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「学校20ミリシーベルト」問題で首相と文科相に要請文 [社会]

「学校20ミリシーベルト」問題で,基準見直しの要請文が首相と文科相にファクスとメールで送られました.送り主の「核問題研究委員会」は「原発事故緊急対策マニュアル」の執筆者と同じです.次にも掲示しています.
http://web.me.com/emiyoshi3/JSA_Fukuoka/Nuclear/entries/2011/5/10_require_to_the_PM.html
短縮アドレス http://bit.ly/kHJYzf

以下,要請文です.
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2011年5月10日
内閣総理大臣 菅 直人 殿
FAX: 03-3581-3883

校庭使用についての文科省『年20ミリシーベルト基準』の撤回・見直しを要求する

       日本科学者会議福岡支部 核問題研究委員会
   http://web.me.com/emiyoshi3/JSA_Fukuoka/Nuclear/Nuclear.html

 さる4月19日,文科省は福島県内の学校の校舎・校庭等の利用判断における暫定的考え方を発表し,福島県教育委員会をはじめとした関係施設の長に通知しました.そこでは,国際放射線防護委員会(ICRP)が非常事態収束後の参考レベルとしている1〜20ミリシーベルト/年を,福島県の幼稚園や小中学校の校舎・校庭などの利用判断の暫定的な目安とするとしています.その上で,校庭の空間線量率として,年間20ミリシーベルトから割り出した3.8マイクロシーベルト/時を下回る場合には,平常どおり使用して差し支えないとしています.この文科省の暫定的考え方には,内部被ばくについての配慮がないことも問題ですが,それ以外にも,見過ごすことの出来ない以下のような問題点があります.

(1)この年間20ミリシーベルトという被ばく線量は,法外に高い線量です.職業被ばくの年間線量限度は20ミリシーベルトであり,それと同じ数値を放射線に感受性の高い幼児・児童に対する基準として使用するのはあまりにも配慮が足りないと言わざるを得ません.職業被ばくとして宇宙線からの被ばくを受ける日本の航空機乗務員は,その被ばく量が年間5ミリシーベルト以内になるように配慮されています.被ばくの代償として給料という利益を受ける航空機乗務員でも20ミリシーベルトの4分の1です.幼児・児童にとって被ばくから受け取る利益は何にもありません.

(2)この「1〜20ミリシーベルト」というレベル設定は,ICRP文書の範囲をそのまま使用したものです.ICRP文書では,これに関連して参考レベルはこの範囲の「下方部分から選定すべき」として出来るだけ小さい値を設定すべきとしています(注1).ところが文科省の今回の基準は,何の説明もなく上限いっぱいの20ミリシーベルトに設定しています.また,ICRP文書では,子どもや妊婦など特に放射線の影響を受けやすいグループに被ばく線量を減らす特別の配慮を求めています(注2).今回の文科省の暫定的考え方は,この点についての配慮を全く欠いたものと言わなければなりません.

(3)ICRP勧告の参考レベルというのは,放射線レベルを1ミリシーベルト/年へ低減する必要な防護措置を取ることを前提としています.文科省の通知では「今後できる限り,児童生徒等の受ける線量を減らしていくことが適切」と言葉では述べていますが,その具体的な防護措置の指示がありません.枝野官房長官は,5月1日,福島市や郡山市の学校が独自の判断で校庭の表面の土を削っていることに関連して「文科省の指針に基づけば除去する必要はない」と言ったと報道されています.このままの通知では,年間20ミリシーベルトの基準が固定化される危険性があります.郡山市の学校が独自で行っている防護措置は本来なら政府が行うべきことであります.

(4)幼児・児童はこれから長い人生を生きることになります.一般に放射線感受性の高い幼児・児童に対するリスク係数は,成人に対するリスク係数より大きいと推定されますが仮に同じであると仮定してICRP勧告のリスク係数(0.05)を使えば,仮に5万人の幼児・児童が20ミリシーベルトの放射線被ばくしたとすれば, 50000 x 0.02 x 0.05 = 50名のガンによる死亡が想定されます.このような数値はとうてい容認できません.

(5)原子力安全委員会は,5人の原子力安全委員のほかに2人の専門家の意見を聞き,全員が今回の暫定的目安に対して「適切」と判断したとしています.しかし,正式の会議も開かず,議事録もない状態で「適切」と判断したことは問題があり疑義が残ります.一からやり直すべきです.

