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ランダウの記事その2--逮捕と投獄 [社会]

「パリティ」7月号切り抜きその2です.28ページ,ランダウ逮捕の下りです. 

逮捕

 1938年4月28日,3人の物理学者,ランダウ,ルーマ(Yuli B. Rumer),コレッツ(Moisey A.Korets)の同時逮捕に対して,次のビラが逮捕理由として使われました。

万同の労働者,団結せよ!
同志たちよ!
 十月革命の偉大な目的は卑しむべき裏切りにさらされている。国家には血と汚物の奔流があふれている。無数の無実な人民が牢獄に投げ込まれ,出獄は何時か誰にもわからない。
 同志たちよ,スターリン主義者集団はファシストクーデターを実行した。社会主義は常套的欺瞞新聞の紙面にのみ存在する。真の社会主義に対する狂信的な憎しみにおいて,スターリンはヒットラーやムッソリーニと変わりない。スターリンは自分の権力のため国家を破滅させ,彼は残酷なドイツファシズムのいい鴨になる。
 労働者階級や国家の労務から抜け出る唯一の道は,スターリン主義者やヒットラーファシズムに対する抵抗であり,社会主義への闘いである。同志よ,組織せよ! 秘密讐察,虐殺者たちを恐れるな! 彼らができることといえば,無防備の囚人たちを虐殺することであり,怪しくもない無実の人たちを逮捕するのみで,国家の富を略奪することであり,謀略をでっち上げて不合理な法廷公判を仕組むことである…

ビラの本文は,1938年に明確にしたように社会制度の本質に対する筆者の深い洞察を示す,驚くべきものです。この文に簡明で,論理的で,説得的なダウの文体を発見できます。われわれの制度とファシズムのそれとの比較は,ダウの得意とすることの1つでした。ずっと後年になって,これらと同じ文句を使ってダウは私の政治的無学を払拭してくれました。ビラの1行1行は,彼の社会主義に関するナイーブな信仰,特別な初期の信仰に満たされています。

(中略)

 もちろん,母のかけめぐりや祖母の為替の方策でダウを自由にすることはできませんでした。ダウの自由は,勇敢な物理学者カピッツァ(Pyotr Leonidovich Kapitsa)の努力で勝ち取られました。当時,このことを知る者はほとんどいませんでした。わが家でもカピッツァの努力は内緒話でした。

 1991年,『イズベスチャ』紙TsKKPSSはランダウの反ソビエト活動による起訴に関する紀事を「レフ・ランダウ,刑務所の1年」という見出しで発表しました。ダウが実際ビラ起草に参加したかどうかで激しい議論が起こり,議論が統きました。1938年8月7日の尋間調書の中で,ダウは「最初はこの提案に反対しました。この行勤様式は危険であると,懸念を表明しました。同時に,この種の政治的転覆は重大な影響を及ぽし,明確な結果をもたらすだろうというコレッツに同意しました」と認めています。同じ古文書ファイルにダウ自筆の自白文が含まれています。「コレッツはビラを書き,それを私が承認し,個々にコメントをしました。」ようするに,ダウはビラを書いていないが,それを読みコメントを加えました。これは彼のいつものやり方で,リフシッツ(Evgeny M.Lifshits)やほかの物理学者と協力して書いた『理論物理学教程』でのやり方です。

 しかしながら,疑問が起こります。ビラの意図が危険であることを知りながら,なぜダウはそれに参加することに賛成したのか。彼はきわめて洞察的で立証的であり,友人や研究仲間が逮捕されているのを目の当たりにして,白分だけが長い間免れ得ないとはっきり理解していたからだ,と私は信じています。何が起こるか知れない恐怖にもかかわらず,ダウは屠殺される子羊のように生きるよりも,まず警告を発し,切迫した危険を大声で告げたことが理由ならぱ,ダウにいっそうの栄誉を,彼の勇気にいっそうの賞賛を!

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(転載者コメント) 国立大学「法人化」といい都立大の「首大」化といい,あれほど簡単にやられてしまったのは,「屠殺される子羊のよう」な人口の比率が多すぎたためではないでしょうか.そう思うのは私だけでしょうか. 現在の学者,大学関係者が冒さなければならなかった「リスク」は,ランダウたちが経験したリスクとは全く比べ物にならないものでしかなかったのですが・・・.
(22日追記)
国立大学法人化問題サイト
 国立大学独立行政法人化の諸問題, 1401577.gifリンク再修正(2020.4.26)独法化阻止全国ネット
都立大「首大化」問題
 首大ドットコム, だまらん


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