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戦争法阻止運動の「総括」 [反核・平和]

高田健氏,総がかり行動,園良太氏の総括について.1401577.gif(末尾に追記あり)
戦争法阻止の大衆的運動は歴史的なものだったが,その本格的な総括もまだ出ていないようだ.しかしいくつかそれらしい文章は発表されている.応援のクリック歓迎

高田健氏の,「戦争法に反対するたたかいの経過と展望」(サブタイトル)という文章が,「許すな!憲法改悪・市民連絡会」の9月25日号に掲載されている(→ウェブ上にも).運動の「総括」という言葉がほとんど使われなくなったが,それに相当する文章だろう.「総がかり行動」の中心人物なので,この間の国会前大規模デモなどを組織したこの団体を代表する見解と見なせる.

今回の運動の経過や特徴などが,60年安保闘争以来の歴史も踏まえてコンパクトにまとめられている.しかしやはり,「なぜ法案阻止が出来なかったか」という根本問題に全く触れていない.そもそも「総がかり行動」の主要な目的の一つは,法案の阻止ではなかったのか?それとも,「本当に止める」「絶対に止める」という繰り返されたスローガンは,運動の目標を示すものではなく,単なる決意表明のフレーズに過ぎなかったのか?もしそうでないならば,この問いは絶対に避けて通れないはずである.

運動の結果(成果・損失)はもちろん法案阻止の勝敗だけでなく,たとえばその後の運動の発展のための「資産」がどれだけ得られたかということも重要である.だからと言って勝敗そのものを無視していいはずがない.

私なりに敗因を分析すると,当ブログで繰り返し述べたことだが,決定的な点は,大規模抗議行動において「最後の一押し」が不足したということだと思う.このことは,今や安倍チャンネルとなったNHKニュースで記者が繰り返し,「連休まで延びれば不測の事態が予測される」と,法案阻止の可能性に「危惧」を表明していたことも示唆していると思う.最後の一押しとは,国会審議そのものを遅延ないし阻止する非暴力直接行動である.直接行動を含まない抗議では,それかいかに大規模であろうとも,安倍首相がこれを意に介さないことは十分に予想出来た.つまり敗北は十分に予測出来たのである.

直接行動は小規模には横浜公聴会会場前の路上,それに参院委員会室の廊下で実行された.これがさらに,国会周辺の数万のうちの「わずか」数パーセントの人々によって,例えば国会や議員会館入り口の非暴力的な封鎖が実行されていたら,情勢は大きく変えられたと思う.野党議員が,山本太郎氏を除いて「牛歩」さえやらなかったのはほとんど裏切りだ.

高田氏の「総括」では, 1970年の反安保闘争に触れて,「国家や学校など既成の強権に対する反逆と実力による抵抗闘争を軸にした運動であり,運動は先鋭化し,対立と分裂を繰り返さざるをえなかったという面が否めない」と述べている.短い文章に期待するのは無理かもしれないが,「実力による抵抗闘争」に対するこの評価も一面的である.実力闘争(今日の言葉では直接行動)の全面否定とも誤解されかねない.

もっとも,高田氏が述べているように,国会前の行動は非常に多くの団体の共同行動であり,だからこそあれだけの多数の人々の結集が可能だったのである.そのような組織が「直接行動」で合意することはほとんど不可能だったことも明らかである.したがって,連携しながらも独自に行動する別組織が必要だったと思われる.前の記事「フル・スペクトラム・レジスタンス」を参照頂きたい.また同じ意味で,共同行動を代表しての「総括」であれば,上のような見方・分析は初めから不可能ではある.だとしても,それでは何が敗因か,という問題を避けていいということではない.

他方,「総がかり行動実行委員会」は敗因について触れている.
http://sogakari.com/?p=1057
第3項の「なぜ廃案にできなかったのか」には次のようにある.
「60%の反対・80%の今回で決めるべきではない」との層を大きく運動に巻き込めなかった
「38%非正規労働者・権利が侵害されている勤労者」への働きかけの弱さ
全国展開がまだまだ弱く、市町村のところまで広げることはできなかった
職場から地域への展開の弱さ
労働運動との連携の弱さ
「国会における自公勢力の数」の多さ 等
このように,「力不足」的なアナログ評価に終わっていて,戦略,戦術など方法論の問題には触れていない.

時間が経つうちに,園良太氏のブログに,総括も含め今後の運動についての文章が出た.
10月27日、晴れ渡る空の下で未来をおもう
その中からごく一部を引用する.
そして参院選は9か月も先。その前に明日にも辺野古新基地建設は再開されようとしてるし、年明け?からの通常国会でどんな悪法が出てくるか~だし、南スーダン攻撃も中国・朝鮮への攻撃もマジで奴らは始めようとしてるんだから。
今、倒すんでしょ。国会が始まったらさらに倒すんでしょ。こないだのような民衆の力でさ。それを民衆自ら「今から」投票箱の中に封じ込めるなよ。
つまり大衆運動は選挙だけでなく、地道に街頭に立ってアピールするだけでなく、権力者や資本家の前でどんな行動でもできるってことさ。海外はそれが基本じゃん。その想像力と経験をもっともっと増やせば安倍は倒せる、どんな現実も変えられるってのが、この国会闘争の総括なんだ。
総括は人々の記憶が鮮明なうちに行われなければならない.東京の運動のセンターや政党だけでなく,地方の運動団体も(地域での運動に限ることなく全国的視野で)総括を出してほしい.
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1401577.gif2015/11/7追記
1)「1,000人委員会」のサイトにはまだ総括らしい文書は見つからない.9/30の声明は簡単なまとめと,決意をのべたもの.
2)連合政府構想は歓迎すべきだが,上の園氏も指摘するように,選挙を偏重する,いわば「参院選ターゲット論」は戦争開始という先手に無防備だろう.白井聡氏が重要な指摘をしている.週プレNEWS,11月5日付けの鳩山氏・木村氏との鼎談記事から一部引用:
だからよく、改憲から戦争へと進むからマズいといわれているけれども、僕は逆だと思うんですね。まず戦争をする。そこから改憲へというのが、彼らが思い描いている改憲へのルートなのではないか。そう考えると、あの解釈改憲をやられた時から戦争をやることはほぼ確定していて、問題は、いつ誰と、どんな戦争をやるのかという段階に入っていると僕は見ています。
1401577.gif2016/6/18追記 私なりの総括を「社会評論」という雑誌に発表しました.
社会評論の短文を転載

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