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「守る」ための直接行動から「変える」ための直接行動へ [反核・平和]

1401577.gif関連記事:“Futenma 365” の提案
ネット上で「非暴力直接行動」という言葉がしばしば見られるようになりました.その目的は大飯原発の無法な再稼働を止めるため,あるいはオスプレイ配備のような戦争準備活動を阻止するためなど,さまざまでしょう.沖縄・辺野古では,「海上座り込み」などの直接行動で,今に至るまで基地建設を阻止して来ています.いわば辺野古の自然と住民の安全を「守る」ための直接行動です.

非暴力直接行動は,そのみかけの「過激さ」とはうらはらに民主主義の機能不全を補完する有力手段です.イギリスでは議員もこの行動に加わり,逮捕もされています.
http://pegasus1.blog.so-net.ne.jp/2007-01-11

第一次大戦の際,アインシュタインは戦争に反対して,「2%の人間が兵役拒否すれば,政府は戦争を継続できない.なぜなら政府は兵役対象者の2%の人数を収容する刑務所を保有していないからだ」と発言したと言われます.多くの若者が胸に「2%」と書かれたバッジを付けたそうです.今の日本に当てはめれば,たとえば大飯原発再稼働阻止で,準備作業を阻止するべく道路を封鎖して逮捕者が出たとしても,その数が膨大であればその逮捕者を収容する留置場を手配するのに困難が生じるでしょう.

実際,イギリス・スコットランドでは,反核運動「トライデント・プラウシェアズ」は核兵器基地の封鎖行動でそのような状況を作り出しています.あまりにも逮捕者が多いため,まともに勾留・裁判に回したら司法システムが麻痺するので,逮捕はしても「キャッチ・アンド・リリース」状態になっています.

非暴力行動のほとんど唯一の教科書(註)と言える「トライ・デンティング・イット」[1401577.gifリンク修正]から数枚の写真を紹介します.画像をクリックすると全画面表示になります.(第4章前半後半オリジナル)

逮捕されようとするスコットランドの教会聖職者たち.2000年2月14日(p.75)
DMP27C~1.jpg
手続きと新しい友達とを待つ.2000年2月14日(p.76)
DMSCOP~1h.jpg
ファスレーンでの「ディ・フェンシング」(フェンス破り).1999年5月(p.68)
DMP17C~1h.jpg
逮捕されることはもちろん決して容易なことではないので,十分な準備が必要です.法的・精神的,物質的なサポート体制を事前に周到につくっておく必要があります.非暴力を貫くためのトレーニング,研修も重要です.また,逮捕によって職を失いかねないような場合はダメージが大きすぎるので全く勧められません.逆に,家庭の条件に恵まれたリタイアした人の場合は,もし裁判で有罪になっても罰金の代わりに禁固刑を選べるのであれば,むしろ生活費の節約になるかも知れません.

「ファスレーン365」と言う国際市民による英基地封鎖には日本チームも参加しました.その時の写真は次にあります.「キャッチ・アンド・リリース」の実例です.
http://www.faslane365.org/en/japanese/japanese_photo_gallery
http://faslane365.blog86.fc2.com/blog-entry-39.html
http://pegasus1.blog.so-net.ne.jp/2007-07-30
1401577.gifこの活動をまとめた単行本"Trident on Trial"もあります.
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1401577.gif(註)学問的・包括的に非暴力直接行動を論じた「市民的抵抗」もとてもいい本です.
http://pegasus1.blog.so-net.ne.jp/2011-10-04
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バッジ@ネオ・トロツキスト

>逆に,家庭の条件に恵まれたリタイアした人の場合は,もし裁判で有罪になっても罰金の代わりに禁固刑を選べるのであれば,むしろ生活費の節約になるかも知れません.

あまりにも共産党的ニッポン社会的な現状を反映したご提案に抱腹しております。
ま、現在のような過度の遵法主義は、ブルジョア議会主義的日和見主義の随伴物でしかないでしょうね。日本にも非破壊的強力戦術の闘争史はあったはずですが、戦後の極左冒険主義やゲバ棒おママゴトへの拒絶がこの辺の戦術の検討を放棄してきたのでしょうか。
by バッジ@ネオ・トロツキスト (2012-06-26 08:42) 

yamamoto

意図的な逮捕覚悟の戦術を取るかどうかは個人個人の状況を前もって考えたうえで,ということは,なにもニッポン特有でもなく,どこでもそうでしょう.持続性が必要ですから.ここで紹介したイギリスの運動でもそうです.
by yamamoto (2012-06-26 12:15) 

バッジ@ネオ・トロツキスト

いやいや「リタイアした人」は「生活費の節約になる」などという発想がですよ。
共産党をはじめとする日本の左翼活動家の高齢化は、韓国やアメリカでも知られてるそうですよ。「白髪振り乱して」街頭活動やってるって。
ま、社会全体の高齢化以上に地域でも職場でも若い人が少ない(ほとんどリタイア組み)のが日本の運動でしょうね。
by バッジ@ネオ・トロツキスト (2012-06-26 16:55) 

yamamoto

教育の「成果」だと思います.教育基本法でも重視が謳われているはずの政治教育がほとんど(効果的には)なされていないと思います.「一人ではどうにもならない」「政治に関わるのはダサイ」と言うように「洗脳」されていて,政治的能力が奪われている,日頃学生と接しての感想です.高校までの先生方の仕事を問いたい所ですが,大学ではこれを補正すべく,いわゆる「リメディアル教育」が必要です.
by yamamoto (2012-06-26 17:46) 

