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東京にある護憲派本部事務所への過信を捨て,「おまかせ」を止めること [憲法・教育基本法]

ブログ「世に倦む日日」が改憲問題について最近の2週間に6本の論説を出している(末尾参照).実を言うとこのブログを開くのはいつも気が重い.それは,このブログの未来予測が非常にきびしく,しばしば憂鬱にさせられるからで,しかもその内容が非常にリアルに思え,決して「悲観主義」と片付けられないからである.今回のものもまさにそうである.

ネットも含め,護憲派のメディアはたいてい,「九条の会が何千になった」というような「元気づけられる」記事で満たされていて,普通それらのメディアに接して落ち込むということはない.「世に倦む日日」はその点でユニークで貴重な存在と言える.しかしきびしい未来予測が現実的なものであれば,それを受け止めて対策を練らなければならず,さもないと本当にその暗い未来が実現する.調子のよい言説ばかりしか見られないとしたらまさに「大本営発表」の歴史を繰り返すことになる.このブログ記事の多くに見られる重さは,「良薬は口に苦し」と理解される.

「世に倦む日日」の未来予測を決して悲観主義と決めつけられないことは,これまでの近い過去の歴史を振り返れば明らかだろう.
 92年 PKO法
 99年 周辺事態法
 01年 テロ対策特別措置法,PKO法改正(PKF本体活動の凍結を解除)
 03年 有事三法(武力攻撃事態対処法等),イラク派兵法
このように九条護憲勢力は無惨な連敗を繰り返している.しかし何れの時点でも,これほどまでの,気が滅入るほどの後退を,護憲勢力のどのメディアが,例えば「しんぶん赤旗」が,予測し,深刻な警告を発しただろうか?常に「明るい」言説が支配していたのではないか?

「世に倦む日日」の19日の論説では「改憲を阻止するためには具体的にどうすればよいか.具体論について述べたいが,最も大事なのは護憲派の危機感である」と述べている.全く同感だ.護憲派は本当に一度気分的に,絶望の一歩手前まで,深刻に「落ち込む」ことがどうしても必要だ.「本当にこれで勝てるのだろうか?このままでは負けてしまうのではないか?」と.そして護憲の意志を持つ一人一人が,東京にある護憲派の事務所への過信を──「九条の会」であれ,共産党であれ,社民党であれ──捨て去ることが必要だ.

このブログで何度も触れている教基法改悪問題はこれよりはるかに切迫しており,「今そこにある危機」だ.このままだと「教基法を失った未来」がわずか数ヶ月後に控えている.
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「世に倦む日日」の改憲問題に関する最近の論説(2006年9月)
5日 これから一年間の政局予想 − 安倍新政権誕生から参院選まで
6日 07年参院選争点再論 − 護憲派と安倍晋三とどちらかが滅びる
7日 改憲を争点化する安倍政権の戦略 − 「愛国ファシズム」の選挙へ
10日 改憲へ - 三雲孝江、小宮悦子、田丸美寿々、森本毅郎、荒川強啓
18日 改憲の現場 − 民間はポーカーフェイス、公務員は『沈黙』的世界
19日 改憲サスペンデッドで全野党共闘を − 改憲阻止のマイルストーン


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コメント 10

伊方No Plu田丸

残念ながら、激しく賛同します。
by 伊方No Plu田丸 (2006-09-20 09:58) 

おっはー

本心から過信してるような人は、一人もいないと思います。
だって世の中は「もう改憲止められない」という雰囲気に満ちている。なんぼ赤旗読んだって、これで大丈夫やなんて思う党員はいないと思います。

その中で、共産党が「危ない。死ぬ気でやれ」と言うだけでは、がんばりきれないし、「よそでも前向きな行動もされているから自分のところでもがんばれ」と言ってるのではないですか。

そして赤旗は、毎日自民党やアメリカの言説を伝え、その危険を伝えてると思います。

というわけで賛同しませんが、がんばることをお約束します。
by おっはー (2006-09-21 08:55) 

yamamoto

通じてないですねー,「がんばり方」が問題なのですよ.たとえばですね,テサロニケ氏の上の最後の記事には,「10月の衆院補選に共産党は候補者を出すな」と言っているのですが,こんな「がんばり方」を選択できるかどうか,それが問われているのです.コメントありがとうございます.
by yamamoto (2006-09-21 12:03) 

布引洋

『日本が右傾化している』との認識は有るようです。
ただ『左翼革新陣営が敗北している』『自分が負けている』との認識は無いようです。
此処が問題で『敗北』していると思っていないので、敗北の原因を考え無いし、勿論のこと敗北責任も感じない。

アメリカのリベラルが敗北したのは9・11が原因です。
日本の左翼が敗北したのは北朝鮮問題が原因です。
北朝鮮は半世紀前から存在し政府自民党はずっと知っていました。突然発覚した訳ではない。
敗北の原因を分析して、問題を克服しない限り左翼は負け続けるでしょう。
by 布引洋 (2006-09-21 13:49) 

yamamoto

負け癖がついてしまった,負けるのが日常になってしまったという感じですね.こんなに負けが続いてしまうと.
by yamamoto (2006-09-21 13:57) 