 私たちは今回の文科省の通知に関連して,以上の5点を指摘するとともに,4月19日の文科省の暫定的考え方と年20ミリシーベルト基準の撤回し,被災住民や父母の声に耳を傾け,その子どもたちの被ばくを最小限にするような対策を求めます.

(注1)ICRP Publication 111, Executive Summary (o項) and ICRP Publication 109, (116項).
(注2)ICRP Publication 111, (45項).
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1401577.gif10日朝のフジテレビ「とくダネ」がこの問題をよくまとめている.次で是非視聴を.
http://www.youtube.com/watch?v=950H9R5htcM
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コメント 6

latter_autumn

(1)確かに従業者と子供は違いますが、通常時と事故時・緊急時も違います。今回の事故では従業者に250mSv/年という制限値を適用しているので(私もさすがに250はどうかと思うけど)。

(2)緊急時が継続中でまだ収束していない状態の基準は「20~100mSv」です。

(3)時間制限も防護措置の一環です。しかも合理的。
一方校庭の表面の土を除去するのは、現状では合理的とは言えないでしょう。

(4)50000人の子供が大人になり年老いてやがて死ぬ場合、事故被ばくがなくても15000人くらいはガンで死にます。±1%くらいは自然なばらつきの範囲ですから、20mSvでは事実上リスク増加は識別されないということです。
0人が50人になるのとは訳が違うので。

(5)ICRPから異議申し立てはありません。

by latter_autumn (2011-05-11 19:20) 

yamamoto

文科省の4/19文書には「非常事態収束後の参考レベルの1-20mSv/年を学校の校舎・校庭等の利用判断における暫定的な目安と」するとあり,緊急時の基準を適用していません.
http://bit.ly/k0a6nj
by yamamoto (2011-05-11 22:11) 

latter_autumn

(1)の「法外に高い線量」に続いて(2)でも20mSvにかみついているので、ICRPはもっと高い基準も認めていることを指摘したつもりです。すなわち「法外に高い線量」とは言えないはず。

で、「下方部分から選定すべき」に対しては、「まだ緊急時が完全に収束した訳ではないからひとまずは20mSvという境界値を選択した」という説明がなされています。

http://www.kantei.go.jp/saigai/faq/20110502genpatsu_faq.html


by latter_autumn (2011-05-12 17:29) 

tommy

(1) 幼児・児童にとって被ばくから受け取る利益は何にもありません.
とありますが、今まで通りの生活を続け、今までと同じ学校に通い続ける事は幼児・児童にとって利益ではないのでしょうか? 基準を厳しく適用すれば転校、より多くの住民の避難、移転という事になるのでしょうが、既に避難生活が原因と思われる健康状態の悪化で500人以上が亡くなっており、避難による健康へのリスクも無視できないと思います。

by tommy (2011-05-18 05:26) 

元京都の教師

 京都府立学校の多くの建物にアスベストが見つかったとき、府教委はWHOの「基準」や自然界にあるアスベストを引き合いに「アスベストの除去」を認めなかった。だが、アスベストは「静かなる時限爆弾」と言われていることを基にWHOの基準を主張する根拠のないこと、自然界にあるアスベストだから安全という根拠はないこと。
 学校こそ「安全」でなければならない、と徹底的に論争した。そのため多くの府立学校でアスベストは撤去されたが、隠している学校にはアスベストが残った。
 からだに大量に入る毒物は、呼吸から。
 人間には、個人差がある。
 安全には、絶対安全の基準はない。
少々大丈夫、府教委の言った言葉。彼らは、今さえしのげばいいと考えている。
 教育は、10年後、100年後を見通すもの。

少々、少しは、これくらいは、なんてことで未来につけを残してはいけないと思う。 
by 元京都の教師 (2011-05-19 01:17) 

yamamoto

tommyさん,「今までと同じ学校に通い続ける」という普通の生活をすることを「利益」と言うのは違和感がありますが,確かにジレンマがあることはおっしゃるとおりでしょう.でも,福島の親たちが自主的に子どもを避難や疎開させようと思っても,公的に「20ミリシーベルト以下は安全」とされているため,まわりの圧力で,また公的支援も見込めない中で,それが非常に難しいという状況があるようです.

この問題では明日(20日)9時〜12時,衆議院の科学技術特別委員会で質疑が行われます.久住静代,矢ヶ崎克馬,崎山比早子,武田邦彦の各氏が参考人です.
by yamamoto (2011-05-19 17:15) 

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