVDAの事例、著名人の言及
4 社会運動において世界標準であり、それにより実際に成果を上げているNVDAがなぜ日本での実践が極めて少ないのか? 日本のデモはなぜ「細長い」のか?
 1)70年前後の学生運動における暴力イメージの影響、タブー視
 2)「一般市民の反発」の想定とそれへの「忖度」、反例
 3)「日本人はおとなしい」という集団自己暗示と反例
 4)「挑発行動である」「弾圧を誘発する利敵行為」という一面的な見方
 5)「法を守る」ことの理解(の浅さ)、法の上下関係の無視
 6)逮捕や刑事告訴のリスク、ダメージ
5 非暴力直接行動が不可欠である理由
6 非暴力直接行動の効用
7 リスクと対策
8 最近の論調 − ベストセラー、斎藤幸平氏の「人新世の『資本論』」がNVDAの必要性に言及


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トリチウム汚染水放出は「風評被害」問題ではない [仕事とその周辺]

福島第1原発の放射性物質トリチウムを含むALPS処理水(以下、汚染水)について、昨日来(4月9日)、政府が海洋放出の方針を決めたと報道されている。大手メディアは海洋放出が起こしうる被害について「風評被害」だけをあげつらい、あたかも人への実際の健康影響は「ない」と暗示することに躍起である。

経産省の2020年2月10日付けの報告書[1]によると、汚染水の量は、2019年10月31日時点で約117万m3、それに含まれるトリチウムの量は約856兆ベクレル(Bq)である。トリチウムは雨にも含まれることを強調して、大したことはないという「印象操作」をする向きもあるが、この量は1年間に日本に降る雨に含まれるトリチウム量の3.9倍という膨大な量である。

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「米国の科学と軍産学複合体」追加情報 [仕事とその周辺]

先にお知らせしました翻訳書「米国の科学と軍産学複合体 ―米ソ冷戦下のMITとスタンフォード」に関する追加情報を、このページでお知らせします。
(原書タイトル:The Cold War and American Science ―The Military-Industrial-Academic Complex at MIT and Stanford, 著者:Stuart W. Leslie)
全国の図書館101館で所蔵(2022/1/18現在) 1401577.gif原著者序文の日付を2に追加しました。

目次
1.事項索引の追加(すぐ下)/the addition to the subject index
2.日本語版への序文のオリジナル(英語)/preface to the Japanese edition in English
3.「3月4日のマニフェスト」の日本語訳(リンク)/Japanese translation of the 'March 4 manifesto直接ジャンプ
4.組織や人物の関係を図式にしたもの(リンク)/relationships of organizations直接ジャンプ
5.1401577.gif訳者あとがきの英訳/English translation of the translators' afterwords
6.1401577.gif帯の英訳/English translation of the phrases on 'obi'

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1.事項索引に24項目の記載漏れがありました。お求めされた方にはたいへん申し訳ありません(2/18)。以下に画像イメージ(クリックで拡大)、PDFワードファイルをご案内します。PDFとワードファイルは書籍と同じA5サイズにしています。
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index-addendum.jpg

2.日本語版への序文(本書9〜11ページ)のオリジナル(英語)
 (下に続きます。)(1401577.gif日付は2020年9月24日です。)

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日本科学者会議福岡支部、新型コロナウイルス感染症の急速な拡大に際して政府・自治体に要請文、1月25日 [仕事とその周辺]

新型コロナ感染がこれまでとケタ違いに広まる中、日本科学者会議福岡支部は1月25日、「新型コロナウイルス感染症の急速な拡大に際して政府・自治体への要請」と題する文書を内閣官邸,福岡県知事,福岡市長に届けました。私も起案に参加しました。全文は福岡支部サイトの掲示をご覧ください。(本記事の末尾にも転載

長文なので、いくつか要点を拾ってみます。

・国会に提出された、罰則を含む特別措置法と感染症法の改正案に断固反対.
・全国レベルでのPCR検査の大規模実施体制の整備と感染者の保護・隔離.
・無症状感染者の存在が感染拡大の大きな要因であることは否定できない事実
・国が猛進させたGotoトラベル/イートは全国への拡散に拍車をかけた.
・クラスター対策中心の政策は完全に破綻.
・大規模なPCR検査をエッセンシャルワーカーに継続的に実施.
・ウイルスゲノム解読、精密抗体検査を拡大.
・大量の検査と隔離で新規感染者を急激に減少させられることが数値モデルによるシミュレーションで確かめられている.
・コストを大きく低減できるプール方式PCR検査導入を.

