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映画「靖国」 [メディア・出版・アート]

9条世界会議のことは後回しにして,6日に東京で観た映画「靖国」について.

優れた映画だ.ナレーションは一切ないが,監督のメッセージは明確に伝わってくる.靖国とは,肉親を祀る社として信仰する遺族にとっては,かけがえのない慰霊の場なのかも知れない.しかしこの施設が現実に及ぼしてきた,そして今も及ぼしている機能は,巨大な暴力の磁場を作り続ける装置としてのそれである.この磁場に感応する人に,寛容さとは対極の,強烈な排他性のエネルギーを供給し続ける.この神社のご神体が刀であるのは極めて象徴的である.当ブログの別の記事で表現したように,ドイツに置き換えればまさしく「ネオ・ナチの施設」である.
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この映画では長回しが多い.これは,映画とはそもそも編集の産物なのだが,しかし一つのイベントないし対話については,編集しないでそのまま見せるという監督の態度によるのではないかと想像した.刀匠の刈谷さんと監督との対話のシーンが何度も出てくるが,職人は寡黙で,沈黙の時間が長い.普通はカットしてしゃべっている部分だけをつなぐのだろうが,時間を分断せず丸ごと観客に共有させているという感じだ.

境内でのシーンには,警察によるあきらかな「拉致・監禁」の現行犯に終わる映像が収められている.警察自身が起こした犯罪である.これも長回しである.拉致された,口から血を流していた青年がその後どうなったか気になる.

遊就館のシーンのバックに津軽三味線が流れるが,これはちょっと理解できない.津軽三味線を貶めているように思えた.映画が終わりエンドロールが消えて拍手をしたが,それは全部で3〜4人ほどで,すぐに消えた.観客は多様で幅広かったという証拠か.

cine-amuseW300capt.jpg上映前から,スクリーン横にガードマンと,館の支配人らしき年配の紳士が立っている.二人は上映中ずっと中に居た.もちろんこんな風景も初めて見る.戦前の時代に官憲が発した「弁士中止!」という言葉を思い出した.立っているのはガードマンという民間人で,しかも「弁士」を守るために立っているのだが・・・.

大変な盛況で,朝9時半に並んで午後1時のチケットを買ったが,開始前20分に館に到着したとき,その日のチケットはすべて売り切れていた.

有村治子,稲田朋美の両議員は,国会議員としては失格だが,この映画の広報宣伝担当としては抜群の業績を上げてくれた.彼女らの活動は,広告宣伝費に換算すればいったいいくらになるだろう.映画のエンドロールに両名の名前を入れるべきではないだろうか?

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明子

拙ブログへのTBありがとうございます。
ようやく話題の映画を観ることができました。
静かなタッチで、同時に固定カメラではなく、多分ハンディカメラなのでしょう、被写体にすれすれまで近づいての撮影なので、見る側が一緒にそこにいるような錯覚にとらわれました。

 いろんな人が見て、どんな感想をもつのか気になるところですが、やはり最後の音楽だけのシーンで靖国と天皇・戦争への鼓舞、といったつながりが描かれていた部分に、この映画の本質を観たような気がします。

いい映画でした。
by 明子 (2008-10-05 17:06) 

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