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テレビ報道職についての分析—その2 [メディア・出版・アート]

「テレビ報道職のワーク・ライフ・アンバランス: 13局男女30人の聞き取り調査から」という本の紹介の2回目です.応援のクリック歓迎
1回目3回目

ちょっと風変わりなジャーナリズム論で,現役のテレビ報道職へのインタビュー取材に基づいて書かれた本です.いつもは取材する側のメディア側の人たちが取材の対象となり,テレビメディアの問題点が明かにされます.

途中まで読んだところですが,とても啓発されます.マスメディアを「マスゴミ」と決めつけてくずかごに捨てるのではもちろん何も解決しないのです.

テレビ報道職の人たちによって「ジャーナリズム」という言葉がどう受容されているか,という切り口から見た一節を紹介します.組織の中で「個」が極端にネグレクトされ,その反動としてフリーランスを理想化するという思考型を観察した後に続く,「マスメディアにおけるジャーナリスト/ジャーナリズムの復権」というパラグラフ(100 108ページから)です.
マスメディアにおけるジャーナリスト/ジャーナリズムの復権

本章の第1節では、メディア企業のなかでキャリアパスを積んできた報道職たちが抱いている「ジャーナリズム」のイメージが検討された。彼ら・彼女らに共通する特徴として言えるのは、「ジャーナリスト/ジャーナリズム」を極端に理想化する反面、「僕らは所詮甘いんですね。僕らがそんな、なんかこう、ま、新聞も含めてそうなんですけれどね。ジャーナリスト然としてふんぞり返っているのは、ちゃんちゃらおかしい」(i男)と代表されるように、自分たちが「ジャーナリスト」と名乗るのにきわめて躊躇を示す傾向である。また、「サツ回り」、「夜討ち朝駆け」を報道の原点や「一人前の記者になるための必要な通過点」として認識し、それがメディア業界の文化として定着している部分も確認できる。つまり、マスメディアのなかで「ジャーナリズム」の規範概念だけが一人歩きするような状態があり、他方では日本の放送メディアのなかには、独自の報道慣習と考えが形成され、日々の現場で貫徹されている現状がある。このように「ジャーナリズム」は規範的、思想的なニュアンスを帯びる言葉として受け入れられる一方、他方では前述の5項で見られるように、日々の取材編集といった言論表現活動は「報道」という言葉に集約され使われており、使い分けの傾向が現れている。なぜ、「ジャーナリズム」がそう理解されるようになったのか。なぜ日本のメディア業界にこれほど浸透しにくいのか。

その原因を考えるためにこれまで検討してきた「ジャーナリズム」概念の受容をめぐる問題を提起したい。日本における報道職や管理職にとっての理想的なジャーナリスト像は、彼ら・彼女らと同じ企業組織内にはなく、むしろ組織外のフリージャーナリストとかなり重なっていることがわかった。それはプロ意識をもち、危険を冒しても現場へ行く、というタフでカッコウいいイメージである。象徴的な出来事は、2003年のイラク戦争以降の戦地や紛争地取材、あるいは2011年の福島第一原発事故であった。社員記者の安全第ーという「建前」を掲げて現場から続々と撤退した大手メディアの代わりに、多くのフリージャーナリストが事故現場や周辺に潜り込み、レポートを送り続けていた。そこからは、「組織と個」の矛盾が露呈されただけではなく、「ジャーナリズム」という言葉がフリージャーナリストの仕事を語る際の専門用語であるようにすら見えてきた。フリージャーナリストという、メディア組織的論理に包摂されない、あるいは拘束されない存在がジャーナリズムの理想や理念を体現してみせたのである。

こうした「ジャーナリズム」の規範をフリージャーナリストにのみ投影し、理想、理念としか見ていない傾向のある現場では、報道という取材活動のルーテイン化や横並びなどの慣習がさらに強まり、本来果たすべき権力監視と言論的公共圏の維持がおろそかになることが懸念される。しかし、前述のようにメディア企業のなかにジャーナリストとは名乗らないものの、ドキュメンタリーや調査報道を通して社会的不正義に目を向け、弱者や当事者の目線に立った報道に取り組む報道職たちも少なからずいる。そこで単に組織的な報道として彼ら・彼女らの仕事を捉えるのではなく、組織内の「個」として注目させるためにもメディア企業内部での「ジャーナリスト」用語の復権が必要ではないかと思われる。記者が「個」になることを恐れることなく、「個」として通用する職場風土を作り出し、また、「ジャーナリズム」の「イズム」という思想的な部分をメディア企業内に多く流通させることによって、組織内外のジャーナリスト間の回路づくり、連帯をはかる際のキーワードとしての役割も期待されるはずである。

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