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ビル・ゲイツが原子力に参入? [仕事とその周辺]

1401577.gif末尾に追記あり)
今日(23日)は,ビル・ゲイツが原子力に投資,というニュースがメディアで大きく扱われた.日経の一面トップ,そして報道ステーションでも取り上げた.劣化ウランを燃料とし,最長100年間燃料補給なしで運転可能という.
http://www.nikkei.com/biz/focus/page/p=9694E3E4E3E0E0E2E2EBE0E0E4E3

0309-Nuke_x220.jpgさっそく「TWR」や「テラパワー」のキーワードで検索してみると,MITの1年前のTechnology Reviewの記事や,American Nuclear Societyの,考案者John Gillelandへのインタビュー記事が出てきた.(図はMITのサイトから)

日本の報道では,ウラン238だけしか要らないような言い方だったが,やはり起動するには濃縮ウランを使う.いったん「火」が点くと反応が持続するというわけだ.分裂で出てくる中性子を高速のままで次のウランに当て,プルトニウム239を作る.これが別の中性子の照射を受けて分裂する,という反応の連鎖で,高速増殖炉で行われる燃料増殖(breeding)とその利用つまり燃焼(chain reaction)とをいっぺんにやってしまおうというものだ.(全く核的に不活性の物が,いったん「火」が点くと次々と燃えていくという,水爆の燃焼とちょっと似ている.)

上の絵(MITサイト)を見ると,本当にこのような構造で除熱つまり熱の運び出しが出来るのだろうかと思う.反応部分にきめ細かくナトリウム(もんじゅと同じ!)の配管が必要だろうが,どうもそのような構造にはなっていない.このままだとすぐに「炉心溶融」してしまいそう.さらにもっとするどい突っ込みが,次のブログ記事のコメント欄にあった.
The Traveling-Wave Reactor, March 05, 2009

面状の領域で燃焼が起こり,そこからの中性子が増殖と分裂反応とを引き起こすのだけれど,中性子の半分は「燃えかす」の方に行くのでロスになる.1個のプルトニウムの分裂で出てくる中性子の数はたかだか2.9個なので,燃えていないウランのある前方には約1.5個しか行かない.そうすると,増殖(ウランへの中性子の吸収)と,出来たプルトニウムの燃焼(核分裂)とにそれぞれ1個ずつ,計2個ないことには反応が持続しないが,これでは足りないではないか,というのだ.("Patrick said..."の部分)

ただしこれには次のような反論がありうるだろう.反応領域は,MITの記事によると厚みが1メートル近くもあるようだから,「面」ではなく「体積」と見なければならない.そうすると,反応領域の後ろの面からの中性子の漏れは相対的に小さく,2個以上の中性子が利用可能なのかも知れない.

むしろ,最初に述べた除熱の問題,つまり構造的な問題で,かなり非現実的という気がする.

それから,日経の記事には「制御棒が要らない」とも書いてあったようだが,それでは,もし止めたいと思ったらどうして止めるのだろうか?
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24日12時追記:東工大の関本教授の研究にこの燃焼方式が含まれていて,一般向け(と言っても理系の基礎知識は必要)の解説書がありました.
http://www.nr.titech.ac.jp/~hsekimot/
ここの「CANDLE燃焼方式」をクリックすると全部で48ページの解説書に行きます.

追記2:技術的にはシリアスな内容ですが(ただし上に引用した図はいいかげん),メディアの取り上げ方については,「ニュース」ではなく計画された宣伝,プロパガンダと言えるようです.つまり,なぜ今報道するのか,ということを示す直接のニュース源が不明です.たとえば,産経のサイトには,「米マイクロソフトの創業者で会長のビル・ゲイツ氏が関与する米ベンチャー企業と東芝が、次世代原子炉の開発に向けて技術情報の交換を始めたことが23日、わかった」とあり,どうして「わかった」のか,具体的な記者発表などの事実が示されていません.日経の記事はもっとひどくて,ビル・ゲイツに成り代わっての「布告」のような体裁です.また,ビル・ゲイツ氏が東芝を訪問したのも昨年のことのようです.
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安達泰治

私は、蓄電池に、非常に、興味を示している次第である。原子炉は、なかなか、似た構造をしていると思われる。私の見解は、なかなかもってして、原子炉は、ビル・ゲイツに、思いもよらぬ以上のことを、働きかけると考えられる。コンピューターのことについて、知れないことのないビル・ゲイツは、なかなかもって、言われぬことに、示しをつけたと考えられる。
by 安達泰治 (2010-04-19 16:36) 

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