SSブログ

不織布マスクは静電気によってもウイルスを捕らえる [仕事とその周辺]

先日、原発裁判の傍聴の際、運動の仲間の1人がマスクをせず透明アクリルのマウスシールドを付けているので、何の飾り?と皮肉ると、「マスクの目は荒くてウイルスを通すから意味ない」というので驚いた。そこでとっさに「静電気で捕まえるの!」と応じたが、自分でも十分チェックしたことはなかったので、改めてネットサーチで調べた。すぐに、電気通信大学特任准教授の石垣陽氏の解説が見つかった。そのタイトルもまさしく「マスクの安全を守る静電気技術」。同氏は自作できるマスクも考案し、それを公表している。

下にその解説から切り取った図を引用。ウレタンなど左の2つはもちろん(真ん中は有名なアベノマスク)、たしかに目は粗いが、不織布マスクでは内側の層に「エレクトレット」*という仕掛けがあり、帯電している粒子はもちろん、帯電していなくても(電場勾配**によって)繊維に引き付けられる。(つまりウレタンマスク、アベノマスクにはこの効果はない。ウレタンマスク警察は意味があった!(^∇^)
mask-mechanism.jpg
その部分を「」で少し引用する。
「粒子を濾過するためには、フィルターの隙間は粒子径よりも小さい必要がある」というのは良くある誤解である。空気中の微粒子を濾過する場合は、主に次の4つの力が働くことが知られている(図2)。」
として、(1)慣性衝突 (2)さえぎり (3)ブラウン拡散 (4)静電気力 が挙げられている
「また帯電していない粒子も誘導分極により電荷を帯びて引き寄せられる性質がある。」

この少し前には、目を細かくしさえすればいいというものでもない、という話がある。
「圧力損失が大きくなる程、本来マスクを通るはずだった空気が顔との隙間に迂回してしまうため、漏れ率も大きくなる傾向にある。また捕集効率を上げるために単にフィルターを重ねると、その分、圧力損失も高くなり、結果として漏れ率が上がってしまう。」

漏れ、つまりマスクの縁から回り込んでくる空気を防ぐことが大事なことが分かる。結構これが大きいようだ。電車などでマスク姿をたくさん見かけるが、鼻の両脇など隙間を作っている人が目立つ。これでは多分半分近く漏れているのではないか。

水洗いした時にこのエレクトレットに影響が及ぶか、問い合わせ中。筆者はメガネ用の超音波洗浄器で不織布マスク(KF94)を洗って何度か繰り返し使っている。繊維は乱さないと思うが、エレクトレットはどうなのか気になる。
-------------
* エレクトレットとは、物質の中に封じ込められた電荷(電気)のこと。普通、プラスとマイナスの電荷は一様に混ざり合っているので、静電気力は出ないが、これらを別々の領域に集め、物質内部に固定して、周りに静電気力を及ぼす。マグネットが磁気の「缶詰」であるのと同様、電気の「缶詰」。語尾の"-et"もmagnet に由来するようだ。専門的な説明がこちらに見つかった。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/ieejjournal1888/113/9/113_9_751/_pdf/-char/ja
** 電場の「強さ」が場所によって変化すること。電位勾配ではない。
------------
他のコロナ関連の基本的な技術情報:抗原検査の感度はPCRの1,000分の1
7/31 リンク追加 ちょっと古いですが、いろんな状況でのエアロゾル感染やマスクの効果について詳細に論じられています。
Transmission of COVID-19 virus by droplets and aerosols: A critical review on the unresolved dichotomy, Published online 2020 Jun 13.
--------
#新型コロナ #感染防止
nice!(0)  コメント(1)