バッジ@ネオ・トロツキスト

もちろん、歴代自民党政府、文部省の教育政策に主要な責任があることは否定出来ません。しかし、いわゆる民主陣営の教育観や民主的教育政策のオルタナティヴにも問題はあった(ある)ように思いますがね。
共産党や左派労組、各種民主団体の構成員の中に今でも広範に存在する平目チャン体質や幹部依存(代行)主義、異端嫌悪(恐怖)などは、日本の進歩派陣営の人間観や社会観、教育観が明治維新政府のそれと完全に決別していないからだとも思いますよ。
永井潔氏や芝田進午氏、山口正之氏たちが、生前、デカルトやエンゲルスなどの先人の見解を引用しつつ共産党的全教的教育観の弱点についても指摘していました。
ま、脱亜入欧的、先進国に追いつけ的、主知主義的、実証主義的などなどの限界がみえる教育では、これからは資本にとっても変革勢力にとっても役に立たないんだと思いますね。

今日の日本社会の窮状は、正に明治維新以降の日本の教育(学校教育も社会教育も含む)の帰結でしょう。
by バッジ@ネオ・トロツキスト (2012-06-27 08:42) 

yamamoto

伝統的左派における幹部依存主義や異端嫌悪のご指摘,全くおっしゃるとおりです.3年ほど前の記事にも書きました.
http://pegasus1.blog.so-net.ne.jp/2009-09-15
最後の2つのパラグラフです.
by yamamoto (2012-06-27 10:39) 

yamamoto

上の記事の1年後,2年前も,同様のことを書いていました.
http://pegasus1.blog.so-net.ne.jp/2010-06-17
後ろから5番目のパラグラフをコピーします.同じ集会のことです.
「出席者たちは,それぞれの職場や持ち場では,鋭い批判精神を発揮して活動しているはずだが,なぜここではそれを作動させないのだろうかと不思議に思った.あたかも,職場での『異端』の罪を,この集会での『従順』によって償ってでもいるかのように.」
「鋭い批判精神」と書きましたが,実は単なる「公式のあてはめ」をやっていただけかも?
by yamamoto (2012-06-27 12:07) 

バッジ@ネオ・トロツキスト

yamamotoさん、貴兄が教育界の一員ならば、永井潔氏や芝田進午氏、山口正之氏たちの教育論には是非、眼を通すべきですね(例えば永井『鱓のつぶやき』、芝田『人間性と人格の理論』などにも散在)

歴代共産党指導者の唯物論や弁証法がその看板にもかかわらず自然科学的実証主義や非歴史的主意説を克服していない(不破氏のマルクス恐慌論解釈や宮本氏の史的唯物論に典型)ように、日本左翼主流の教育論も「受験教育」と峻別されず、真に考える力(事実認識力、価値認識力)さえ育てられないと思いますよ。
当方は少年期に素晴らしい非左翼の教師からそのことを痛感させられた経験をもっています。

>「鋭い批判精神」と書きましたが,実は単なる「公式のあてはめ」をやっていただけかも?

先進国地域革命では、党幹部や機関紙のオウム鳴きしかできない部隊は無力でしょう。公表党勢と比してのネット界での無力で再確認されています。
by バッジ@ネオ・トロツキスト (2012-06-27 19:14) 

バッジ@ネオ・トロツキスト

そうそう、日本社会は学校教育や社会教育も非常にお粗末だけど、左翼の党内教育から警察組織の職員教育まで、右も左も大組織の構成員教育みたいなものはかなり絶望的な水準ですね。
だから、かつての組織人も組織を離れると途端にデタラメ人間に転落してしまう。
例えば「超左翼」(笑)を自称する松竹伸幸氏みたいな元共産党幹部のお粗末さ。あれで共産党の元国政選挙候補だったというんだから、オウム鳴き組織の構成員の思考力水準は押して知るべしです。
紋切りや図式に依拠出来ないとなると悲惨な状況を露呈してしまうw

by バッジ@ネオ・トロツキスト (2012-06-27 19:49) 

yamamoto

久しぶりにこの記事へのアクセスが3件もあったので,コメント欄もまた見ました.トップのコメントで「日本にも非破壊的強力戦術の闘争史はあったはずですが」とありますが,まさにこの歴史の封印,集団的忘却こそが現在の状態をもたらしたと思います.
この投稿の2年後の2014年に,帚木蓬生の「天に星、地に花」という作品が発表され,久留米藩の宝暦一揆を中心とした農民の抵抗を活写しています(個人的にはノーベル文学賞ものと思っています.作者の帚木蓬生は高校の同窓,1年先輩です.面識はありませんが.
この小説をテーマに記事を3本書いています.最新のものは次です.(他はそれからリンク)
https://pegasus1.blog.ss-blog.jp/2019-07-20
by yamamoto (2021-01-19 12:06) 

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