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地域の「九条の会」でスピーチしました [反核・平和]

9/14:レジュメのPDFを文字化してこの記事の下方に追記しました。#軍事ケインズ主義
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今日(25日)午後、ちっご(筑後)九条の会で、「ロシア・ウクライナ戦争と核、平和憲法」というタイトルで話をしました。多くの方が、政治や軍事問題のしろうとの話に1時間も付き合っていただきました。
こちらにレジュメ(4頁、下に文章にしています)とスライド(実質19枚)を置きました。
http://ad9.org/pdfs/publish/y2022/chiggo9jo/resume220625.pdf
http://ad9.org/pdfs/publish/y2022/chiggo9jo/slide220625.pdf

出席された皆さん、主催者の方々にお礼申し上げます。

当ブログの読者の方にとってはさほど目新しい話はありません。
なお、スライドは個々のpdfやjpegを繋ぎ合わせただけなので、ブラウザで見るとサイズが不揃いですが、ビューワーで「全画面表示」で順送りすれば問題ありません。わざわざ「パワポ」などを使うのは、むしろ不便だと思っています。

スライドの中から2枚。(クリックで拡大)
positivefeedback4.jpgtimedevlop.jpg

当日のレジュメです。事後、9月14日にわずかに補筆しています(青色部分)。
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ちっご9条の会      2022/6/25,9/14増補改定

ロシア・ウクライナ戦争と核、平和憲法

           豊島耕一(元佐賀大学理工学部)

(当日配布したレジュメの体裁を少し整え、わずかに補筆しました。修辞的な部分以外の追記部分を青色表示しています。事象の記述は会合の行われた6月25日時点です。)

次に例示するような事前報道があったにもかかわらす、イラク戦争と違って、事前の反戦運動(ロシアの侵攻反対の)は全くなかったのではないか。情報が限られていたとは言え、平和運動の失敗としてとらえるべきかも知れない。
1)2022年1月28日ロイター報道「国境に10万人規模の部隊を集結させ・・ロシアが・・ウクライナに侵攻するのではないか」
2)2月20日 BS朝日、ロシアのウクライナ軍事侵攻「大規模作戦も可能な態勢」

2月24日にロシア軍がウクライナへ侵攻開始

原発をめぐる攻防(原子力資料情報室のページ[1]など参照)
ウクライナには稼働可能な原発が4ヶ所15基あり、ロシア軍がウクライナへ侵攻を開始した時点では13基が稼働していた。現役の原発は全て、日本やアメリカの加圧水型と同じタイプである(チェルノブイリは全て運転終了、廃炉プロセス)。

2月24日にベラルーシ側から侵攻したロシア軍がチェルノブイリ原発を占拠。立入禁止区域内にある「赤い森」に塹壕を掘り、被ばくした。
9日には、750kV送電線がロシア軍の攻撃により停止、チェルノブイリ原子力発電所への送電が停止、燃料プールが危機に陥る。非常用ディーゼル発電機はロシア側技術者が稼働と発表された。ベラルーシ側から、また14日にはウクライナ側も送電を再開。
3月31日、ロシア軍、チェルノブイリ原発から撤退開始。

2月末から3月初め、ウクライナ東南部に位置するザポリージャ原発に侵攻し占拠を継続している。

上記以外の3つの原発は攻撃を受けていない。ただ、南ウクライナ原発に4月16日に巡航ミサイルが飛来(ウ側情報)、西部のリウネ原発では、3月23日、原発に核燃料を輸送したロシアの会社の社員4名がウクライナ側に拘束(ロシア側情報)された。

今までのところ原子炉や燃料プールの損傷はない。戦闘の長期化で、燃料プールをミサイルが直撃すれば、福島原発事故で「東日本壊滅の危機」と言われた事態が再現する(燃料プールの放射能は原爆の比ではない)。日本はウクライナに比べて、原発は2倍以上、使用済燃料は3倍近く持つ。

ヨーロッパの核兵器配備の概要
プーチン大統領はウクライナ侵攻開始から4日目の27日、戦略核部隊に「特別警戒」を命令し、核兵器使用を示唆、その後も同様の発言を繰り返している。ラブロフ外相「国家の存続が脅かされれば使用され得る」。

ロシアは戦略・戦術核合わせて4,330発を配備または貯蔵、対してアメリカは3,800発。ロシアの戦術核に関しては全て中央貯蔵としている。

欧州は、英仏の2カ国が核兵器国で、英国は全て、フランスも主に潜水艦搭載で、それぞれ120発、280発を配備。アメリカの核は航空機搭載の戦術核で、ベルギー(Kleine-Brogel)、ドイツ(Büchel)、イタリア(Aviano、Ghedi)、オランダ(Volkel)にそれぞれ20発、トルコ(Incirlik)に50発が配備。(主にピースデポ資料[2])ウクライナはなし。(『反戦情報』5/15号の拙文の図参照[3])

