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原水禁世界大会2022でのウクライナ平和主義者運動代表のスピーチ全文 [反核・平和]

YuriiSheliazhenko.jpg2022年の原水禁世界大会(原水協)での、ウクライナ平和主義者運動代表ユーリイ・シェリアゼンコ氏のスピーチの一部を、昨年9月のブログ記事で紹介しました。そのうち原水協のサイトにも出るだろうと思っていたのですが、もうすぐ今年の大会が近づいているのに、未だに掲載されません。そこでやむを得ず、こちらに許可を得て全文を掲載します。(原水協に電話したところ、紙の「報告集にある」と言う返事で、ネットにあげるつもりはないようでした。驚くべき姿勢・態度と言う他はありません。英文は掲載しているのですから。)
また、これだけでなく、昨年の大会の報告すら、まだ一切ウェブには出ていないのです。最新が2021年分。これまた驚きで、怠慢という他はないでしょう。

苦言はここまで。さてスピーチ本文です。(今年1月の同氏のインタビュー記事もどうぞ)
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(ユーリイ・シェリアゼンコ氏の2022年原水禁大会へのオンラインスピーチ全文)

親愛な友人の皆さん、ウクライナの首都キーウからのご挨拶を送ります。

私が住んでいる所で原水爆の廃絶を主張するのはお門違いだと言う人がいるかもしれません。無謀な軍拡競争が進む世界では、「ウクライナは核兵器を捨てたから攻撃された。核兵器を手放したのは間違いだった」という主張がよく聞かれます。しかし私はそうは思いません。核兵器を保有すれば核戦争に巻き込まれる危険性が高くなるからです。

ロシアがウクライナに侵攻した時、ミサイルが轟音とともに私の家の数キロ先で爆発しました。通常兵器の戦争のうちは、私は何千人もの同胞より幸運に恵まれ、まだ生きていますが、自分の街が核攻撃されたら、生き残れるかどうかは疑問です。ご存知のように、爆心地では人体は一瞬にして焼かれ、周辺の広大な地域は100年にもわたり人が住めなくなるでしょう。

インドやパキスタンの例に見られるように、核兵器を持っているということだけで戦争は防げないのです。

だからこそ、包括的かつ完全な核軍備撤廃という目標が、核不拡散条約の下で国際法の規範として普遍的に認められてきたのです。だからこそ、当時ロシア、米国に次いで世界第3位だったウクライナの核兵器の放棄が、世界の平和と安全に対する歴史的貢献として、1994年に世界的に祝賀されたのです。

冷戦終結後は、核大国も核軍縮の宿題をこなしていました。1980年代には、地球に核破局の脅威をもたらす核兵器の総保有量は、現在の5倍もあったのです。

冷笑的なニヒリストは、国際条約を単なる紙切れと呼ぶかもしれません。しかし、戦略兵器削減条約(START1)は、明白な効果を上げ、世界の戦略核兵器の約8割を削減することに成功したのです。

それはまるで、人類がその首からウランの塊を外し、奈落の底に身を投げるという考えを改めたかのような、奇跡の出来事でした。しかし、今、私たちは、歴史的変化への期待が時期尚早であったことに気づいています。

NATOの拡大とヨーロッパへの米国のミサイル防衛システム配備を脅威と感じたロシアは、ミサイル防衛を突破する極超音速ミサイルの開発でこれに対抗し、新たな軍拡競争が始まりました。世界は再び、エリートたちの権力と富への卑劣で無責任な欲望によって、破局へと動き出したのです。

敵対する核の帝国では、政治家が核弾頭を搭載したスーパーヒーローミサイルという安っぽい栄光の誘惑に負け、軍産複合体は、子飼いのロビイスト、シンクタンク、メディアとともに、有り余る資金で溢れる大海原を航海しています。

冷戦終結後の30年間、東西間の世界的対立は、経済的なものから、米国とロシアの勢力圏をめぐる軍事的な対立へとエスカレートしていきました。

私の国はこの大国の覇権争いの中で引き裂かれました。

2021年から2022年にかけてのロシアとNATO軍による核を含む軍事作戦と演習の脅威、そしてロシアの侵略を理由に核不拡散の約束を見直すというウクライナの脅しにより、ドンバスの前線の両側で停戦違反の激化がOSCEにより報告され、その後のロシアのウクライナ侵攻と核戦力増強の決定という、国際的に非難されるべき発表につながったのです。このような狂気の威嚇が実行されれば、何百万人もの人びとが犠牲になるでしょう。ロシア・ウクライナ間の通常兵器による戦争でさえ、すでに5万人以上の命を奪い、そのうち8000人以上は民間人です。最近、国連人権高等弁務官が双方の戦争犯罪に関する不都合な真実を明らかにした時、両交戦国は、英雄的聖戦に対する敬意を欠く行為であると、抗議の大合唱を繰り広げました。

