SSブログ

映画「オッペンハイマー」 [メディア・出版・アート]

(3日前、29日のFB投稿に加筆)
超・話題の「オッペンハイマー」、久留米のTジョイで鑑賞。見応えのある、いい映画でした。「現代科学史映画」とも言うべき新しいジャンルを作ったのではないでしょうか。しかしこの物語が描かれた歴史的事実や登場人物について多少なりとも知っていないと、映画の頻繁な時間・場面の転換が分かりにくいとも思います。(末尾に映画パンフから登場人物説明のページ引用)

史上初の核爆発実験「トリニティー」のシーンでは、その結果をいやと言うほど思い知らされている「被爆国」の私でも、「(実験が)うまくいけよ!」と思ってしまう「ナラティブ」の怖さと言うものも体験しました。

oppenheimer-p21.jpg俳優も、アインシュタインも含め実物とよく似た人を選んだと感心しますが(主役を除く)、特にローレンス役はそうです。映画パンフレットにある彼のコメントを引用します。
(その役の)ハートネットは言う。「オッペンハイマーについて少しは知っていましたが、ローレンスや、彼が原爆製造に果たした役割、また今、21世紀が抱えているジレンマについても知りませんでした。彼は20世紀で最も重要で、印象深い歴史上の人物なのに、私は彼について何も知らなかった。彼(ローレンス-引用者注)はサイクロトロンを開発し、ビッグサイエンスのコンセプトを切り開き、現在、粒子街突型加速器と呼ばれるものの原形を作りました。彼と、そのアイディアのおかけですべてが変わったのです。」
俳優たちもこの科学史を学びながら演じたというわけです。
ただ、冒頭からやたらと大音響の効果音には閉口します。

(以下追記部分です。)
登場人物について多少なりとも知っていないと分かりにくいと書きましたが、映画ではその名前さえ字幕でも紹介されないので(記憶が曖昧。字幕に出たかも知れません)、顔で判断するしかありません。確かに、上に書いたように実在人物に似た俳優を選んではいますが、それを同定するのは普通の鑑賞者には無理な注文でしょう。そこで映画パンフからその説明ページを引用します。
oppenheimer-panphlet-p11w1500.jpg
mapping-the-relations.jpgできればこれららの人も含め、「人物相関図」が欲しいと思って書架にある数冊を探しましたが見当たりません。ネット検索では、なんとAIに作らせたという論文めいたものが出てきました。これでは余りにも詳細・精密過ぎます。自分で作るほかないような・・・。
マンハッタン計画人物相関図:Mapping the relations between Manhattan Project scientists using network science

前もってチェックしても良さそうな、この映画についての感想、解説のサイトを2つ紹介します。
芦田央氏の解説
https://note.com/dj_gandhi/n/ncf406716af1f

ある鑑賞者のコメント
https://eiga.com/movie/99887/review/03663003/
話題の中心はオッペンハイマーにかけらるスパイ容疑にまつわる「オッペンハイマー事件」を展開させて進められているのです。
この事件に関して、少し知識が無いと、映像が“事件”の公聴会とオッペンハイマーの半生が時系列で入り混じっていますので、何がなんだか分からない状態になってしまいます。
専門家・高橋博子さんのコメントが出ています。「ネタバレ注意」とあるように、徹底した批判なので、映画を見たあとで読む方がいいと思います。
https://www.facebook.com/hiroko.takahashi.376/posts/pfbid0z2S6AK8cgg26dNvmtnh85eXVf6Rixg2jnj8k3fnxHGSdsh5jLb2FgmrM67SktNmvl

次で始まる烏賀陽(うがや)弘道氏の一連のツイートも辛口。やはり見た後で読んだ方が...。
https://twitter.com/ugaya/status/1775474825513103506

  *  *  *  *  *

Image_20210223_0003t800w.jpg最後に、いかにも我田引水のCMです。第二次大戦をめぐる科学者と戦争との関わりを描いた「物語」では、このマンハッタン計画が余りにも有名ですが、これに勝るとも劣らない規模の人員と予算を投入したのが、アメリカのレーダー研究です。しかも実際にアメリカを「勝たせた」のは原爆ではなくレーダーを含む総合的な軍事技術でしょう。ジェットエンジンやミサイルなどの開発も含めて戦中・戦後の軍事科学研究を描いたドキュメンタリー"The Cold War and American Science―The Military-Industrial-Academic Complex at MIT and Stanford"を、友人と2人で翻訳し3年前に緑風出版から出しました。邦題は少し順序を入れ替えて、「米国の科学と軍産学複合体 ――米ソ冷戦下のMITとスタンフォード」としました。以下、関連記事です(新しい順)。日本がこの轍を踏みかねない状況にある今、日本の研究者の「他山の石」とすべき文献になることを願っています。
「米国の科学と軍産学複合体」追加情報
"The Cold War and American Science"日本語訳,1月25日出版
アメリカのトップ大学での軍事研究の歴史
nice!(1)  コメント(0) 

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

Facebook コメント