平和運動側の反応の一例
あるアメリカの平和運動家のメール「ロシアは無理やりアメリカによって戦争に引き込まれたのだから、あえて非難しないようにしている」。
たとえ引き込まれたにせよ、戦争を始めた責任は決定的で重大で、それをとめる行動を起こすことが第一義だろう。また同時に、そのような背景について議論することも重要で、犯罪の原因を議論することが即犯罪者の擁護ではないのと同じである。

背景についての発言・参考資料
1 デヴィッド・ハーヴェイの2月25日の論説[4] —バランスの取れた、深い考察である。
(引用)「最近『ニューヨーク・タイムズ』に寄稿した保守派の論客トム・フリードマンでさえ、NATOの東欧への拡大によるロシアへの攻撃的、挑発的なアプローチを通じて、最近の事件に対する米国が責任を負っていることを想起している。1990年代、NATOはまるで敵を探している軍事同盟のように見えた。プーチンはさんざん挑発され、今日ついにそれに乗った。」
ただ、この論説に対してはその3日後、同じメディアにDerek Hallという人の批判文が掲載された[5]。ロシアに対するあからさまな非難がないなど、当たっている指摘もある。たしかに、この時点での文章としては、強調点がずれていると言えるかもしれない。

2 オリバー・ストーンの映画「ウクライナ・オン・ファイアー」2016年[6]
アメリカの介入など重要な問題、犯罪を指摘しているが、ロシア/プーチン側の問題点の指摘がなく、バランスに欠ける感がある。

3 フランシスコ教皇の6月15日の発言
「・・戦争の裏で何が起きているのかが分からない。おそらくこの戦争は何らかの形で誘発されたか、あるいは阻止されなかったのだろう。兵器のテストや売却に関心が向いている印象も受ける[7]。
軍産複合体(特にアメリカ)の利益追求。軍需株と平均株価の動き。上記ハーヴェイも指摘する「軍事ケインズ主義」。ケインズ自身が唱えていた!
軍事ケインズ主義(Military Keynesianism)
直接的な戦争も含め、景気や経済を調整する目的で多大な軍費を投入する政策である。「戦争を頻繁に行うことを公共政策の要とし、武器や軍需品に巨額の支出を行い、巨大な常備軍を持つことによって豊かな資本主義社会を永久に持続させられるとの主張」− チャルマーズ・ジョンソン「軍事ケインズ主義の終焉」(岩波書店『世界』2008年4月号)

→「吸血鬼経済」と呼ぶべきか
2016年放映の、フジテレビ「池上彰緊急スペシャル!! なぜ世界から戦争がなくならないのか」[8]が、この状況をわかりやすく描いた。

プーチンは2000年の就任当初、NATO加盟を考えていた。(毎日新聞 2022/3/16)

ウクライナ側の武装抵抗に対する態度
ジレンマ
(A)攻撃を受けた側の(武力も含めた)抵抗する権利を否定することはできない。しかし、もし否定しないだけでなく、積極的に支援するとなれば、広い意味で「参戦」することにつながる。世界大戦、核戦争へと拡大する恐れ。
(B) 平和主義者(憲法9条の擁護者)は、武力による抵抗は否定しなければならない。そうするとロシアの侵略は、少なくとも一旦は既成事実化される。

「戦争永続化」のプロパガンダか?:「妥協ではなく、ここでロシアを止めておかないと、次はバルト3国がやられる」—— 6月22日昼のテレ朝「ワイド!スクランブル」に登場した、元ロシア高官(元副首相?)。
→いろんな可能性の中で、「次はバルト3国がやられる」が確実、もしくは最重要である根拠は? 妥協で平和構築に向かう可能性は?

チョムスキーの考え:「不愉快な妥協をせざるを得ない」[9]

ウクライナ内部における非暴力抵抗運動
ロシアに対する抵抗はもちろん、戦争動員のゼレンスキー政権とも闘っている勢力がある。
「ウクライナ平和主義者運動の声明」[10]、4/17 (一部引用)
「私たちは、法律は戦争を煽るものではなく、平和を築くものであるべきだと信じている。また、歴史は、戦争を続けるための言い訳ではなく、人々がいかにして平和な生活に戻ることができるかの戒めとすべきであると考えている。」
この運動体の代表のユーリイ・シェリアゼンコ氏は、この夏の原水禁世界大会(原水協)にウェブ参加、スピーチをしている。記録集に収録されている[11]。

