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「しんぶん赤旗」8月24日掲載の党建設委員会の文書について [メディア・出版・アート]

「しんぶん赤旗」8月24日付けに、次のタイトルの、まさに古色蒼然たる文書が出たので、とても放っては置けません。[1401577.gif9/4 末尾に党本部にメールした件を追記]
日本社会の根本的変革をめざす革命政党にふさわしい幹部政策とは何か
――一部の批判にこたえる

以下、その批判です。(1401577.gif30日朝、3番目の「さらにこの文書の」で始まるパラグラフを修正しました。)(関連当ブログ記事から:ブログ時代の共産党大会
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「第三者評価」を拒む体質?
  —「しんぶん赤旗」8月24日掲載の党建設委員会の文書について—
要約:
(1)党の組織のあり方や党指導部に対する「批判」のほとんどを「攻撃」と断定しているにもかかわらず、その「批判」についての例示がわずか1例のみで少なすぎる。
(2)党首の直接選挙を否定する根拠の一つに「民主集中制」を挙げているが、この制度の下でも直接選挙も含め多様な人事制度はありうる。
(3)組織分裂を防ぐための制度的な方策は必要だろうが、それは、民主的制度に社会常識からかけ離れた特別な枠をはめることではない。
(4)現行規約の下でも「複数立候補」の文化を作ることで人事の透明性と民主性を向上させることは可能だ。
(5)「自己評価」で完結させてしまう組織は、「革命」的どころか、近代的とさえ言えず、「独善」の謗りを免れないので、「第三者評価」を積極的に取り入れるべきである。
本文:
時代遅れの、極めて独断的な文章が、「党建設委員会」という党の正式機関から出されたことにはガッカリしてしまう。「日本社会の根本的変革をめざす革命政党にふさわしい幹部政策とは何か――一部の批判にこたえる」という3,000字余りの文書がそれだ。

批判のほとんどが「攻撃」?
冒頭、8月初めに開かれた中央委員会総会は「党内外から歓迎され」た、とする一方、「・・・メディア報道は、日本共産党の路線や歴史を事実にもとづいて報じるのでなく、あらかじめ決められたわが党への攻撃の“ストーリー”に、都合のいい“断片”をはめこんで、論じているようなものが少なく」ないとして、全否定に近い評価をしている。そして「これまでも、党の組織のあり方や党指導部に対する批判は、日本共産党に対する攻撃の一つの重大な焦点」と、組織論や党指導部批判はほとんど「攻撃」で、有用な、または善意の要素は全くないかのような書き方だ。これでは党外の人は「ではご勝手に」と、党に意見を言う手間を取る気が失せてしまうだろう。それは果たして党にとって利益になるのか?また「攻撃」であると断定する根拠も何ら示されていない。

akahata220824c.jpgさらにこの文書のもう一つの重大な欠陥は、「攻撃」と判断した対象として例示したのはわずかに朝日の7月16日付け社説のみであり、したがってこの赤旗の批判が一般的に当たっているかどうかを読者が検討することは不可能である。

一方、党名については、過去に「善意から」の声・意見という表現が使われている。たとえば、2007年3月29日の赤旗には、「これまで無党派や他党支持だった方々に日本共産党の政策への共感が広がるなかで、善意から『党名を変えたほうがいい』という声が聞かれます」とある[1]。それ以前の、2004の当時の不破哲三議長の発言中にも、同様の表現がある[2]。
党名についてはいいが、組織のあり方や党指導部については、なぜほぼ「攻撃」と見做されるのか、奇妙だ。

「民主集中制」とは

「民主集中制」とは「民主主義的中央集権主義」の略であろうが、これから自動的に「直接選挙否定」となる訳ではない。むしろ、民主主義と中央集権の両者は、その形式はともあれ、あらゆる政党にとって共通の原則であろう。「中央集権」主義も、統一的な方針で行動することが政党の原則である以上、範囲や程度の違いを別とすれば、どの政党にも普遍的に当てはまるだろう。

党首など党の機関の選出については、規約第十三条は次のように定めている。
党のすべての指導機関は、党大会、それぞれの党会議および支部総会で選挙によって選出される。中央、都道府県および地区の役員に選挙される場合は、二年以上の党歴が必要である。

選挙人は自由に候補者を推薦することができる。指導機関は、次期委員会を構成する候補者を推薦する。選挙人は、候補者の品性、能力、経歴について審査する。

選挙は無記名投票による。表決は、候補者一人ひとりについておこなう。
つまり、間接選挙であること以外、このルールは一般的なものだろう。また間接選挙も共産党に限ったことでもない。(ただ、指導機関による候補者推薦の制度は、一種の「権威付け」であり、人事の保守性につながる恐れがある。よく言えばこの文書にあるように「安定した指導性」のためだろうが、安定性は保守性につながりやすいのは人間組織の常であろう。)

