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「戦争体制の輸入ではなく、九条の輸出を」--『思想運動』への寄稿 [社会]

「思想運動」という月間の新聞に依頼され、次の文章を寄稿しました。掲載紙が旧号になったのでブログで公開します。紙面イメージはクリックで拡大します。(関連投稿「ロシア・ウクライナ戦争と二重の核の脅威」-『反戦情報』5月15日号)
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戦争体制の輸入ではなく、九条の輸出を
  焦点は南西諸島の自衛隊軍拡問題        2022/6/1
                  豊島耕一
shiso-undo220601c.jpg「先進国」と見られていたヨーロッパの国同士で予想もできないような大規模な戦争が勃発した。2月24日のロシア侵攻を前後して、私は信頼する平和運動家や研究者などが発信する情報をチェックし、それらについて行くのに苦労している。大袈裟に言えばほとんど戦後史を学び直すほどの数日間もあった。それによりNATOの拡大やウクライナの「マイダン革命」など、この事件の背景も少しは見えるようになった。しかし背景がどうであれ、先制攻撃で大規模な戦争を引き起こしたロシアに非があることは明白すぎるほど明白だ。

一刻も早い停戦を
この戦争が始まる前後、英語も半分も分からないままアメリカの平和運動家のズーム会議に参加したり、メールやSNSでの情報をチェックしていたが、ロシアとプーチンに対する警戒の、また侵攻開始後は非難の言葉が全くと言えるほど見られないのを奇異に感じていた。あるアメリカの平和運動家にメールでこのことを尋ねると、「ロシアは無理やりアメリカによって戦争に引き込まれたのだから、あえて非難しないようにしている」というので驚いた。かれにしてみれば、「誰もその足元にも及ばない、巨大な規模の『世界一のならず者国家』」[注1]である自国アメリカへの抵抗と批判の表現とも想像するが、しかし公平性を欠けば説得力を失いそうだ。

平和運動に求められるものは、何よりも一刻も早い停戦のための努力だ。そのためには、まず侵略者ロシアを止めるために声を上げることが第一だ。同時に、ゼレンスキー政権やアメリカの側も、非の打ち所がないどころかロシア系住民への抑圧や殺戮、停戦違反(ミンスク合意)などさまざまな悪行も言われ、その分析や批判も欠かせないだろう。これは決してロシアを免罪したり擁護することとはまったく関係ない。さらに欧米の側には、ゼレンスキー政権への武器援助ではなく、双方に交渉による解決を促すよう要求することが重要だ(5月9日の米国の「武器貸与法」の成立によって、米国とロシアとの「帝国主義間戦争」になりつつあるとの小西誠氏の警告[注2]は真剣に受け止めるべきだ)。もし核戦争ともなればまさに終末シナリオだが、キューバ危機の時よりも深刻なのは、多くの原発とその使用済み燃料プールの存在だ。つまり巨大な「放射能地雷」が何箇所もあり、それにミサイルがヒットすれば、ヨーロッパの小国の面積に匹敵するほどの土地が百年以上にわたって人が住めなくなるだろう。これらを避けるのが最優先だ。

琉球弧の基地建設
日本に住む我々の最大の課題は、戦争熱に便乗した改憲をなんとしても阻止することだ。明文改憲だけでなく、いわば「既成事実改憲」 ——つまり違憲行為の既成事実化で実質的に憲法九条を反故にする長年の企て—— これが決定的になる前に阻止することだ。その焦点は言うまでもなく南西諸島(琉球弧)への自衛隊基地の新増設である。辺野古の米軍新基地建設が数年では完成する見込みのない一方で、奄美大島から宮古島、そして日本最西端で台湾までわずか100キロの与那国島に至る島々に着々と基地建設が進んでおり、計画では今年度末に石垣島に地対艦・地対空のミサイル部隊を、来年度には沖縄本島中部の陸自勝連(かつれん)分屯地に地対艦ミサイル部隊を置くとの報道[注3]がある。現に琉球弧が対中国の「ミサイル要塞」にされようとしているのである。にもかかわらず、これに対する護憲勢力、平和運動の反応があまりにも鈍い。例えば、「総がかり行動実行委員会」の5月から6月にかけての行動提起「大軍拡とめろ!官邸前月曜連続行動」[注4]のスローガンには、敵基地攻撃反対や核シェアリング反対は入っているが、しかしこの最も切迫した南西諸島への自衛隊軍拡の問題が入っていない。奇妙だ。

今度のプーチンの戦争の背景の一つにNATOの東方拡大やウクライナの軍拡があったと言われ、これはおそらく多くの人が認めるところだろうが、それと類似の状況が東アジアで作られている。このことに気づくべきであろう。つまり、NATO 拡大は日米安保のグローバル化に、さらにはAUKUS[注5]の発足に対応し、ウクライナの軍備拡大はまさに琉球弧への自衛隊配備・拡大に対応するだろう。

一つの提案
残りの字数で九条と平和をめぐる議論の一つの方法を提案したい。この問題での「もし外国から軍事攻撃されたらどうするのか」という問いに始まる「逐条的」な議論は長々しいやり取りになりがちだ。そこで、軍備維持・増強派と軍備撤廃・縮小派の言い分とそれぞれの利点・欠点とを、平時と戦時に分けた2列(軍備増強派/撤廃派)×4行(平時と戦時の利害得失)の表にしておくのである[注6]。例えば、その撤廃派・平時の利点の欄には「他国に脅威を及ぼさない・安心感を与える」と言うように。この表に両派の言い分の考えうる全てを記入して俯瞰すれば、「万全」な方法などあり得ないことを確認でき、比較の問題であることが分かる。次にこの表の「時間発展」、つまり軍縮・撤廃が進んだケースと、軍拡が進んだケースとで、この表のどの部分が拡大・縮小するかを考える。そうすれば軍縮・軍備撤廃のケースが好ましい未来に繋がることが分かるだろう。
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[1] Jeremy Scahillによるノーム・チョムスキーのインタビュー、2022年4月15日。
 https://theintercept.com/2022/04/14/russia-ukraine-noam-chomsky-jeremy-scahill/
[2] フェイスブック「反戦平和のための軍事問題研究」への小西氏の5月14日の投稿参照。
[3] 毎日新聞2022年5月2日
[4] 「大軍拡とめろ!官邸前月曜連続行動」、2022年5月7日。
http://sogakari.com/?p=5996
[5] オーストラリア 、イギリス 、およびアメリカ合衆国 の三国間の軍事同盟。2021年9月15日に発足。
[6] 詳細は筆者のブログ https://pegasus1.blog.ss-blog.jp/2022-04-05#framewk を参照。

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