さいたま市立指扇中学校・新井敬二郎校長の「憲法より礼儀が大事」という言葉*が物議を醸しています.全文は確認できませんが,日常生活で身につけておく常識としての比較という文脈のようです.でも言葉は重要で,タイトルならなおさらです.

文脈を無視して,言葉を言葉として再利用するならば,これはまさに現在の戦争法阻止運動にも当てはまります.

道路や通路に座って通行を妨害することは,行儀のよいことではなく,もちろん礼儀にも反します.それだけでなく道交法違反に問われることもあるでしょう.しかし,こと憲法に関わる場合,(超法規的) #憲法保障 の手段として必要な場合があります.

沖縄・シュワブゲート前では,人々が自らの憲法的権利を守るために,工事車両などに対するゲート封鎖を試みています.国会による憲法を破壊しようとする試み(違憲立法)に対しては,それが明白かつ重大である以上,それを阻止する行動は,沖縄・シュワブゲートのケースに比べても,その必要性はより大きいことはあっても決して小さいということはありません.

最後の土壇場,国会で最終的な議決がされるかも知れないという状況にまでなったとき,国会封鎖などあらゆる非暴力の手段に訴えてもこれを阻止すべきであり,これを否定する態度は,とどのつまりはこの校長と同じ立場ということになるでしょう.(国会封鎖については次のブログ記事を参照下さい.またいくつかのMLにも投稿しました.)
http://pegasus1.blog.so-net.ne.jp/2015-07-18
http://pegasus1.blog.so-net.ne.jp/2015-07-05

「国会包囲」の行動が計画されていますが,これを単なる象徴的表現行動にするのではなく,実際の予行演習として,国会や議員会館の出入り口をよくチェックする機会にするべきです.もちろん実際の行動では,逮捕の可能性のある行動と,周辺で支援する人とを明確に分ける必要があります.前者としては私も含む定年退職者などが多く志願すべきだと思います.

この,受験用語で言えば最後の「滑り止め」が確保されて初めて,法案阻止への自信も強まり,それ以前の,多様でもっと穏便な手段にも力が入るというものです.

アベは,これまで政治的なデモや集会に参加したことのなかった人たちにも「立憲主義」というものへの理解を広げる機会を提供しました.同様に,活動家や政治意識の高い人たちにとっては, #抵抗権 ,#不服従 ,#非暴力直接行動 という概念を普及させる大きな機会を提供していると思います.法律家の方は是非とも,この行動形態を理論的に支える言説を提供していただきたい.

先日,京都での宇宙兵器に反対するグローバルネットワークのセミナー**に参加しましたが,市民運動において直接行動はごく普通のことで,逮捕経験のある人も珍しくありませんでした.日本の市民運動,特に沖縄県外でのそれが,いわゆる「ガラパゴス状態」にあることをあらためて実感しました.
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* https://twitter.com/waka929/status/627280281003651072
(7月・学校便りの巻頭言に掲載されたとのこと)
** http://space-peace-kyoto.blogspot.jp
http://space4peace.blogspot.jp/2015/07/report-from-kyoto.html
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2021/6/14追記 この議論を発展させ長文のエッセイにして月刊誌に発表しました。以下のリンク先に転載しています。
「ガラパゴス」状態の日本のデモが暴政継続を許す