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南相馬市立総合病院の注目すべき統計データ [仕事とその周辺]

minamisomasogobyoin.jpg南相馬市立総合病院が今月12日に「情報提供要請疾患」という統計数字をウェブで公表しています.
一見して傾向が分かるように,これをグラフ化しました.これを見ると,ガンだけでなく多くの疾患が2011年以降に急増していることが分かります.病院の立地からして当然福島原発事故との関連が疑われますが,疫学的な考察に役立つような統計的処理が行われたものでもない生の数値なので,関連は「断定できない」ということになってしまうでしょう(小児甲状腺ガンがゼロということからも明らか).実際,このページには次のような注意書きがなされています.
当院の患者数の増減が、市内(地域)の罹患率の増減を表すことにはなりません
患者数の増加について、当院では、
・市内医療機関における医療従事者の不足を原因とした当院への転院
・専門医の当院着任による市外の医療機関から当院への転院
などによるものと捉えています。
当院と市内(地域)の他の医療機関とでは、診療科目、専門医の配置が異なります。よって、市内(地域)での主傷病件数の増減を、当院の医事会計情報だけで把握することは出来ないと考えます。
しかしこれらのデータを見れば,福島原発事故と周辺住民の健康被害との相関を大規模に調査すべき必要性があることは明らかでしょう(むしろ,あのような事故があった以上無条件に必要だったというべきですが).しかしそのような観点からの公的な調査結果の報道を知りません(200名を超えた数字が発表されている小児甲状腺ガンについても同様).
これを見ても福島事故との関連は「断定できない」で終わってしまう医学分野・公衆衛生分野の研究者がいるとすれば,それは自らの職責に背くものだと思います.
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   白血病                甲状腺がん
南相馬市立総合病院.白血病.jpg南相馬市立総合病院.甲状腺癌.jpg

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平和研究集会での発表から [仕事とその周辺]

新提案の政治支配メカニズム図式にジャンプ
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先週土曜,佐賀大学で平和学会の九州地区研究会が開かれ,原発問題を中心にスピーチをしました.福島原発事故ことや玄海原発再稼働反対運動が主な内容です.最後の方で,「市民的不服従」という運動形態の重要性を強調しました.この部分が特に目新しいと思いますので,とりあえずその内容を紹介します.(1401577.gif22日追記:当日スライドで紹介した吉田所長の「チェルノブイリの10倍」発言を、門田氏の著書「死の淵を見た男」からこちらに引用

タイトルと見出しは次の通りです.
玄海原発再稼働と市民運動
1 「311」以前
2 福島原発事故の衝撃
3 再稼働をめぐる第1次攻防(2011〜2016年)
4 再稼働をめぐる第2次攻防(2017年以降)
5 福島原発事故の現在
6 対抗勢力の活動における重要な,また新しい形態について

それでは,この最後の「6」の部分を以下に全文紹介します.[ ]で囲まれた数字は注の番号で,末尾にあります.なお,全文のpdfスライド付録(時系列表)も公開します.

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6 対抗勢力の活動における重要な,また新しい形態について

対抗勢力の運動に関して,次の二つの「不服従」の重要性を強調したい.
不服従(1)市民的不服従,市民的抵抗,または非暴力直接行動(NVDA)
不服従(2)組織上の不服従

まず不服従(1)の市民的不服従について.簡潔な定義を,とりあえずウィキペディアから引用する(スライド28).
良心*にもとづき従うことができないと考えた特定の法律や命令に非暴力的手段で公然と違反する行為.個人的になされることも,集団的になされることもある.通常は特定の法律・政策に絞って行われる.(ウィキペディア2018年11月=寺島俊穂『市民的不服従』)
*私は「良心」に加え,「あるいはさらに憲法や国際法など上位の法規範」を追加することを提案したい.

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住民を帰還させている「年20ミリシーベルト」を体感して下さい [仕事とその周辺]

tvasahi181026.jpg昨日,高線量地域に帰還させる政策を取っている日本に,国連人権理事会がこれをやめるよう求める声明を出したというニュースが26日に流れました.
子供や女性は帰還しないで 国連の声明に政府は懸念(TV朝日)

国連報告者、福島事故の帰還で日本を批判(日経)
1401577.gif28日追記:毎日と赤旗の26日から今日までの紙面をチェックしましたが,1行もなし.重大な隠蔽です.ウェブ上で見つかるのも日経だけ.)

