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「原発プロパガンダ」その2.「脱原発プロパガンダ」への応用 [メディア・出版・アート]

9/5追記:テレビについて,「絶大な影響力をもつメディアがなぜ『無料』なのか,視聴者はきちんと考えなければならない」とあります(195ページ).かつて私はテレビは「街角のフリーペーパーと同じ」と書きましたが,まさにそのことが指摘されています.
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前の記事の最後に,「85ページからは『原子力PAの考え方』という,広告推進側の戦略・戦術の詳細が転載されている.実はこれには宣伝戦の基本的なことも相当含まれてい」る,と書きました.つまり,「脱原発プロパガンダ」にも応用できる点が多々あるということです.そこで,その部分を紹介します.応援のクリック歓迎
アンダーラインの部分,たとえば「短くともよいから頻度を多くして,繰り返し連続した広報を行う」などは重要.たとえば,憲法記念日に,1ページ全部を使って,寄付者のアリのような字で面積の多くを使う護憲広告はこれとは正反対ですね.面積を3分の1にして,間隔を置いて出す方がよっぽど効果的でしょう.最初の広告で寄付者を募ればもっと拡大できるはず.

(青色は著者の「地の文」.アンダーラインは引用者)
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『原子力PA方策の考え方』(日本原子力文化振興財団原子力PA方策委員会報告書)
I 全体論
一 広報の具体的手法
1 対象
(1)対象を明確に定めて,対象毎に効果的な手法をとる.
①父親層がオピニオンリーダーとなった時,効果は大きい.父親層を重要ターゲットと位置付ける.(略)真正面から原子力の必要性,安全性を訴える.
②女性(主婦)層には,訴求点を絞り,信頼ある学者や文化人等が連呼方式で訴える方式をとる.「原子力はいらないが,停電は困る」という虫のいい人たちに,正面から原子力の安全性を説いて聞いてもらうのは難しい.ややオブラートに包んだ話し方なら聞きやすいのではないか.
③不安感の薄い子供向けには,マンガを使うなどして必要性に重点を置いた広報がよい.タレントの顔は人々の注意を引きつける能力はあるが,人気タレントが「原子力は必要だ」,「私は安心しています」といえば,人々が納得すると思うのは甘い.やはり専門家の発言の方が信頼性がある.(略)
(2)対象は父親,主婦,子供(教育も含む),
訴える内容は原子力発電所の必要性と安全性,食品の安全性,原子力を中心とした科学的知識の普及などだろう.(略)

ターゲットを父親・主婦・子供という,当時の伝統的な核家族に置いているところがやや時代を感じさせるが,世代や性別に異なる方策を当てるといのは正しい.特に子供まで含んでいるという点には洞察力を感じる.また,タレントと専門家を並用する必要性を説き,その後の対談スタイル広告の制作に道を聞いている.さらに,マンガの有効活用にも触れている.

2 頻度
(1)繰り返し繰り返し広報が必要である.新聞記事も,読者は三日すれば忘れる.繰り返し書くことによって,刷り込み効果が出てくる.いいこと,大事なことほど繰り返す必要がある.
(2)短くともよいから頻度を多くして,繰り返し連続した広報を行う.政府が原子力を支持しているという姿勢を国民に見せることは大事だ.信頼感を国民に植え付けることの支えになる.
3 時機(タイミング)
(1)タイムリーな広告は効果大.
定期的に出ているコラム広告などは,効果は小さい.チェルノブイリや美浜炉事故が起きた時,スウェーデンで原子力発電所廃止を決めた時など国民の関心が原子力に向いている時期に広告すれば国民は注目する.
(略)
(2)広報効果の期待できるタイミングを逃さず,時機に応じたタイムリーな広報を行う.事故が発生したときは,国民の関心が高まっている原子力広報のタイミングは最適である.

短くわかりやすいメッセージを繰り返し発信するのが広告の基本であり,刷り込み効果の重要性をも理解している.事故が起きたときこそ絶妙のタイミング,というのは場合にもよるが,タイムリーさが勝負なのはまさにその通りだ.

内容(質)
(1)国民の大部分が原子力を危険だと思っているのが現状であるから,広報は“危険だ”を前提に置いて,徐々に安全性を説いていく方がよい.
(2) 訴求点をストレートに出す.ごかしてはいけない.「隠す」「ごまかす」という感じを持たれては何もならない.誠意を示す広報であるためには,担当者の姿勢,心構えが重要である.
(3)情緒に訴えるやり方は避ける.
原子力をイメージとしてとらえてもらうのではなく,事実を知ってもらう.(略)
(4)原子力には,隠されたものというイメージがある.このイメージ払拭のためにも,堂々と正面から訴える.原子力はこそこそ隠れてやるものではない.(略)
(5)一般人が信頼感をもっている人(医者,学者,教師等)からのメッセージを多くする.
医者や教師が正しい理解をしているかどうかが問題で,彼らに情報を提供する必要がある.(略)

本来危険なものを万全な体制で封じ込めています,という原発広告のセオリーをきちんと語り,専門家の言葉を多用する方式は,後の広告原稿に頻繁に登場していく.ただし,絶対に安全であるという前提付きだった.

