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日本科学者会議福岡支部、新型コロナウイルス感染症の急速な拡大に際して政府・自治体に要請文、1月25日 [仕事とその周辺]

新型コロナ感染がこれまでとケタ違いに広まる中、日本科学者会議福岡支部は1月25日、「新型コロナウイルス感染症の急速な拡大に際して政府・自治体への要請」と題する文書を内閣官邸,福岡県知事,福岡市長に届けました。私も起案に参加しました。全文は福岡支部サイトの掲示をご覧ください。(本記事の末尾にも転載

長文なので、いくつか要点を拾ってみます。

・国会に提出された、罰則を含む特別措置法と感染症法の改正案に断固反対.
・全国レベルでのPCR検査の大規模実施体制の整備と感染者の保護・隔離.
・無症状感染者の存在が感染拡大の大きな要因であることは否定できない事実
・国が猛進させたGotoトラベル/イートは全国への拡散に拍車をかけた.
・クラスター対策中心の政策は完全に破綻.
・大規模なPCR検査をエッセンシャルワーカーに継続的に実施.
・ウイルスゲノム解読、精密抗体検査を拡大.
・大量の検査と隔離で新規感染者を急激に減少させられることが数値モデルによるシミュレーションで確かめられている.
・コストを大きく低減できるプール方式PCR検査導入を.

同会支部では第1波の4月6にも、幹事会名で、PCR検査の拡大、無症状感染者や軽症者を自宅待機させてはダメ、感染状況下では原発の稼働停止、などの「提言」を発表していますが、どれも実現していません。その中でこの第3波です。自宅で医療も受けられず亡くなる人が多数出るなど、地獄の様相。

遅ればせながら、福岡のグループで取り組み、まとめたのがこの要請文です。このような要請をするのが「遅すぎた」という自責の文も、あるいは入れるべきだったかも知れません。なお、文案作成には感染症の専門家も参加しています。

以下、全文を転載

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2021年1月25日

新型コロナウイルス感染症の急速な拡大に際して政府・自治体への要請

              日本科学者会議福岡支部

・国会に提出された,罰則を含む特別措置法と感染症法の改正案には断固反対します
・全国レベルでのPCR検査の大規模実施体制の整備と感染者の保護・隔離を国の財政支援により早急に実施することを政府に要請します

私たちは,昨年,緊急事態宣言が発出される前日の4月6日に新型コロナ感染症に対してのPCR検査体制の拡充や感染者隔離体制の構築,あるいはさまざまな感染拡大防止のための対策を国や地方自治体に対して提言しました.今はその時に比べて比較にならないほど急速に感染拡大が進行し,欧米並みの感染爆発の目前にあります.

遅ればせながら政府は1月8日に首都圏4都県に,さらに5日後の13日に福岡を含む7府県に,特別措置法に基づく緊急事態宣言を発出し,対象地域では飲食店への時短要請や不要不急の外出の自粛が要請されています.しかし,現状では昨年4月の時ほどに外出を抑制することにはなっておらず,飲食店を中心とする事業者に大きな犠牲を強いる一方で,それが十分な効果を持つかどうか疑問です.現実は,医療が逼迫し,経済も立ちゆかなくなり,生活困窮者が急増しつつあります.

一方,1月22日に政府は新型コロナウイルス感染症対応の特別措置法や感染症法などの改正案を閣議決定し,国会に提出しました.営業時間の短縮命令に応じない飲食店などへの過料や入院措置を拒んだ感染者への懲役刑などの罰則が新設されています.
これらは,まったくあべこべの政治です.感染者が隠れて,感染がはびこる逆効果になります.基本的人権を定めた憲法に抵触しかねません.また,戦時中のような市民同士の監視社会の再来が彷彿させられます.あくまでも飲食店への時短要請には,適切な補償措置の裏打ちがあるべきです.感染者への懲役刑も言語道断です.

いま問題なのは,新規感染者が適切に入院や借り上げた宿泊施設に収容されずに「自宅療養」や「入院調整中」という感染者が急激に増加しており,これらの感染者を適切な医療を受けられるようにすることが政府と自治体の取るべき道です.今回の罰則を含む「改正」案に断固反対します.

そもそも,ペストやコレラなどの歴史的教訓を基にした,パンデミックに対応する感染症予防医学の基本は,今も検査と隔離です.人類全員が免疫を持たない新興ウイルスである新型コロナウイルスは,飛沫による経気道および経口感染の性質から,ワクチンと特効薬が間に合わないこの冬季にこそ本当のピークが来ることが当然予想されました.この間十分な準備期間がありながら,新型コロナ感染症を減らすのに重要な基本的な対策を政府がとってこなかった不作為にあると思います.

感染が始まった初期は,海外から検疫をすり抜けた帰国者・旅行者からの輸入感染が主要な感染源でした.その後首都圏における患者発生数が下げ止まり,感染経路不明の割合が約6割であることから考えて,都心に感染の震源地(エピセンター)が存在し続け,そこから絶えず生み出される約50%もの無症状感染者の存在が感染拡大の大きな要因であることは否定できない事実です.こともあろうに国が猛進させるGotoトラベル/イートは全国への拡散に拍車をかけました.

これまで国・厚労省・偏った専門家が主導してきたクラスター対策中心の政策は,感染者数の急増で対応が追いつかなくなり,完全に破綻をきたしています.大規模なPCR検査やウイルスゲノム解読,精密抗体検査を医療関係・介護関係・学校保育所関係などエッセンシャルワーカーに継続的に実施し,エピセンターと無症状感染者を特定して保護・隔離・治療し,未感染者との接触を減らす以外に新型コロナ感染症を劇的に減らす方法はありません.現行の行動制限だけを国民に呼びかけても実現できないことは明白です.全員でなくてもある程度以上の割合と頻度で検査と隔離を行えば,新規感染者を急激に減少させられることが数値モデルによるシミュレーションで確かめられています.

先般,ノーベル医学生理学賞受賞者4氏が提言したPCR検査体制の拡充と感染者隔離体制の構築は,昨年の私たちの提言でも強調しましたが,いまだに実現されていません.加えて,感染力や病原性が増しているとされる英国や南アなどからの変異株の特定には,ウイルスゲノム配列決定が欠かせません.

国家の浮沈がかかっている緊急事態です.政府は目先の経済効率至上主義から,これまで進めてきた公立病院と保健所の統合削減政策や喫煙の放置,それにクラスター偏重政策の失敗に対し実直な反省に立って,全国をあげてのPCR検査とゲノム解析の大規模実施体制の整備,ならびに最前線で感染者の保護隔離を行う医療機関への国の手厚い財政支援を早急に実施することを要望します.

それには省庁間の縦割り行政の弊害を打破し,他の先進国で行っているように全国の大学が研究用に維持している遺伝子操作技術とPCRマシンやDNAシークエンサーを活用することです.安全に検査能力を飛躍的に増強するには,ロボット化が欠かせません.民間の技術を活用しながら総力体制を構築すべきです.

自治体レベルでも,東京都世田谷区の「社会的検査」による無症状者の発見で実証されたように,独自にコストを大きく低減できるプール方式を含むPCR検査を拡大することは可能です.広島市でも大規模なPCR検査が行われることになりました.福岡県はじめ県内自治体におかれましては,政府の施策変更を待つことなく,戦略的なPCR検査の拡充を今以上に進めていただきたい.特に福岡県内での新規感染者の高止まりに見られるように,九州の中心的感染源となっていると思われる福岡市内のエピセンターを特定し,除去すべきです.

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