これに関して日本政府が「特別報告者の指摘は誤解」と反論しているとのことですが,これをおしどりマコ・ケンさんが的確に批判しています.
http://oshidori-makoken.com/?p=3757

要するに政府は,「ICRP2007年勧告は年間の被ばく量で20ミリシーベルトから100ミリシーベルトまでとしているが,その最低値の20ミリシーベルト以下にしている」と言うが,これは政府の「現存ひばく状況」という解釈と矛盾している,というのです.つまり,「現存被ばく状況」の範囲は年間1から20ミリシーベルトなので,最低値ではなく最大値になっている,ということです.
ややこしい話で,またICRP勧告というものも「業界より」との批判もあるのですが,そのICRP勧告ですら政府官僚はちゃんと理解していないということです.官僚システム特有の人事異動システムのため,新任の人がまともに勉強するヒマがなかったということでしょうか.

さてこの「年間20ミリシーベルト」ですが,自然放射線は1ミリ程度ですから,その20倍というとんでもない値です.でもすぐに病気になるわけでもないし,痛くも痒くもないので,危険を感じにくいのでしょう.それを「体感」するには,ガイガーカウンターの鳴りかたを見る(聞く)のが一番ということで,3.11直後からそれをYoutubeで公開しています(その時のブログ記事1ブログ記事2).この際,再度これにリンクします.(追記:当然土壌も汚染されているので,食物や水からの内部被曝が追加されます.)

まず,平常値.


年間約19ミリシーベルト相当

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トリチウム放出の危機と赤旗報道の問題点 [仕事とその周辺]

福島原発事故で出た大量の汚染水が太平洋に放出される恐れが出てきた.国の汚染水対策処理委員会が,高濃度のトリチウムを含むこの汚染水の海洋放出を決めてしまいそうな状況だ.これについての8月31日の「しんぶん赤旗」の記事は,そうとう問題あり.
海洋放出反対 相次ぐ トリチウム汚染水・福島公聴会
tritiium-akahata180831-1.gif
「厳しい批判が相次」いだ,とあるが,この記事には,公聴会にそもそも何が提案されたのかが書かれていない.おそらく海洋放出だろう,と想像するしかない.また,トリチウム以外の放射性物質も混入していることを取り上げているが,肝心のトリチウムそのものの危険性が薄れている.また15面の「解説」では,「トリチウムの処分をめぐっては風評被害の懸念が大きく」とし,本来の実際の危険性への言及は皆無に近い.

当ブログの関連記事:トリチウムのマルチヒット効果川内原発トリチウム放出再開
東電内規に従えば,法定濃度で全部放出するには40年以上要する件:
細川弘明氏の指摘と質問,まさのあつこツイッター,8月31日
キノリュウが行く,2013年3月1日

以下は,ネットには出ていない,15面の「解説」.

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京大学長は米軍資金を容認するのか [仕事とその周辺]

yamagiwa180604mainichi-w1500.jpg京大学長で学術会議会長、そして国大協会長という、日本のアカデミズムの言わば頂点にある山極寿一氏の、軍事研究についての考えが、毎日新聞6月4日付けに詳しく載っている。「そこが聞きたい 軍事研究規制の道筋 一線画す共通の指針を」というタイトルで、京大が3月に発表した基本方針や、これからの規制のあり方について述べている。驚いたのは米軍資金についての次の一節だ。

「米軍の研究資金は研究者の裁量に自由度が高いものもあり、研究成果が何に使われるかを研究者自身が確認できるなら、認めてもいいと思います。」

記者から「京大は1 9 6 7年に『軍からの研究資金は受けない』と学内で申し合わせています。後退では」と問われると、次のように、特許の取得が重要などと枝葉的な議論に逃げている。