差し迫った「応用問題」、日本・東アジアへの影響と対策
「攻められたらどうするのか?」への世論の素朴な反応を梃子にした、軍拡、改憲の動きにどう対抗するか
2010年5月3日、久留米市で開かれた憲法集会での、斎藤文男氏の指摘[12]:護憲勢力は、「改憲」の4つのカテゴリー、(1)条文改憲(2)解釈改憲(3)立法改憲(4)外交改憲のうち、(1)の問題を偏重し、他をあまり顧みないことで、現実離れした対応になっていると指摘。筆者は「既成事実改憲」も加えたい。

既成事実改憲の、目下の最たるもの、「南西諸島の自衛隊軍拡」、すなわち対中ミサイル発射台にする企てが進む。6月17日の「しんぶん赤旗」参照。(小西誠氏のコメントも参照下さい[13]。)

条文改憲阻止はもちろん重要だが、実際に戦争ができる体制ができ、また戦争を始めてしまえば、100パーセント空文となる。まさに、斎藤文男氏の言う、単なる「インクの染み」になる。当面の焦点は南西諸島のミサイル基地化の阻止。

どう対抗するか
(短期的)野党による平和外交で日中、日朝の緊張緩和を図る。(埼玉の市民グループが各野党に提案[14])
(長期的、一般的)
(1)選挙:議会で平和勢力が多数を取ること。しかし選挙に注力するだけでは選挙に勝てない。資本—権力—マスメディア—有権者 のフィードバック・ループにより「ロック」がかかっている。
(2)非暴力直接行動(NVDA)
(3)ネット対策、検索エンジンへの対処・・・野党勢力の未熟さ、ないし対策放置 
(4)マスによるマスメディア、“マルチチュードメディア”の提案

「軍事的脅威」にどう対処するか? 軍備増強か縮小・撤廃か
議論の枠組みの提案
弊ブログ 「武装自衛と非武装平和との比較の枠組み」参照
https://pegasus1.blog.ss-blog.jp/2022-04-05#framewk

急迫不正の侵害に対する「自衛隊の活用」とは? 具体的プランもない空論、しかも事実上の9条破棄である。

伊勢崎賢治氏の指摘(6/24) @isezakikenji
日本の今の法整備では戦争犯罪の「上官責任」と領域外での戦闘で発生する業務上過失が問えない。つまり法治国家として戦闘できる状態でないこと。「まず法整備をやれ」。これでプーチン脅威論で民意を戦争準備に誘導したい与党に冷や水をかけることが、防衛予算増大を阻止する一番有効な方法です。

スライド、レジュメはこちら http://ad9.org/pdfs/publish/y2022/chiggo9jo/

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[1] ウクライナ原発状況アップデート https://cnic.jp/41496#update
[2] ピースデポ「核兵器・核実験モニター」574-5号(2019年9月1日号)
[3] こちらに転載 https://pegasus1.blog.ss-blog.jp/2022-06-21
[4] ブログに転載 https://pegasus1.blog.ss-blog.jp/2022-03-02 6/23までの閲覧数58,826.
[5] Derek Hall, Russia’s Invasion of Ukraine: A Response to David Harvey
https://www.focaalblog.com/2022/02/28/derek-hall-russias-invasion-of-ukraine-a-response-to-david-harvey/#more-3696
ブログで紹介しています。 https://pegasus1.blog.ss-blog.jp/2022-07-26
[6] 日本語字幕版が2022年4月無料公開されている。https://www.youtube.com/watch?v=pSDZpw1EZsQ
[7] CNN, 2022.06.15 https://www.cnn.co.jp/world/35188979.html
[8] 筆者ブログに画面クリップなど。 https://pegasus1.blog.ss-blog.jp/2016-02-13
[9] 日本語字幕付き動画 https://www.youtube.com/watch?v=8Jr0PCU4m7M
[10] 小倉利丸訳 https://www.alt-movements.org/no_more_capitalism/blog/2022/06/14/ukrainian-pacifists-war-crime-against-humanity_jp/
[11] その一部をブログに転載するなどして紹介しています。
https://pegasus1.blog.ss-blog.jp/2022-09-09-1
[12] 筆者ブログにメモ https://pegasus1.blog.ss-blog.jp/2010-05-03
[13] 小西氏のコメントから:琉球列島のミサイルの地図の「沖縄本島」のところに「?」とあるのは不正確。陸自・勝連分屯地への、地対艦ミサイルの2023年度配備が決定されており、今沖縄島の人々は全力でこの勝連ミサイル基地反対のたたかいに取り組んでいる。
https://www.facebook.com/groups/135517890608013/posts/1230473191112472
[14] https://pegasus1.blog.ss-blog.jp/2022-05-28
[15] 筆者のエッセイ「『ガラパゴス』状態の日本のデモが暴政継続を許す」参照。
https://pegasus1.blog.ss-blog.jp/2021-02-18#part1
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