同会支部では第1波の4月6にも、幹事会名で、PCR検査の拡大、無症状感染者や軽症者を自宅待機させてはダメ、感染状況下では原発の稼働停止、などの「提言」を発表していますが、どれも実現していません。その中でこの第3波です。自宅で医療も受けられず亡くなる人が多数出るなど、地獄の様相。

遅ればせながら、福岡のグループで取り組み、まとめたのがこの要請文です。このような要請をするのが「遅すぎた」という自責の文も、あるいは入れるべきだったかも知れません。なお、文案作成には感染症の専門家も参加しています。

以下、全文を転載

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「やみくもな検査」で感染拡大を抑える -- 神戸大の牧野淳一郎氏の発信 [仕事とその周辺]

1/10追記:この線に沿った具体的な提案など、岩波「科学」掲載予定の3本の文章が出版前に無料公開
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東京をはじめ,国内の感染状況はいよいよ重大になって来ている.再ロックダウンという話も言われる.しかし希望の持てる計算,見積もりがある.

「やみくもな検査」でも,その規模次第では感染を収束させられると言うことを神戸大の牧野淳一郎氏がツイッターと,そこからリンクされたウェブサイトで発信している.
https://twitter.com/jun_makino/status/1344546864297697281
http://jun-makino.sakura.ne.jp/articles/corona/note009.html

大量に検査(PCR検査,抗原検査)を実施し,感染者を隔離することで,感染拡大にブレーキをかけるという当たり前の,常識的なことだが,その現実性,実行可能性を,費用も含めて定量的に見積もっている.

要点を簡単にまとめると以下の通り.(引用が殆どだが,記法を変えたり,筆者の雑音も少し挿入)

集団の中の感染者の変化は“SIRモデル”と呼ばれる方程式で扱われる.以下は専門外のにわか勉強によるまとめである.
SはSusceptible(未感染者),IはInfected(感染者),RはRecovered (回復者)を表し,それぞれの人数の時間変化は次のような方程式に従うとされる.(数式表記の慣例により数量を表す文字はイタリック体.左辺は微分記号.)

dI/dt = βSI − γI,
dR/dtI
S + I + R = N (全人口)

β(ベータ)は感染が広がる速さの係数(一人が 1 日にうつす人数の期待値を人口Nで割ったもの.他の定義もあるので紛らわしい),γ(ガンマ)は感染者が1日あたり回復する確率(回復率.回復までの日数の逆数).
基本再生産数(1人の感染者が次に平均で何人にうつすかを示す数値)は
R0 = Nβ/γ
これを1以下にすれば感染は収束に向かうことになる.

つまり,検査で隔離すれば,回復者数Rと同じに扱っていいので,この式の分母にあるγ(回復率)を検査・隔離で大きくできるということだ.そうすればR0を下げられる.

牧野氏は東京都を対象に,例えば全員を月一回(30日ごと,つまり毎日30万人)検査する場合を計算している.この場合1日1人当たりあたりその逆数,つまり1/30の確率で「回復」させることになる.全体の「回復率」は自然の回復の確率γとの和になりγ' =γ+ 1/30,つまり1/γ'= (1/γ) ×{30/(30+1/γ)}.現在,γは1/7程度(つまり平均7日で回復)とされているので,30/37=0.81.つまり再生産数を2割弱下げられることになる.

ことための費用も見積もられていて,安価なスマートアンプで1日6億円,プール方式なら1億円を切る.1年やっても400億.

検査を7日毎にすれば,例えば1.2だったR0が半分の0.6 まで下がり,1ヶ月で新規感染者を 1/8にできる(もちろん費用は4倍になるが).わずかに感度が低いが安価でスピーティーな抗原検査でも,この議論に大差はない.

ロックダウンで人々の生活に,特に苦境にある人に決定的なダメージを(もちろん経済全体にも)与えることに比べれば,とても安上がりではないか.もちろん「アベノマスク」の費用に比べても.

追記:大規模PCR検査については,4月にもWHO上級顧問・渋谷健司氏の全国民にPCR検査をという提言をブログで紹介しました.
全国民にPCR検査を--渋谷教授が提言
そのころに比べて,PCR検査の費用もフィージビリティーも今ははるかに有利です.

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