「そうではありません。研究内容を審議する委員会を常設し、目的や利用のされ方などを見極めます。委員会は審議で認めたら、その理由を全教職員に説明する義務を負います。中でも、私は特許の取得が重要だと思います。特許があれば研究者自身や所属機関か研究成果の使われ方に対して意見を言え、責任を持てるからです。」

以前の記事「軍事研究問題の重要ポイントは『人間関係資本』」に書いたように、研究者は軍事研究に直接加担しなければいいというだけでは不十分である。専門家としての責任ある社会的発言の義務もある。米軍から資金を受け取っていて、米軍というスポンサーの意向を気にせずにこの責任が全うできると思うのだろうか。

全大学関係者、とりわけ京都大学の皆さんは、山極氏のこのような態度について追及して欲しい。
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山極氏の別の発言に関する記事:国大協会長が「法人化は失敗だった」(3月10日)
軍事研究に関する記事の例:アメリカのトップ大学での軍事研究の歴史
筆者の軍学共同問題についての論文:科学の軍事利用と科学者の抵抗―歴史と運動に学ぶために―(「日本の科学者」2016年7月)
関連スピーチ:2016年10月7日,九大2017年3月,大分
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退職金裁判,最高裁の決定文 [仕事とその周辺]

saikousai180524-1.jpgsaikousai180524-2.jpg退職金裁判で最高裁に上告していましたが,右がその決定文です.「門前払い」です.

昨日(6月4日),佐賀中央法律事務所で東島弁護士と記者会見しました.以下はその配布資料です.
佐賀大学退職金引下げ無効訴訟 ―概要、争点、各判決の内容、批判- (東島弁護士)

最高裁決定について+退職金裁判高裁判決について(豊島)

私の,「最高裁決定について」を,以下に転載します.
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最高裁決定について
  原告 豊島耕一,2018年6月4日

佐賀大学の退職金裁判に関する最高裁決定について,簡単に4点述べます.

1.最高裁が上告文書を真面目に読んだかどうかを検証できない.

我々の上告に対して最高裁から5月24日付けで棄却の決定通知が届けられた. 本文は,棄却の理由として単に民訴法 312 条と 318 条を挙げるのみで,わずか 257 文字にすぎない.我々の上告文がなぜこれらの条項を満たさないかについての議論 は一言もない.従ってこの判断が妥当かどうかを,我々だけでなく第三者も検証で きない.さらにいえば,最高裁が原告の文書を真面目に読んだのかどうか,つまり 真面目に仕事をしたかどうかさえ分からない.

裁判所は,判決文以外では「説明責任」を問われる機会がないので,このような 態度は,「最高裁なのだから正しい」と言うに等しい傲慢なものと言わざるを得ない.

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「冷戦とアメリカの科学」最終章の抜粋 [仕事とその周辺]

当ブログで再三紹介しているSW Leslie氏の,"The Cold War and American Science" という本ですが(例えばこの記事),全部の粗訳が終わりました.今回は,その最終章の冒頭2ページの訳と,残りの部分の抜粋を紹介します.(2020年6月18修正~主に下線部分
1401577.gif2021年1月、翻訳・出版しました。→緑風出版のサイト

photo19r.jpg9章 審判の日々:3月4日と4月3日

MITの教員メンバーは,1969年1月にストライキを呼びかけた.MIT自身へのストライキではなく,むしろ「米国における生活の中の科学と技術のいまの役割に関連した問題と危険について公開の討論」を誘発することをめざしたシンボリックな意志表示であった.いつものように仕事をする代わりに,同僚や学生たちに科学の利用や悪用について,その1日,深く考えることを強く勧めた.3名の学科長を含む,科学者と工学者である48名の教員が「3月4日声明」に署名した.(右の写真のキャプション:ケンプリッジ警察が反戦活動家を排除するのを眺める機器研究所の職員.警察はデモ隊をすぐに追い払ったが,シット・イン,ティーチ・インや同様のイベントは,MITとそれに率いられる軍事資金による研究に国民的関心を集めた.)