これを、党首については党員による直接選挙にするよう規約を変更しても、べつに「民主集中制」に反するとは言えないだろう。この文書ではそれを否定しているが、合理的な根拠は示さず、唯一「党首のポスト争いのための派閥・分派がつくられていくことになるから」だとしている。

たしかにその可能性があるだろうが、派閥・分派の類というものは、その濃淡は別としてあらゆる組織に通常見られることで、組織の中の多様性の反映とも言える。むしろ中央集権的であればあるほど、民主性や組織のダイナミズム保持のためには多様性は重要になるだろう。「中央集権」に必要な規律さえ守られればよいはずだ。

もちろん文書が言うように「分裂」の契機ともなりうるし、目的を一つにする政治団体として不可欠の一致団結度(コヒーレンス)を阻害する恐れもある。しかしこの、「組織の一致団結度」と「民主性・ダイナミズム」とは、これらを常に両立させるようバランスを取る工夫を続けなければならないものだ。また、現行の間接選挙にしたところで、複数の候補者が出ることは容認しているので、「党首のポスト争い」でなくても、党首を選ぶ中央委員会メンバーの「ポスト争い」の可能性はある。

「穏健な」対案

一方、直接選挙にしなければ絶対ダメ、ということでもなく、間接選挙でもその透明性、民主性の度合いを高めることは可能だ。直接選挙となると規約を変えなければならないし、現在の執行部がこの文書のように過敏に反応するので、差し当たっては「複数立候補」を習慣にするようにしたら良いだろう。これだけでも人事の透明性は格段に向上する。規約にも「選挙人は自由に候補者を推薦することができる」とあり、これを認めている。しかし実際にはほとんど行われておらず[3]、指導機関による推薦リストがほぼ絶対的な力を持っている。しかもそのリストの作成は「指導機関」内部での閉じたプロセスのため、ほぼ透明性はない。

「自己評価」で完結?

その推薦リストをどう作成したかについて、直近の大会での副委員長の発言が長く引用されていて、そこには「長い経験と豊かな知恵をもつ試されずみの幹部」と「将来性のある若い新しい幹部」の結合という原則で名簿案を作成したとある。これは、「試されずみの幹部」とか「双方が最大限に力を発揮できる構成」などの修辞法と共に、いわば常識的なことを述べているに過ぎない。また、新旧の組み合わせという以外に、当人の能力 — 副委員長の言葉では「長い経験と豊かな知恵」や「将来性」 — をどう評価したかという問題もある。しかしこれは密室でのプロセスのため、それを一般党員が評価することは不可能である。要するに「中央委員会を全面的に信頼せよ」と言っているに過ぎない。

このような独断そのものの表れは、最後の見出しの節にも見られる。たとえば、「実際に民主的な選挙が行われています」とか、「わが党は(中略)その時々に、もっとも適切と判断された中央委員会および党指導部を民主的に選んできました」などの言い方である。

まず、「民主的」かどうかは、たしかにイエス/ノーの2値論理で断定できる基準もあるが、「程度問題」というアナログな側面もある。たとえば、名簿が出された時、選挙人がそのリストにあるそれぞれについてどの「程度」の情報が与えられたか、選出に当たってどの「程度」深く考慮したか、上位機関の名簿を安易に受け入れたという要素はなかったか、などなど、さまざまなパラメーターがあり得る。つまり「民主的な選挙」とか「民主的に選んで」きた、と言っても程度問題なのである。

さらに、「民主的」かどうかを「自己評価」で完結させてしまっているという問題がある。上の引用の中の「もっとも適切と判断された」の、「判断」の文法上の主語が不明だが、文意から考えておそらく文頭の「わが党」であろう。つまり、自分が判断したのだから「もっとも適切」だと言っているに過ぎない。要するに「自己評価」に過ぎないのだが、これを絶対視するという誤りである。世の中、どんな組織も、いわゆる「第三者評価」で自己を見直すのが通常である。広い意味でメディアもその一つであろう。それをことごとく「攻撃」と敵視するようでは話にならないではないか。

第三者的な評価システムというものはどのような組織もその内部に持っていて、ふつう「監査」の部署と呼ばれる。もちろん共産党にもそれはある。これを、会計や財産だけを対象とするのではなく、まさに、いわば「民主度」もその対象にすればよい(規約にも対象として「事業」も挙げられているので、これを広く解釈することは可能)。さらに言えば、党外の研究者や社会運動家などの援助を求めるという方法もあろう。

[1] https://www.jcp.or.jp/akahata/aik07/2007-03-29/2007032908_02_0.html
[2] https://www.jcp.or.jp/akahata/aik3/2004-08-29/04_01.html
[3] 私の経験です。

 https://pegasus1.blog.ss-blog.jp/2013-12-27#rikkoho
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9/4 追記:この文章と、YouTube活用など党の情報発信のありかたについて、党本部に2日にメールを送りました。「ご意見は、党指導部、関係各部門に報告します」との、受信確認がありました。
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