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松竹伸幸氏の「除名」事件を「活かす」こと [社会]

「党首公選」の部分に追記あり(2/21)
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松竹伸幸氏の「除名」事件を契機に、共産党のあり方についての議論が党の内外で活発になっています。ところが残念なことに、「赤旗」の論調や志位委員長の発言は、これについての外部からの議論のほとんどを「攻撃」として排撃しています。しかも激烈な言葉でこれが繰り返されています(注1)。この問題についてとりあえず思いつくことをまとめておきたいと思います。
(リンク追記:発端の2文書と松竹氏の反論 (1) 松竹伸幸氏の除名処分について(2/7,京都南地区委員会常任委員会, 京都府委員会常任委員会),(2) 党攻撃とかく乱の宣言 ――松竹伸幸氏の言動について(2/8, 書記局次長 土井洋彦)),(3) 松竹氏の最初の反論(2/5)

1 党内の民主主義のレベルを自己点検することが必要

共産党が日本の政治と人々の利益擁護のために重要かつ不可欠の存在でありながら、この数十年来、支持率を伸ばせず、したがって議席も増やせなかった大きな要因は、共産党の内部が一般国民に見えず、組織内部の運営がどの程度民主的かを判断する材料が皆無に近いということがあると思う。ここでは党名の問題には立ち入らないが、「共産党」という名称が旧ソ連や中国の独裁的体制を連想させることと相まって、多くの人が、『自由と民主主義の宣言』にもかかわらず、もし政権を取れば独裁的な政治をするのではないかという不安を持ったとしても不思議はない。

規約などが定める党の組織はもちろん民主主義的制度であるが、どの組織もそうであるように、制度と実態は同じではない。特に党の場合は「中央集権制」という言葉が偏重されていると思われ(タテマエとしては全ての政党は中央集権制のはず)、さらに「民主集中」という独特の用語の悪影響もあるのかも知れないし、規約で各級の党機関は下級に対する「指導機関」とされているので、運営も上位下達のスタイルになりがちだろう。党員の意見表明については極めて曖昧な「制約」がある。規約の「党の決定に反する」あるいは「党の全国方針に反する」意見を「勝手に発表することはしない」という規定は、支部の壁を超えた党内の意見交流を決定的に阻害している。「勝手に・・・しない」と言われても、ではどこの許可を得ればいいかは規約には書かれていない。かと言って、党員が全国規模で意見交換できる場、例えば公認のSNSのようなものも存在しない。従って、そのような意見交換をしようと思えば、公開で、つまり「発表する」という形にならざるを得ないのである。

このような制約は明らかに党の発展を阻害する。つまり「衆知」を集め、アイデアを出し合い、また相互に批判し合うという機会を恐ろしく減らしてしまう。このことはこの数十年来の党の方針をより正確、適切なものにしていくことを決定的に阻害してきたと思う。例えば、2006年春に「平和共同候補」運動の市民グループが共産党に対して野党共闘の推進を申し入れたが、共産党はこれを「市民運動による無原則的な政党への介入」であるとして、逆に非難で返したのである。それから今日のように野党共闘が実現するまで、実に長い時間がかかった。もしこの時、当時ブログでも呼びかけたように(注2)、党内外で、つまり公開で広く議論が交わされていたなら、もっと早く野党共闘実現に舵が切られたかも知れない。これによって失われたものはどれほどだろうか。

今回は、以前と異なり、SNSの一般化で多くの人がこの問題で発言して来ている。その中には公然と党員を名乗っての発言、あるいは地方議員などの職にある人もいる。(私のコネクションに関する限り、除名はおかしいという意見が多い。)この機会を、共産党の組織が抜本的に民主化するよう生かすことが重要だ。

2 松竹氏の主張内容と「除名」問題とは別に議論すべき

松竹伸幸氏の主張についての私の意見は次のとおり。

1)安保・自衛隊問題
松竹氏の意見に反対である。もっとも、これは2000年大会決議や志位発言の、「自衛隊の活用」(軍事的な意味)自体が綱領違反であり、松竹氏の主張はこれに輪をかけたものである。

2)党首公選
十分考慮に値するが、直ちに導入すべきとは思わない。まず現行制度で、各級選挙での「複数立候補」を奨励・一般化すること。つまり形式的だけでなく実質的に「争われる」選挙を目指すことが先決だと思う。かつそのプロセスもできるだけ公開すること(委員長など中央幹部クラスは必ず公開)。これにより、党員だけでなく国民全体に対しても人事の透明性が向上する。
1401577.gif(2/21追記) つまり「間接選挙」ということになるが、その選挙人になる人(おそらく大会代議員)は全党員の直接選挙でなければならない。また、3年前の「議案について討論しない会議」に書いたように、代議員の大半を党の専従活動家が占めると弊害が出るので、例えば、代議員の過半数または3分の2は一般党員で占めるようにすべきだ。(追記終わり)

次に「除名」問題について。
自らの主張を公にしたことは、上記の二つのどちらに関しても規約違反には当たらないと思う。関係しうるのは規約の次の条項であろう。
第五条
(五) ...党の決定に反する意見を、勝手に発表することはしない。
(八) 党の内部問題は、党内で解決する。
第十七条 全党の行動の統一をはかるために、国際的・全国的な性質の問題については、個々の党組織と党員は、党の全国方針に反する意見を、勝手に発表することをしない。
五条と十七条の「勝手に発表」の「勝手に」の意味が定義されていない。従ってこれらは無効な規定である。

