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金平茂紀氏の新刊 [メディア・出版・アート]

kanehira.jpgテレビキャスター金平茂紀氏の「抗うニュースキャスター」という本を読んでいます.彼がこれまでの発表した文章をまとめたものです.まだ半分ほど読んだところですが,印象的な文章がたくさんあるので,その一部を紹介します.応援のクリック歓迎
金平氏で思い出すのは,もう10年以上前と思いますが,アメリカでの退役軍人が多く参加するイベント,たぶん戦勝祝賀行事のようなものでしたが,そこからのリポートで,彼が発した「アメリカには“戦争文化”とでも言うべきものがしっかり存在しているのを感じる」というような言葉です.

さて,この本の87頁の「日本のテレビ局はなぜ反原発の動きを報じ損ねたのか?」という章には,今のテレビメディアなどで働く人たちの政治的感性というものが垣間見える気がします.

その中から,少し文章を拾ってみます.(太字は引用者)
「メディアと市民の絶望的な『距離』」と題する節の冒頭部分です.
僕が個人的に抱いている悔悟を敢えて言えば、今の日本のテレビ報道の現場を指揮しているデスク、キャップ、編集長クラスに、「失われた10年」のなかで刷り込まれてしまった大衆運動軽視、蔑視の感覚に色濃く影響された世代が多いとうことがある。換言すると、スリーマイル島、チェルノブイリ、JCO事故直後に報じてきた異議申し立ての動きの価値を、これらの世代に継承できなかった僕らの世代の責任ということになる。
後続世代の大衆運動、社会的な異議申し立てに対するアレルギー、嫌悪感、当事者性の欠如には凄まじいものがある。デモや社会運動という語に、ネガティブな価値観しか見出せなくなっているのだ。これはおそらく日本的な特殊現象であり、かなり異様な事態である。欧米では、言うまでもなくデモは権利である。
だがこういう僕らの同僚たちが「アラブの春」だの、エジプトのタハリール広場の大衆行動については、ポジティブな評価を与えているのである。ニューヨークのウォール街占拠運動にさえ「あれは格差拡大に反対する99%の異議申し立てだ」と理解を示す。だが自分たちの足元で人々が繰り出すと、そこに連続性を見出すどころか、「距離」を置く同僚・後輩たちがいるという冷徹な現実がある。
既成メディアに対する人々の不信感はこの「距離」に由来する。6月29日に僕らは首相官邸前で大飯原発の再稼働反対デモの取材をしていたが、「お前らは取材してもどうせ放送なんかしないのだろう」「帰れ!」という言葉を浴びた。同行したカメラマンは必死に罵声に耐えていたが、ニューヨーク・タイムズのマーティン・ファクラー東京支局長がニヤニヤしながらそれを見ていた。「メディアに対して厳しいね」と彼は言っていたが、それには理由があることを彼は知っている。日本での取材歴が長く、日本語も器用に操る彼は、近著『「本当のこと」を伝えない日本の新聞』(双葉新書)の中できわめて本質的な指摘をしている。
〈私が12年間日本で取材活動をするなかで感じたこと、権力を監視する立場にあるはずの新聞記者たちが、むしろ権力側と似た感覚をもっているということだ。似たような価値観を共有していると言ってもいい。国民よりも官僚側に立ちながら「この国をよい方向に導いている」という気持ちがどこかにあるのではないか。やや厳しい言い方をするならば、記者たちには「官尊民卑」の思想が心の奥深くに根を張っているように思えてならない〉

このあと2012年7月12日の,17万人という空前の規模の脱原発大規模集会をテレビメディアがどう扱ったかが述べられています.
・・・テレビ朝日の「報道ステーション、」、TBSの「ニュース23クロス」、日本テレビの「ニュースZERO」といった番組がそこそこの時間枠を確保して報じていたのに対してNHKの「ニュースウォッチ9」は1分半程度、しかも政府主催の意見聴取会の「まるでインサート映像扱いになったようにもみえた」と手厳しく批判されていた。フジテレビの「ニュースJAPAN」に至っては、オーストラリアでカンガルー大量発生(4分10秒)という暇ネタ以下の扱いで、35秒程度だったという。これくらい局によって扱いは違っていたのである。
僕自身は、当日の「ニュースウォッチ9」や「ニュースJAPAN」の編集長をやってい人物が誰かを知っているが、おそらく彼ら個人の判断以上に何としても大きく扱いたくない「空気」が職場に蔓延しているのだろう。
最後の,大規模集会をほとんど無視すると大手メディアの姿勢は私も何度も目撃しています.ブログにも繰り返し書きましたた.その例です.
NHKローカル局に説明責任を求め,独自報道の要請を
NHKの「番組審議会」に対する批判を
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