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退職金裁判,最高裁の決定文 [仕事とその周辺]

saikousai180524-1.jpgsaikousai180524-2.jpg退職金裁判で最高裁に上告していましたが,右がその決定文です.「門前払い」です.

昨日(6月4日),佐賀中央法律事務所で東島弁護士と記者会見しました.以下はその配布資料です.
佐賀大学退職金引下げ無効訴訟 ―概要、争点、各判決の内容、批判- (東島弁護士)

最高裁決定について+退職金裁判高裁判決について(豊島)

私の,「最高裁決定について」を,以下に転載します.
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最高裁決定について
  原告 豊島耕一,2018年6月4日

佐賀大学の退職金裁判に関する最高裁決定について,簡単に4点述べます.

1.最高裁が上告文書を真面目に読んだかどうかを検証できない.

我々の上告に対して最高裁から5月24日付けで棄却の決定通知が届けられた. 本文は,棄却の理由として単に民訴法 312 条と 318 条を挙げるのみで,わずか 257 文字にすぎない.我々の上告文がなぜこれらの条項を満たさないかについての議論 は一言もない.従ってこの判断が妥当かどうかを,我々だけでなく第三者も検証で きない.さらにいえば,最高裁が原告の文書を真面目に読んだのかどうか,つまり 真面目に仕事をしたかどうかさえ分からない.

裁判所は,判決文以外では「説明責任」を問われる機会がないので,このような 態度は,「最高裁なのだから正しい」と言うに等しい傲慢なものと言わざるを得ない.

2.原判決の「事実誤認」「法令違反」に関して最高裁は判断せず.

通知本文は「本件上告の理由は,違憲及び理由の食違いをいうが,その実質は事実誤認又は単なる法令違反を主張するものであって,明らかに上記各項(民訴法312条1項又は2項)に規定する事由に該当しない」と言う.つまり,原判決の「事実誤認」や「法令違反」に関して最高裁は判断していないのである.

そもそも,上告の条件をこのように制限し,「事実誤認や法令違反には吾(最高裁)関せず」とする民訴法三百十二条自体が「三審制」を否定するものではないだろうか.

3.最高裁の根拠を示さない決定にもかかわらず,上告は民訴法の要件を備えていた.

我々の上告文書では,高裁判決が民訴法312条(違憲,法令違反等),318条(判例違反)にある上告の条件を備えていることを詳細に述べている.これに対する最高裁からの具体的な反論は,上に述べたように全くない.

4.この裁判の意味など

裁判の内容自体については最高裁からはなんらの言及もないので,これについての私の意見は高裁判決に対する批判と同じであり,別紙にまとめている.

裁判は敗訴の結果に終わり,被告の行動の正当化を裁判所が確定させることになった.これは大きなデメリットである.しかし同時に,労働法制と現実の乖離,国立大学の政府への異常な従属ぶりなどを多くの人に明らかにすることが出来たと思う.このことは「泣き寝入り」ではほとんど出来なかっただろう.また,裁判所の実態が「三権分立」の原則からいかに乖離しているかということも,残念ながら明らかになった.

また,労働者の権利を本当に守るためには,組合などが,ストなどの強力な手段をも用いて職場で直接活動することが重要であることもより明らかになったと思う.

今回の裁判の原因は大学当局の労働契約法無視にあるが,その背景にある,政府から大学に圧力が加えられやすいという状況は,国立大学法人制度の弊害の一端を示したと思う.筆者は当時法人化に反対したが(例えば「週刊金曜日」2002年4月19日号.注1),今日この制度の設立に加担した国立大学協会の現在の会長が「法人化は失敗だ」と発言するに至っている(注2).この制度の見直しの議論が起きることを期待する.

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注1)政府が実施を急ぐ独立法人化 大学の“独立”は逆に失われる恐れ
http://pegasus1.blog.so-net.ne.jp/2018-03-10-1#friday (QRコード ➚)
注2)異見交論40「国立大学法人化は失敗だ」山極寿一氏(京都大学学長),読売教育ネットワーク,2018年3月9日.
http://kyoiku.yomiuri.co.jp/torikumi/jitsuryoku/iken/contents/40-2.php

本裁判の上告文書をはじめ,法廷文書は次のブログ記事からたどることが出来ます.
http://pegasus1.blog.so-net.ne.jp/2018-01-28
または「ペガサス・ブログ版 退職金」で検索
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