また、人事制度など規約に関することは、それが決められてすぐならともかく、「党の決定」とか「党の全国方針」というカテゴリーにも当てはまらないだろう。

規約違反(綱領逸脱・違反)を言うなら、そして松竹伸幸氏の自衛隊に関する発言を咎めるなら、むしろ2000年大会決議や志位発言の、軍事的な意味の「自衛隊の活用」こそ問題にしなければならないだろう。個人ではなく大会という機関が行ったことであり、また党首という最高責任者の発言なのだから、桁違いに重大である。この件の詳細は次のブログ記事参照。

「『オウンゴール』繰り返しの志位発言、早く修正しないと・・・」
https://pegasus1.blog.ss-blog.jp/2022-05-29
「左派の「自衛隊の活用」論はオウンゴール」
https://pegasus1.blog.ss-blog.jp/2022-04-08

まだ書くべきことはいろいろありますが、とりあえずここまで。
→続きを書いています。こちらです

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(注1)伊勢崎賢治氏の、次の警告は傾聴に値する。
「【悪意のある攻撃には断固反撃する】志位さん。こういうネトウヨまがいの指導者の発言は必ず組織の“鉄砲玉”に作用し、カルト的に増幅してゆきます。・・・」
https://twitter.com/isezakikenji/status/1625276761436196864

(注2)この件の詳細は当時のブログ記事を参照されたい。
「『平和共同候補』運動への赤旗の批判について」
https://pegasus1.blog.ss-blog.jp/2006-06-14
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規約の問題点などについて書いた2005年の「ブログ時代の共産党大会」も参照ください(今や、SNS時代の、で更新すべきかも)。また、これも含め、共産党に関する当ブログ記事へのリンク集も作っています。
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コメント 2

宗純

ここに書かれている内容について一切異論はない(主張に100%賛成)だが、・・・今回の一連の松竹伸幸除名騒ぎの「成り行き」が何とも胡散臭い。辻褄が合っているようで根本的に合っていないのですよ。
そもそも松竹伸幸はヒラ党員どころか、共産党の軍事や外交問題の方針決定の実質的な責任者。
自民党政府に一番近い政治記者として有名な毎日新聞山田孝雄が言うように共産党党首公選制は客寄せ小道具(落語の枕)で、主題は日本の軍事外交方針の共産党大転換(日米安保破棄から容認へのコペルニクス的大転換)だと思われる。
ただ松竹伸幸は10年前に記者クラブ主催の講演会でアメリカの抑止力について詳しく語っている(ユーチューブで現在でも視聴可能)のですが、10歳若い松竹伸幸の主張は素晴らしい。アメリカの思惑を明け透けに語っていたが、何故そこから「安保容認」になったのか「大いなる有り得ないの謎」としか言葉もない。
大いなる「有り得ない謎」と言えば松竹伸幸(超左翼おじさん)は9・11事件で「国家は国民を殺さない」(だから米軍や諜報機関が関与した云々は陰謀論だ。アメリカ政府の公式発表が正しい)と強引に言い張った。もちろん日本共産党(赤旗)も同じ見解だったのですから無茶苦茶。日本共産党がアメリカに叩かれないように必死で抱き着くクリンチ作戦?なのだろうか???
by 宗純 (2023-02-16 09:09) 

樋口一郎


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 自由で活発な議論の為の宣言
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 我が国が、陸海空軍に類する自衛力を持つのは当然のことである。だが、米国による占領体制が完全に解消されていない中での米国の軍事戦略に組み込まれる形での軍拡には断固として反対する。

 当面する国防上の最大のテーマは、安保条約を廃棄し、真の独立を実現することである。我が党は、その目的を達成し、自衛力としての陸海空軍の新しいあり方についての国民的論議に道を拓く戦いの先頭に立つべきである。

 次期党大会では、上記のように党としての国防上のスタンスを明確に打ち出すべきである。

1、上記の意見をSNS上で表明する。
2、その見方考え方の是非を議論する。
3、同見解に対する質問に公に答える。

 我が党は、上記のような批判的検討に伴う3行動が広く展開されることに期待している。画一的な意見の交換による討論というスタイルは、現状を否定し変革することをモットウとする我が党としては、もとよりあり得ないことである。

 そもそも分派活動とは、党内において派閥をつくて、主導権を握ろうと争う行為、あるいは基本方針とは別の行動をとることを指す※。我が党が、党内派閥を形成し、具体的な行動を起こさない限りにおいて、上記3行動をもって分派活動として断罪することはないのは当然のことである。

※Goo辞書参照

 一部に、党に対して「異論を封じる閉鎖的な体質」との誤った批判がある。その誤解を解き、併せて、党員の自由で活発な議論を促す為に、ここに我が党は、「自由で活発な議論の為の宣言」を発表する。

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 宣言を全党の共通認識に
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 自由で活発な議論の為の宣言が、どの程度、規約の文言の微調節を必要とするかは検討事項だと思います。それは横において、「自由で活発な議論の為の宣言」の内容を全党の共通認識にする取り組みは待ったなしだと思います。

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 3つの視点は作法は発信上のルール
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視点1:意見・主張の実現に如何に寄与するやり方か?
視点2:守るべき節度・ルールを踏み外していないか?
視点3:関係者の気分・感情・人格に配慮しているか?

 視点2は、「党の信頼と利益を守る原則的立場から逸脱しない」と言い換えることができます。そういう意味では、重要な視点です。視点3は、非対面での以降交換という特質に根差したもの。SNSに発信においては、最も重視すべき視点です。

 この視点は、個々の意見・主張の述べ方、発信上の留意点を述べたものです。前述の、日本共産党としてのSNSなどによる論議に対する見方・考え方とは、その性格を異にしています。党の宣言において、3つの視点云々というのは不必要だと思っています。規制条項として拡大解釈されれば、宣言の意味も意義もなくなりますから・・・。

 私としては、日本共産党が「自由で活発な議論の為の宣言」の類いを発表することを希求しています。
by 樋口一郎 (2023-02-20 09:56) 

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