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デヴィッド・ハーヴェイの論説に対するカナダの政治学者の批判 [反核・平和]

(7/21にフェイスブックに書いた文章に少し補足したものです。)
English title: Canadian political scientist's critique of David Harvey's essay on Russia-Ukraine war
3月初めに、ウクライナ侵攻に関する英国の地理学者デヴィッド・ハーヴェイの論説をブログで紹介しました。

とても優れた内容で、非常に多くのアクセスをいただいていますが(現在までに6万超)、この原文が発表された3日後に、これへの批判が同じブログに掲載されていました。数日前に友人から最近教えてもらいました。

derekhall.jpgDerek Hall
Russia’s Invasion of Ukraine: A Response to David Harvey

一読しましたが、たしかにHarvey氏の文章への批判は当たっている部分が多くあります。少なくともバランスを欠いているとの指摘はその通りと思いました。

第二段落(The first aspect of Harvey’s ...)で、ロシアに対するあからさまな非難がなく、「プーチンの行動を正当化するものは何もない」と書いているだけで、「ロシアが何をしているかについては、欧米のロシアに対する扱い方とそれに対するロシアの反応以外に何の説明も示してはいない」とあるのは、まさにその通りだと思います。
While he does state that “None of this [past Western actions] justifies Putin’s actions” (2022), he presents no explanations for what Russia is doing other than the way the West has treated Russia and Russian reaction to that treatment.  He says nothing, most notably, about the way the characteristics of the Putin regime might have led to this war;
実はこの点は、アメリカのある有名な平和運動家も同じで、同じような批判を「思想運動」に寄稿した文章で「公平性を欠けば説得力を失う」と書きました。(7月4日のブログ)

また、イラク戦争と違って、事前の目立った反戦運動(ロシアの侵攻反対の)がなかったという問題点も、「ちっご9条の会」のレジュメの冒頭に書きました。(6月25日のブログ)

ただ、第6段落(All leftists justly celebrate ...)で、NATO拡大について、その正当化に傾き過ぎた見方はどうかと思います。また、日本の憲法9条に触れた第10段落(A second problem is that ...)で、非武装を選んだことを「自国の安全を確保することができない『準主権国家』と」なった、という解釈は(すぐ下に原文を引用)-アメリカの属国という評価は当然としても−まさに日本の自民党ばり、と言いたくもなります(ほぼ全てが常備軍を持つことが常識とされる欧米では、左翼*といえども非武装平和に対する見方はこのようなレベルなのかも知れません)。
The Americans created a new political system for Japan by writing a new constitution, not one comma of which has been altered since it took effect in 1947. Japan, too, went from being a great power with an empire to being absorbed into the American empire as a junior partner, a ‘semi-sovereign state’ incapable of and indeed constitutionally prohibited (under the famous Article 9) from providing for its own security.

続く段落で、安倍の思想を半ば肯定的に描くのもどうかと思います。

いずれにせよHarveyに対する真っ当な批判が多くあり、重要な文書だと思います。なお、Harvey氏による反応はまだないようです。
https://www.focaalblog.com/?s=David+Harvey

関連して、事前の国際的な反戦運動がほぼ皆無だったという点は、平和運動の大きな問題点でしょう。つまり平和運動は、プーチンのロシアによる軍事的脅威にほぼ無関心であったという事実。日本の直面する問題に引き比べれば、日本の自衛隊の軍拡を含め、アメリカを中心とする軍事同盟による戦争挑発のリスクだけでなく、「それに対する防衛」という名目で(どの国の軍拡もそうだが)行われる中国の軍拡がもたらすリスク、この両者を共に批判する発話と行動でなければ、多くの人に耳を傾けてもらうことも、共感を得ることもできないと思われます。
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* 第13段落に"Surely, we on the left should not be validating ..."とあります。
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