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「歌わせたい男たち」は是非ビデオ化を [メディア・出版・アート]

1401577.gifすでにDVDになっています.
「歌わせたい男たち」の地方公演を福岡市で観ることができた.東京都の公立学校での「日の丸・君が代」強制の状況を喜劇に仕立てた永井愛の作品である.日本人の長所とされる勤勉さ,几帳面さが,全く見当違いの方向で徹底的に発揮されるとどうなるか,その悲喜劇がコミカルかつシリアスに描かれている.主演の戸田恵子はスタイルも良く,とても美人に見えた.最後の方でア・カペラでシャンソンを歌うが,きれいな声で結構うまい.
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今やたった一人,いわば絶滅危惧種となった,卒業式で君が代を歌わず,起立しない社会科教師を,なんとか歌わせよう,起立させようと,それこそあの手この手で奮闘する校長(大谷亮介),若いがより強硬派の英語教師(中上雅巳).対するこの社会科教師(近藤芳正)はなかなか動ずる様子はない.この絶滅危惧種と親しい新任の音楽教師(戸田恵子)はこの両者の間で戸惑う.そしてノンポリの養護教諭(小山萌子)はケイタイメールに忙しい.

組織対個人という普遍的テーマもあるのかも知れないが,その「組織」の側のあまりのエキセントリックぶりに,はるかにそれを超えて,尋常ならざる恐怖のようなものを感じてしまう.そして,問いかけざるを得ない.この学校の空間というものは,戦時中の「一億火の玉」の世間と,はたしてどれほどの隔たりがあるのだろうか,と.

抑圧はどの社会にも見られるとは言いながら,この社会の抑圧のスタイルには,やはりどうしても「日本的」というべきものを感じる.それは,130年も前に福沢諭吉が観察したような,「上」に対する異常なほどの従順さである.
政府の吏人が平民に対して威を振う趣を見ればこそ,権あるに似たれども,この吏人が政府中にありて上級の者に対するときは,その抑圧を受ること,平民が吏人に対するよりなお甚しきものあり.譬えば地方の下役らが,村の名主共を呼出して事を談ずるときは,その傲慢厭うべきが如くなれども,この下役が長官に接する有様を見れば,また愍笑に堪えたり.(福沢諭吉「文明論之概略」)
「名言集再録」の三番目参照 http://pegasus1.blog.so-net.ne.jp/2005-11-26
校長が屋上に登っての「アジ演説」が最後の方の見せ場だが,これは明らかに「全共闘」のパロディーだ.かつてヘルメットをかぶって「革命」を叫んだ人たちの中にも,この校長のように,権力の僕となって勤勉さ,几帳面さを発揮している人も多いだろう.

校長らがこの絶滅危惧種にたいして,なんとか歌わせようと説得するロジックの一つが,職場の協力態勢ということである.一人だけ違った行動をされると,(教育委員会の指導などで)みんなが迷惑する,という脅しも含まれる.これは,「『君が代』解雇をさせない会ニュース」の中で東本高志という人が紹介している,全教傘下の一組合が出した指導方針ともうり二つである.
また、全教傘下の都教組北多摩西支部の「『日の丸』『君が代』おしつけに反対し、父母・地域・教職員の民主的合意にもとづく学校教育を」(1999年10月5日)を見ると、次のような指導方針が記されています。
「結果として『おしつけが強行』されたり…『職務命令』で押し切られることがあっても、そのことで“ガッカリ”することなく子ども中心の感動ある行事にしようではありませんか。また、実力行使や個人的に行動することなくあくまでも教育の条理をにたってよく相談してすすめましょう。ひきつづき職場の協力態勢を保ち、父母・地域の声を広げるとりくみを粘り強くすすめようではありませんか」(「4私たちのとりくみ」「3)職場の合意づくりを」)。
河原井さん・根津さんらの 「君が代」解雇をさせない会ニュース NO15 2008年 4月20日
http://kaikosasenaikai.cocolog-nifty.com/blog/files/newsno15.pdf
日教組も全教も,口では強制反対を言いながら,これを勇気を持って実行した人たちを事実上見殺しにしている.スト処分に備えて蓄えたはずの「救援資金」を被処分者のために使おうとはしない.ストなど全くしないのだから余ってしようがないはずだが,「組合で決めたことではないから」というのがその理由だ(ブロガー自身,全教に電話で確かめたことがある).「組合でも決められなかったこと」を,犠牲をも省みず実践した少数の勇気ある人たちの闘いのためである.組合民主主義の手続きを踏めば規則は変えられ,組合も何らかの貢献,支援が出来るはずなのだ.しかしその努力さえもしているようには見えない.これら組合の指導的立場の人たちは,この劇をどのように見るのだろうか.

一連の全国公演は昨日の山口で終わった.この劇はもう何桁も多くの人に観てもらう価値があると思うが,そのためにはビデオ化をぜひ考えてもらいたいと思う.オペラのDVDが十分に楽しめるように,舞台作品も,優秀なカメラマンと監督の手にかかれば,そしてもちろんお金をかければ,りっばなビデオ作品になると思う.

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初演を紹介した新聞記事
YOMIURI ONLINE
卒業式の“君が代騒動”描く 「歌わせたい男たち」
http://www.yomiuri.co.jp/entertainment/stage/theater/20050928et05.htm

asahi.com
君が代騒動、喜劇に 永井愛新作「歌わせたい男たち」
http://kddi10.asahi.com/culture/entertainment/dvd/news/TKY200510070216.html

1401577.gif戸田恵子のオフィシャルブログに,このツアーの記事がずっとあります.
1401577.gif上記ブログにTBを送っていました.「美人に見えた」などと書いているので,採用されないかと思ったら,ちゃんとTBかかっていました!
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