5 考え方(姿勢)
(略)
6 手法
(1)広報の中心を“原子力発電所”に置きすぎる.
放射線やその他の分野から理解を深める手法も考える余地がある.放射線や放射能が日常的な存在であることを周知させる必要がある.(略)
(2)安全性や生活との密着性を機会ある毎に直接的に訴えていく.川も海も火山も暴れると恐い.ただし,対策があれば安心できる.
(略)
(3)利用実態をオープンに知らせる.
原子力が日常生活から離れた存在でないことを知れば,「見えない恐怖感」を和らげられるのではないか.,
(4)原子力広報は,まず“安全だ”と打ち出すのではなく,“核分裂という現象は危険だ,その危険をどう安全に変えているか”という手法を探る.これまで「安全」を強調しすぎた.だから何か起きると「それみたことか」,「日頃言っていたことと違うじゃないか」ということになる.世の中に危険でないものは無いのに,原子力だけは「安全だ」ということ自体おかしい.(略)

原発だけでなく,自然放射線の存在について語る手法は,九0年代以降繰り返し実施され,原子炉は多重防護にまって守られているという技術説明もまた,繰り返し語られている.「安全だ」と言いすぎる危険性についても注意を喚起している点に注目しよう.

その他
(学校教育)(略)
(原子力の日)(略)
(見学)(略)
(事故対応)(略)
(広告)
(9) 国民の反対が出るくらいの,アピール度の高い,強烈な広告を出したらよい.当たりさわりのない広告はやめること.
(10)国民を一つの対象として広報効果を上げるのは難しい.対象別に対応すべきだ.誰にも好かれようとし,誰にも関心を持たれない広告をする結果になってはいないだろうか.
(11)漠然とした情報の垂れ流し的広報は無意味だ.広告を業者に発注するときの国の姿勢に問題がある.「何かアイディアを出せ」という言いかたで代理店に迫るだけではだめだ.「国民にこの際何を訴えるのか」,「この際何を主張すべきか」,国のスタンスを示すことが重要だ.
(略)
(12)イメージ広告はやめて,情報をきちんとダイレクトに出す.ムードで,原子力は必要だという気持ちにさせることができるだろうか.原子力は化粧品の広告と同じ調子でやるべきではない.「事故を起こすかもしれない」という不安,「原子力をやらなくてもエネルギーは不足しない」という充足感に具体的に訴える必要がある.
(略)
(16)必要性を訴える場合,
主婦層に対しては現在の生活レベル維持の可否が切り口となろう.サラリーマン層には“一/三は原子力”,これを訴えるのが最適と思う.電力会社や関連機関の広告に,必ず“一/三は原子力”を入れる.小さくともどこかに入れる.いやでも頭に残っていく.
(略)

------中略-----

三 マスコミ関係者に対する広報
(1)広報担当官(者)は,マスコミ関係者との個人的なつながりを深める努力が必要ではないか.接触をして,いろんな情報をさりげなく注入することが大事だ.マスコミ関係者は原子力の情報に疎い.まじめで硬い情報をどんどん送りつけるとよい.接触とは会って一緒に食事をしたりすることばかりではない.
(2)関係者の原子力施設見学会を行う.見ると親しみがわく.理解も深まる.特に,テレビや新聞の内勤者の人たちにみせるのが効果が高い.彼らは現物を知らないので観念的批判者になってしまっている.
(3)五〜六人からなるロビーを作り,常に交流を図るのも一つの方法である.
(4)テレビディレクターなど製作現場の人間とのロビー作りを考える(テレビ局を特定してもよい).特定のテレビ局をシンパにするだけでも大きい意味がある.テレビ局と科学技術庁の結びつきは弱い.テレビディレクターに少し知恵を注入する必要がある.
(5)人気キャスターをターゲットにした広報を考える.事件のない時でも時折会合をち原子力について話し合い,情報提供をする.例えば,有名な人に三〇分くらい話してもらい,質疑応答する.(略)何かことが起
きて原子力がターゲットとなったときに,人気キャスターを集めて理解を求めることが出来るなら,これが最も効果的で,いい方法である.(略)
(6)広報担当官は,マスコミ関係者と個人的つながりを深めておく.人間だから,つながりが深くなれば,当然,ある程度配慮し合うようになる.
(7)日頃から,役立つ情報をできるだけ早く,かつまた,積極的に提供しておく.それが信頼関係を築く.記者にとってはありがたい存在になる.
(8)記者のポストが変わっても,情報の提供を継続していく.別の部局に移っても,情報資料を郵送する.ポストは二年くらいで変わるから,ずっと対象を広げていけば,強力な支援ネットを築くことになる.(略)
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