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AI研究者が兵器利用に反対 [仕事とその周辺]

ai-weapon-mainichi180405.gif今日(4/5)の毎日に「AI研究者『兵器開発NO』」というタイトルで,各国AI研究者60人ほどがロボット兵器開発に手を染める韓国の大学との「絶交」を宣言したという記事が目に止まりました.
ネット上の記事
技術ニュースサイト(英字)の記事
 #知の暴力
毎日の記事から冒頭部分を引用:
「世界30の国・地域の人工知能(AI)やロボット工学の研究者らは4日、AIを用いた軍事技術の研究センターを設置した大学「韓国科学技術院」について「ロボット兵器の開発競争を加速させる動きで遺憾だ」と批判、開発をしないと確約するまで絶交すると宣言した。
 呼び掛けたのは、AIの研究で知られるオーストラリアのトビー・ウォルシュ氏。ロボット研究の中村仁彦・東京大教授ら60人近くが賛同した。」

関連して,このような,新技術の軍事利用に先手を打って禁止する,というアイデアが,科学技術倫理の教科書にあるので紹介します.
Raymond E. Spier編集による“Science and Technology Ethics” (2002)の207-212ページです.

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川内原発トリチウム放出再開 [仕事とその周辺]

九電の「廃棄物の処理」のページにある原発からのトリチウム放出量をチェックしてみると、3年前に運転を再開した川内原発は、そのトリチウム大量放出も「再開」していることが分かります。玄海もこのまま運転を続ければ、同じような大量放出を始めることになるでしょう。
tritium-kyuden.jpg
ちなみに、3.11以前に玄海原発が稼働していた約10年間に環境に放出したトリチウムは、福島原発事故の汚染水タンクにあるその量に匹敵します。放出されるトリチウムは周辺での白血病多発の原因である疑いが大です。次をご覧ください。
http://ad9.org/blog/nuclear/y2017/saikadohantai-kumamoto.pdf
http://pegasus1.blog.so-net.ne.jp/2017-06-16

関連記事:原発からのトリチウム放出
     トリチウムのマルチヒット効果
     人工放射能と自然放射能とでは人体作用が違うのか?
     カリウム40とセシウム137の違い

追記:2012年から3年間はほぼ停止しているため数字が小さくグラフではほとんど見えません。表と対数グラフ1401577.gifにすると次のとおり。(画像クリックでpdfへ)

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国大協会長が「法人化は失敗だった」 [仕事とその周辺]

yamagiwa.jpg国大協会長の山極寿一氏(京都大学学長)が「法人化は失敗だった」と発言しています.(右の画像をクリック 1401577.gif私的アーカイブへ)
さて,それではこの問題が起きた2000年代初頭,彼はどのような発言,態度を取ったのか知りたいものです.当時この問題での氏の発言を聞いた記憶はありません.もし沈黙していたのであれば,他人事ではなく「自己批判」も必要でしょう.(1401577.gif追記:国大協会長としての発言なので,彼個人というより,この政策に協力してきた国大協としての反省が必要です.)
なお,上記読売の記事にある「日本は初等中等を含め、世界に対して誇れる教育をしてきた」という発言は一面的過ぎます.多くの人が指摘する否定的面も多々あります.「どの側面では」などの限定をしないと「日本すごーい」と一緒です.

国立大学の「法人化」問題で,「週刊金曜日」2002年4月19日号に発表し,「ペガサス・ホームページ」に転載した拙文を,この際当ブログにも転載します.(関連ページ:国立大学「独立」行政法人化問題資料集国立大学独法化阻止全国ネットワーク
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kin-yobi20020419arrow.jpg政府が実施を急ぐ独立法人化
大学の“独立”は逆に失われる恐れ

  英訳
          豊島耕一

政府は二〇〇四年度にも,大学を国の行政組織から独立させる「独立行政法人化」を実施しようとしている。
目論見通りにいくと、「独立」の言葉とは裏腹に、文部科学省の規制力が強まり、大学の廃校か存続の権限さえも大臣が握ることになる。憲法や教育基本法が保障する「学問の自由」「大学の自治」に真っ向から挑戦する制度改悪だが、反対の動きは極めて鈍い。
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(冒頭の、削除された読売記事:
http://kyoiku.yomiuri.co.jp/torikumi/jitsuryoku/iken/contents/40-2.php

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