湾岸戦争症候群の解明なるか? [仕事とその周辺]
低気温のエクスタシーさんのサイトで,劣化ウラン被ばくを高感度で測定したという情報
2007年12月07日
「劣化ウランの被ばく状況を確認できる新技術が開発された」
を知ったので,さっそく
原論文のプレプリントをダウンロードした.
その元情報は
毎日新聞の6日の報道だ.
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また,このニュースを取り上げた他のブログも見つけた.
http://d.hatena.ne.jp/lovelovedog/20071211/siyaku
私自身は微量分析の分野は不案内なので,的確な評論はできないが,内容について少しメモを取っておくことにする.
イントロを読むと,パリシュ教授らこのグループの関心が「湾岸戦争症候群」の解明にあることが分かる.この問題や,イラクの子どもの白血病の問題に取り組んでいるグループがよく引用するドラコビッチ博士(Durakovic)だが,なんとあっさりと「たくさんの分析上の欠陥があり,データが信頼できない」と切って捨てている.
そこで,被曝量のはっきりした集団を対象とすることで被曝後長期間経過した人体からどれだけの劣化ウラン汚染が確認できるかを確かめるために,この研究を行ったとしている.そのために劣化ウラン加工量や職員の就業歴がはっきりしているアメリカのウラン加工工場(New York州にあるNational Lead Industies, NLI )の元従業員を対象にしている.
結論としては,20年以上前に工場で働いていた元労働者の尿から劣化ウランを検出することに成功している.そして,この結果を湾岸戦争に従軍した兵士の調査と比較するべきだをしている.論文は,「800名以上を対象にしたイギリスの調査では劣化ウランは検出されていない」.「単純な結論は,相当量の被曝を受けた人の尿からは数十年に亘って同じ同位対比*のウランが排出される」で終わっている.
読み手としては,「この方法を用いれば湾岸戦争の従軍兵士の被曝量がはっきりする」という結論を期待したが,それははっきりは書いてなかった.しかし記者会見ではそう述べたようである.
論文の中に出てくるジャーゴンのうち二つについて単語帳を作っておく.
MC-ICP-MS:Multiple Collector Inductively Coupled Plasma Mass Spectrometry,マルチコレクター誘導プラズマ質量分析器
この機械を解説したページ(英語)
http://www.noc.soton.ac.uk/geochem/Facilities%20Links/mc-icp-ms.htm
U-TEVA resin:ウランを選択的に取り込む樹脂のことで,商品名のようだ.次がそのメーカーのページ.
http://www.eichrom.com/products/info/uteva_resin.cfm
* 同位対比:ウラン235,ウラン238などの間の相互の量の比.これで劣化ウラン,濃縮ウラン,天然ウランの区別をする.
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