迷走の「主犯」たち
尾身氏 岡部氏 舘田氏
最後の方の3ページ強をそのまま引用して紹介します。多くの方がこの本を読まれ、日本のシステムの病弊を知り、改善への圧力を高めていただくことを期待します。そして「日本グリーンゾーン化戦略」への道を。
同じ場所で
表参道の並木道の下を、私は黒いコートを着て、うつむき加減で歩いていた。そう、ここで武漢の新型肺炎発生のメールを受けてから2年が経つ。欅並木の通り沿いの店もずいぶんと入れ替わった。この通りから一本奥に入ると"For Rent"の紙が貼られた空き店舗が目立つ。私がうつむいて歩くそばをマスク姿の人たちが静かに通り過ぎていく。
日本のコロナ対策の失敗は、結局、専門家たちがリスクを取らなかったことが原因ではなかったか。武漢で肺炎アウトブレイクが起こった時、その初動において、彼らは論拠なく甘いリスク評価をした。見通しについても、何の裏打ちもないままに楽観視した。次第にこのウイルスの性状がわかるようになっても、それらを訂正も変更もせず、誤った対策を引きずっていった。そんなミスを繰り返した2年間だった。起こってしまった事態に慌てて、ただ逐次投入していく対策では、常に後手後手に回ってしまう。それがこの敗戦の最大の原因ではなかっただろうか。