どんな戦争であっても人権を侵害することは事実です。だからこそ、国際紛争の平和的解決が国連憲章で規定されているのです。

核兵器と相互確証破壊のドクトリンは、戦争を紛争解決の正当な手段であるかのように正当化しようとする軍国主義のまったくの不条理を示しています。広島・長崎の悲劇が示すように、戦争が都市全体を墓場に変えてしまうほど明白な犯罪であっても、正当化しようとするのです。

核弾頭が地球上のすべての命を抹殺する脅威となっている間は、誰も安心することはできません。したがって、人類の共通の安全保障のためには、この生存への脅威を完全に除去することが必要です。世界中の理性ある全ての人びとは、2021年に発効した核兵器禁止条約を支持すべきです。しかし5大核保有国からは、国際法の新しい規範を認めることを拒否するとの声が聞こえてきます。

ロシア政府高官は、国家の安全保障は人道の問題よりも重要であると述べています。一方、米国政府高官は、核兵器の禁止は、すべての自由市場国を米国の「核の傘」の下に集めて、これらの自由市場で米国企業が大きな利益を得るという事業を妨げるものだ、と言っています。

このような議論が道義に反し、ばかげたものであることは明らかです。どの国家も同盟も企業も、核戦争で人類を破滅させれば、利益を得ることはできません。しかし、無責任な政治家や死の商人たちは、ウソの核脅迫を使って国民を脅し、戦争マシーンの奴隷にしてしまえば、容易に利益を得ることができるのです。

私たちは、核兵器の横暴に屈してはなりません。それは人類の恥であり、被爆者の苦しみを侮辱することです。

人命はいついかなる時も権力や利益より価値あるものとされ、不拡散条約でも完全軍縮の目標が掲げられています。ですから法と道徳は、私たち核廃絶勢力と現実的な思考をする者たちの味方です。冷戦後の集中的な核軍縮のとりくみは、核兵器ゼロが可能であることを示しています。

世界の人びとは核廃絶を決意して努力し、ウクライナも、まだチェルノブイリ事故の記憶が生々しかった1990年、主権宣言で核廃絶を約束しました。国の指導者たちはこれらの約束を破るのではなく尊重すべきです。もし指導者たちがそれを実行できないのなら、市民社会は何百万人もの声をあげ、核戦争の挑発から自らの命を救うために街頭に繰り出さねばなりません。

しかし、私たちの社会が大きく変化しない限り、核兵器や戦争をなくすことはできません。最終的に爆発させることなく核兵器を貯蔵しておくことは不可能であり、流血の戦争なしに軍隊や武器を維持しておくことも不可能なのです。
私たちは、暴力的な統治と私たちを軍事的に分断する国境を容認してきましたが、いつかこの態度を改めなければなりません。そうしなければ、戦争のシステムは残り続け、常に核戦争の火種となるからです。

私たちは、ウクライナ戦争を含め、世界中で起きている数十もの戦争すべてについて、普遍的な停戦を提唱しなければなりません。

ロシア・ウクライナ間だけでなく、東西間の和解を達成するために、真剣かつ包括的な和平交渉が必要です。

1980年代から1990年代にかけて、世界各地で起こった人権擁護運動と平和運動は、ともに大きな成果をあげ、各国政府に和平交渉と核軍縮を迫りました。そして今、戦争マシーンが至るところで民主的統制を失い、無力な政治指導者たちの共犯のもと、核戦争に関するうんざりするほど無意味な弁明によって、常識がゆがめられ、人権が踏みにじられています。今、私たち、世界の平和を愛する人びとに、この狂気を止める大きな責任が課せられているのです。

縮小されている社会福祉の再生、気候変動の対処の資金が切実に必要とされている今、狂気ともいえる巨額の公的資金が人類絶滅のために投資されていることに、私たちは抗議しなければなりません。

戦争マシーンを止めなければなりません。今すぐ行動を起こし、大声で真実を語り、欺瞞的な敵のイメージに対してではなく、核軍国主義の政治・経済システムに対して責任を問いましょう。平和と非暴力行動の基本を人びとに教育し、殺人を拒否する権利を守り、広く知られた平和的方法で戦争に抵抗し、すべての戦争を止めさせ平和を構築しましょう。

今こそ、未来の世代のために、命と希望の名のもとに、市民の、人類の新たな連帯と集団的行動が必要です。核兵器を廃絶し、ともに地球上に平和を築きましょう。(終わり)
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