松竹氏「除名処分」をめぐる「しんぶん赤旗」の姿勢は極めて憂慮すべきもので、共産党に大きなダメージを与えかねません。この国が、あらゆる意味で
「政治災害」ともいうべき状況にある中で、赤旗と共産党が自らの価値を低めて行くようなことは一刻も早くやめてもらいたいと思います。逆に今回の事態を党の民主化につなげることができれば、前進につながります。その意味でこの問題を重視して、
前回の投稿の続きを書きます。(自分のための覚書でもあります。)
かつて浅井基文氏は共産党への「批判的応援」(
ブログで紹介)をされましたが、共産党が日本社会に必要だと考える方々は是非これに倣って欲しいと思います。
以前に書いた
「ブログ時代の共産党大会」の記事でも説明しましたが、規約に「中央機関の意見に反して」の発表を禁止という条項があったのは2000年の改正までで、いま「勝手に意見を発表」してはいけないのは、「党の決定に反する意見」、「党の全国方針に反する意見」です(前に書いたようにこれ自体も変ですが)。ですから「赤旗」に書かれる個々の論説、党幹部の発言などは党員も自由に公然と批評・批判できるのです。思い違いをしている人がいないでしょうか。
1.メディアの批判が「『結社の自由』へのあからさまな介入」なのか?松竹氏が処分撤回に賛同することを党員によびかけることをもって「憲法の保障する『結社の自由』へのあからさまな介入」(赤旗2/19、注1)だとしています。また、メディアの批判に対してまで「憲法第21条が保障した「結社の自由」に対する乱暴な攻撃」と断じています(赤旗2/9、注2)。
しかし『結社の自由』とは公権力による干渉を受けないことを意味するのではないでしょうか?それとも、松竹氏の行動やメディアなど外部の批判を公権力の作用の一つとみなすのでしょうか?そんなバカなことはないでしょう。もしそうだとしたら、どんな団体に対しても外部から批判など出来なくなります。『結社の自由』がその内部での統制の権利を保障していることと、その活動内容に対する、政治権力以外の外部からの批判の自由とは両立するはずです。
他方、公権力との関係では、後述の鈴木元氏は1988年12月10日の最高裁判決を引用して、政党の行為のうち、一般市民法的秩序と直接の関係しない内部的問題には司法審査は及ばないが、しかしその政党の内部規則に基づいて適正になされたかどうかについては司法審査が及ぶことを指摘しています。(同じ最高裁判決を引用した書記局次長・土井洋彦氏の文章(赤旗2/8、注3)はこれには触れていません。)
2.反論権・自己防衛権を認めず、被処分者へ一方的に攻撃頻繁に「しんぶん赤旗」で松竹氏に対する批判——と言うより、まさに「攻撃」が行われていますが、これに対する当事者の反論は一切掲載されません。除名について規約には、「党の最高の処分であり、もっとも慎重におこなわなくてはならない」、「処分をうけた党員は、その処分に不服であるならば、処分を決定した党組織に再審査をもとめ」ることができる、とあります(注4)。松竹氏は再審査を求める意思を示しているので、このプロセスの中にあり、公平な扱いが必要であるにも関わらず、です。
将来「再審査」が行われる可能性があるので、その審査機関の構成員となりうる中央の党幹部や党大会の代議員に選出されうる党員には、公平な振る舞いが求められる、ということを、行政書士・社会保険労務士でもある党の村議の方が指摘しています(注5)。(あるいは、個人の名での発信も含めて松竹氏を批判する様な言動を公然としている人はそのような機関から除外されるべきかも知れません。)しかし「赤旗」にはこのような配慮は一切見られません。
また「赤旗」は、「志位和夫委員長への手紙」(かもがわ出版)とその著者である鈴木元氏も非難の対象にしています。これに対して鈴木氏は当然にも同じ「赤旗」紙面での反論の権利を求めていますが、いまだにこれに対する回答はないようです。
鈴木氏の反論は自身のフェイスブックに書かれています(注6)。重要な論点が述べられていますので、長文ですが一読の価値があると思います。なお、その中で重大なことが明かされています。除名処分について「再審査」の制度があることを小池副委員長が知らなかったというのです。記者会見での記者とのやりとりで明らかになりました。このような党幹部の規約への認識不足は混乱に拍車をかけてしまいます。
(
21日夜:代議員の選び方について
前の記事に追記しました。)
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注
(注1) 赤旗2月19日「松竹氏 党かく乱者であることを告白」
「・・処分撤回に賛同することをよびかけることは、憲法の保障する『結社の自由』へのあからさまな介入」(H)
https://www.jcp.or.jp/akahata/aik22/2023-02-19/2023021904_04_0.html(注2) 赤旗2月9日 「結社の自由」に対する乱暴な攻撃――「朝日」社説に答える
(抜粋)
「朝日」8日付社説は、日本共産党が、党規約に違反して党攻撃と分派活動を行った松竹伸幸氏を除名したことについて、「国民遠ざける異論封じ」などと攻撃しています。そして、日本共産党が党員の直接選挙による党首選を行っていないことに対して、「党の特異性を示す」などと非難しています。これらは、日本共産党に対する攻撃にとどまらず、日本国憲法第21条が保障した「結社の自由」に対する乱暴な攻撃として、絶対に見過ごすことはできません。「大手新聞」をなのる全国紙が、その社説で、公党に対してこのような攻撃を行うということは、日本国憲法第21条が保障した「結社の自由」に対する乱暴な侵害であり、攻撃であるということです。
1988年12月20日の最高裁判決は、「結社の自由」について次のように判示しています。
「(結社の自由とは)各人に対して、政党を結成し、又は政党に加入し、若しくはそれから脱退する自由を保障するとともに、政党に対しては、高度の自主性と自律性を与えて自主的に組織運営をなしうる自由を保障しなければならない。他方、右のような政党の性質、目的からすると、自由な意思によって政党を結成し、あるいはそれに加入した以上、党員が政党の存立及び組織の秩序維持のために、自己の権利や自由に一定の制約を受けることがあることもまた当然である」
https://www.jcp.or.jp/akahata/aik22/2023-02-09/2023020902_01_0.html(注4) 関係する党の規約
第五十四条 除名は、党の最高の処分であり、もっとも慎重におこなわなくてはならない。党員の除名を決定し、または承認する場合には、関係資料を公平に調査し、本人の訴えをききとらなくてはならない。
除名された人の再入党は、中央委員会が決定する。
第五十五条 党員にたいする処分を審査し、決定するときは、特別の場合をのぞいて、所属組織は処分をうける党員に十分意見表明の機会をあたえる。処分が確定されたならば、処分の理由を、処分された党員に通知する。各級指導機関は、規律の違反とその処分について、中央委員会にすみやかに報告する。
処分をうけた党員は、その処分に不服であるならば、処分を決定した党組織に再審査をもとめ、また、上級の機関に訴えることができる。被除名者が処分に不服な場合は、中央委員会および党大会に再審査をもとめることができる。
(注5)鈴木氏の2月9日の投稿
https://www.facebook.com/hajime.suzuki.5070/posts/pfbid0GmjoqSicH6wxuRZtgh4ENHiMowfnQY4mDrSVgPgwC7xV7RuQ67EMMQuxy42iKN3wl(注6)鈴木元氏のフェイスブックでの発言
https://www.facebook.com/seiya.morita.758/posts/pfbid02TGgoMmdFqi8PEjdoL1v25KmLdJZq6xYkMAmT3vatxrZ9uBKf8YWbEziuDemALf9cl?comment_id=3477428149195600