天下御免

『世に倦む日日』は、記事そのものよりブロガー同盟の運営に問題があったのでしょう。記事の内容自体は共産党と公明党の連携とかおやと思うものもあるけれど、知識・情報の豊富さ、分析の鋭さにおいて群を抜いている。彼のことを隠れ小泉とか批判するブロガーを見ると「悪しき左翼の内ゲバ根性」と思わざるをえない。社民党消滅の可能性の指摘や、村田昭治プランナー・改憲サスペンデッドの提案など『世に倦む日々』にしか出来ない。
護憲運動について言うと、〔1〕メディア、特にテレビの変節と、〔2〕護憲派が一つにまとまりきれていない点が問題で、来年の憲法記念日に今から日を決めて予定を空けてもらい、護憲の政治家・知識人・著名人全員が総結集して運動の方針を話合う大集会を開く必要がある。そうすればさすがにテレビも取り上げる。改憲が選挙の焦点になったとき、誰が護憲派を代表して論陣を張るのか決めなければならない。僕はyamamotoさんと違い、北朝鮮問題がある以上、専守防衛の自衛隊は認める長谷部恭男ラインでないと護憲派は戦えないと思うが、例えば彼が先頭に立ってくれるのか?辺見庸や立花隆はどうか?社民共産だけでなく、民主党にも頑張ってもらわねばならないが、政治家だと菅直人か?護憲派の覚悟と責任が問われていると思います。
by 天下御免 (2006-09-21 21:38) 

yamamoto

現在,自衛隊廃止(改変)が争点ではもちろんないので,長谷部ラインと原理主義との争いにはなりません.どちらも九条の条文の擁護という点では一致するし,それが当面の問題なのですから.また,そのたたかいにおいても,原理主義の唱道は護憲派の陣地拡大に役立ちこそすれ,マイナスにはなりません.護憲派世論の間口を広げ,護憲の言説空間を拡大し(品揃えを増やし),さらには,長谷部ラインをより穏健な,現実的なものと見せる効果もあるかも知れません.
by yamamoto (2006-09-21 22:48) 

Runner

こんにちは。流れてきました。
以前から時々読ませてもらっていたのですが、コメントさせていただくのは初めてになるかと思います。
「世に倦む日日」関連のネタは方々で見かけるのですが、こちらのyamamotoさんの姿勢は実に普通なので感心させられます。よって、支持表明を。

私がもめごとの経緯を知らないせいもあるのでしょうが、傍から見ているとどうにもこうにも首を傾げざるを得ない面がありました。天下御免さんの内ゲバみたいとの指摘もさることながら、なんか、勝手に個人崇拝しておいて、勝手に「裏切られた」とボヤいているように見えます。
読んでみると、確かに人格的に問題のある人物にも見えます。しかし、まあ、そんなことはお互い様。どこも似たりよったりでしょう。
また、人間であるからには正しいことも書けば、間違ったことも書く。
どうしてそんなに特定のブログに注視し、精錬潔白さを要求するのか私には理解不能ですワ。

なお、共産党の姿勢については、やはり党員の人がしっかりしないとどうにもならないでしょう。
せめて、党首を党員の選挙で選ぶようにはしないと。
by Runner (2006-09-22 03:11) 

ぶっさん@高知

こんにちは。小川三四郎さんのところ経由で訪問しました。

(1)危機感・切迫感がない・足りないのではないか? という問いかけについては、考え中です。目の色を変えてやってていい状況のはずだよ、ということですよね(うーん)。
(2)いくつかの団体の中央の本部におまかせはやめよう、という呼びかけには首を傾げます。おまかせになっている人が多い、という現状認識(そういうことですよね?)に、うなづけないのです。(よかったら、判断材料・根拠を教えていただけないでしょうか。)
 
by ぶっさん@高知 (2006-10-02 21:36) 

yamamoto

たとえば共産党で言えば次のようなことです.参院選のかなりの選挙区が一人区つまり小選挙区なのですが,これは護憲派が共闘しないと勝てません.もう一年後に迫っているのに,東京の本部は何らそのための方針を出しておらず,大半は相変わらず自党から立候補させるように思われます.これに対して一般党員が焦っている,苛立っている様子が見えません.

九条の会に関して言えば,事務局の小森さんが,戸別訪問ばかりに力点を置いた戦術論を出したのに対し(週刊金曜日,5月12日号),もっとメデイアを重視すべきだとか,選挙にも何かの形でコミットすべきだとか,そのような議論が各地の「九条の会」から出て当然と思いますが,これもあまり見られません.

もう一つ,新聞などの意見広告ですが,いちばん大手の,年一回実施する九条擁護広告がありますが,私に言わせれば,広告としての効果のことなどほとんど考えていないとしか思えません.あいも変わらず寄付者の名前を蟻のような字で埋めるのにほとんどの面積を使っています.これに対する批評や批判もあまり聞かれません.

総じて,「内部での議論を公然と戦わせると,分裂につながる」というような,変な自粛があるのではないかと思われます.この点は内部矛盾をエネルギーに変えている自民党を見習うべきかも知れません.少なくとも,節度を持った,しかも率直な議論をできるような能力を付けなければいけません.

コメントありがとうございます.
by yamamoto (2006-10-03 18:20) 

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