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退職金裁判の判決について [仕事とその周辺]

「退職金裁判判決」の記事で,「数日内に批判をします」と書きながら3週間以上経ってしまいましたが,コメントしたいと思います.すでに控訴もしました.応援のクリック歓迎

下に「当裁判所の判断」の部分の要約を書きますが,長々しい判決文をスリム化すると,論理も何もない,床屋談義のレベルに過ぎないいい加減なものであることがクリアになります.批判するにも値しないほどのものです.

要するに,
1) 減額幅も国家公務員や他大学と同じ相場だから問題ない.
2) 国の要請に従わないと,被告(佐賀大学)は公務員バッシングにさらされ,国からも仕返しを受ける.
3) 財政的余裕があっても,退職金補填に使えば翌年度への目的積立金が減る.(「利益の発生を障害しようとするもの」!だそうです.
4) 通知から実施まで6日という,不利益回避の手段も取れないやりかたも,他大学と横並びの必要から(「歩調を合わせる必要があった」)やむを得ない.
というものです.
つまり,「みなさん我慢しているのだから,あなたも我慢しなさい」ということ.

1では,「不利益の程度」の判断に原告の年金額を引きあいに出すという意味不明.年金が被告(佐賀大学)からのものというのならともかく.地代収入や株の配当利益も影響する?(私にはないが)
2は公務員バッシング(もどき.公務員ではないので)を公認し,国の恣意的な予算操作を認めるという恐るべきものです.
3は,退職金への補填という特定の支出に限って「利益の発生を障害」するもの,という不思議な断定.
4は根拠不明の「横並び」の絶対視.

以下は「当裁判所の判断」の主要部分の要約です.
判決全文は,画像ファイルですがこちらを(始めの34ページ35ページ以降)ご覧下さい.以下の要約部分はこちらにテキスト化しています.
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22ページからの「当裁判所の判断」の主要部分である35ページの「2 争点1」以降を要約
(その前の1は「事実認定等」)

争点1 改正が就業規則の不利益変更としての合理性を有するか (p.35)
「労使間の合意によらない労働条件の不利益変更」に当たる.
それが正当化される条件:
就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであること(労働契約法10条)
①労働者の受ける不利益の程度
②労働条件の変更の必要性
 「重要な権利,労働条件に関し」ては「高度の必要性」が求められる.
③変更後の就業規則の内容の相当性
④労働組合等との交渉の状況

以下,②,①,③,④の順に論じられている.

②労働条件の変更の必要性((1)ア)(p.35)
a) 改正後国立大学法人法35条(改正後独立行政法人通則法50条の10第3項)を引用して,これらによって「官民較差の解消が要請されている」とする.
b) それにもとづく国からの要請(減額)があった.
c) 「利益」を「差額分に」あてることは出来なかった.
d) 他の国立大学法人が減額した理由を「国の要請に従わず,職員の退職手当の減額を行わないという選択をすれば,その財務内容が悪化するだけでなく,国や一般国民からの非難を受け,運営費交付金の減額等によって今後の事業活動に支障を来す可能性があることが影響したものと推認される」とする.
以上より「高度の必要性があった」.

原告主張について (p.38)
f) 余剰利益はあったが,当期中の原告主張の退職手当の支給は「利益の発生を障害しようとするもの」で,「実質的」に「目的積立金を目的外に流用」することになる.
g) 以降に教育研究の充実などを「予定通り行うことに多くの財政的制約が生じる」.・・・(1)イ(ア)
h) 流動資産はあったが,「当期未処分利益として,翌年度以降目的積立金として中期計画に定める剰余金の使途に充てることができるにとどまる」から,余剰金があるとは言えない.(p.39)
i) 「将来の債務弁済の原資となるべき現金等の資産を他に使用してしまった場合には,翌年度以降の収益事業による収益や新たな資金調達によってこれを補填することは困難」
 コメント:利益はすべて「将来の債務弁済の原資となるべき」もの?
j) 故に「直ちに退職手当の補充に充てる資力があるということはできない」
 コメント:「直ちに」でなければ「資力があるかも知れない」ということ.

①労働者の受ける不利益の程度・・・(2) (p.40)
減額は全国の国立大学法人等と同じなので「社会一般の退職金の水準」より低くない.
年金も「社会一般の年金の水準に」比べて低くない.
 コメント:「不利益の程度」に年金は関係ないでしょ!

③変更後の就業規則の内容の相当性・・・(3) (p.41)
国家公務員と横並びであり,削減は段階的であり,過半数代表者の大半が同意していると「評することができ」,他のほとんどの国立大学法人も同じことをやっているので,「十分な相当性を有する」.

④労働組合等との交渉の状況・・・(4) (p.42)
他大学と「歩調を合わせる必要があった」ので,決定6日前の1回の団交でも「当時なし得た可能な限りの説明であった」.・・・(4)ア
財務レポートは「一定の情報開示機能を果たしていた」し,他大学と「歩調を合わせる必要があった」ので,改正規程の「施行日を変更しなかったことにも合理性がある」.・・・(4)イ
過半数代表者への意見聴取は改正の後だが,他大学と「歩調を合わせる必要があった」のでやむを得ない.「意見聴取は就業規則の効力要件で」はない.・・・(4)ウ

以上より,労働契約法10条の要件を満たす.・・・(5)(p.43)

争点2 就業規則の不利益変更の際,周知義務を履行したか (p.44)
被告は実施の6日前に電子メールで知らせた.また,9月27日には減額される見込みであることを知らせ,11月29日にはその見込額を知らせている.組合とは12月21日には団体交渉を行った.これらにより原告は改正予定及びその内容を知り得る状態にあった.
以上により,被告は「『周知』(労働契約法10条労働基準法106条1項)させる手続を採っていた」.
「不利益を免れる手段が実質的になかったとの理由で周知が実質的になされていないと評価することもできない」.
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