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昨日の共産党中央委員会総会の志位報告(→ウェブ版)をネット視聴し,短いコメントをフェイスブックに書き込みましたが,すこしまとまった文章にしたいと思います.表題はどぎついと思われるかも知れませんが,切羽詰まった筆者の憂慮を表現するにはこれしかありません.

原発即時ゼロやTPP阻止,アベノミクス*批判など,志位報告が述べた政策の基本にはもちろん賛同し評価します.しかし改憲阻止の戦略・戦術については全く賛同できません.国政選挙のレベルでは,以下に述べるようにこれは無策に等しいからです.全会一致で承認されてしまったのですが,どうしてそうなのか,出席者のただの一人にも疑問は生じなかったのでしょうか?

選挙闘争に関してもっぱら前面に押し出されて強調されるのは比例区の5議席確保であって,政党間の共闘,協力については,沖縄県を除けば全国的には「条件存在せず」のひとことで片付けられてしまっています.統一戦線の対象に関しては,志位報告が文字化された赤旗の紙面やウェブの見出しでは「無党派と日本共産党との共同――日本を変える新しい統一戦線をつくりあげよう」**とあり,他党は眼中にないという姿勢です.しかも近接した見出しには「いま日本に政党と呼べる政党は一つしか存在しない」(引用符付き)とあるのですから,もう決定的です.「存在しない」ものとの共闘はあり得ませんから.

しかし,はたして共産党の「5議席確保」だけで十分に改憲阻止の可能性をつかめるのでしょうか.そんなことはあり得ないし,もし志位氏がそう信じているとしたら,全く現実感覚を失くしていると言わざるをえないでしょう.本当に真剣に改憲阻止を考えるなら,政党間の共闘を考えなければならないはずです.たとえば社民党について言えば,憲法九条擁護の点はもとより,TPPでも原発でもほぼ政策は一致していると思われますが,なぜ共闘,協力の「条件がない」のか,あるいはその条件を作ろうとする努力にも値しないのか,説明も議論も全くありません.

憲法問題が重要争点の一つとなる選挙であり,しかもその改悪の危険性が決定的な程のレベルにあることから,憲法と並んで戦後民主主義の重要な財産であった教育基本法(以下教基法と略)改悪の事例に学ぶことは重要です.この改悪は「郵政選挙」で大勝利した小泉自民党の内閣(第3次小泉内閣)によって国会に提出され,それを引き継いだ第1次安倍内閣のもとで2006年12月に成立してしまいました.共産党はこれを阻止するべく闘いました.その闘い方についてはさておくとして,ここで問題にしたいのはその「総括」です.

成立直後の,年が明けて2007年1月の中央委員会総会(3中総)報告では,敗因分析(総括)もなくいきなり「たたかいは,これからが大切になります」で始まり,改悪教基法の「具体化の一つひとつが,競争主義,序列主義の教育の矛盾を深刻にし,破たんせざるをえないでしょう」と続きます.さらに,「全党の確信にすることが大切」なこととして,「国民が発揮したエネルギーの大きさ」,「日本共産党の果たした役割」の二点を挙げ,どちらにもポジティブな評価を与えています.まるで闘いに勝利したかのような言葉ばかりが続くのです.この貴重な財産を失った,少なくとも重篤に変質させられたという敗北の悔しささえも読み取れません.

この志位報告発表の直後の当ブログ記事で,このような総括とも呼べない総括について,敗北を「『転進』と粉飾しているように見えてしまう.九条が改悪された後も,やはりこのような『前向きの』総括をするのだろうか?」と書きました.今回の志位報告でその悪い予感は一層強まります.「元気のよい」「明るい」言葉で埋め尽くし,現実を直視せずに自らを欺いて破滅の道に突き進んだ旧軍部と重なって見えてしまうのです.

去る4月29日に久留米市で共産党の市田書記局長の講演がありました.この町で二番目に大きなホール(約1,200名収容)がほぼ満杯になり,成功裏に終わったと言うべきですが,政党間の共闘問題では上記の志位報告と全く同じでした.直接の質疑応答もあるかも知れないとわずかに期待し,その機会にはたとえどのように「空気」に逆らおうともこの問題を正面から提起しようと思いましたが,やはり講演だけで終わってしまいました.質問用紙が配られていたので,それに書いて提出したところ,市田氏本人から2日後の消印で葉書が届きました.国会内外の共闘は重視し尽力するが,選挙共闘は「憲法だけでなく,安保,原発,TPP,消費税など,国政の基本問題での一致と共闘の意思がないと,野合になってしまいます」と書かれていました.そして7中総で詳しく解明します,と結ばれていました.「解明」より「提案」を,と言いたいところですが,しかし志位報告では,上記のように,なぜ共闘できないかの「解明」もなかったということです.

共産党は,数は少ないものの政策面で野党として不可欠の位置にあり,その役割と責任は重大です.したがって党員や支持者でなくても,この党の動向には関心をもってしかるべきだと思いますし,注文を付けることが大事だと思います.知識人の役割も強調したいと思います.九条が重大な危機に瀕している今こそ,効果的な,核心を突いた,「役に立つ」発言をする責任があると思います.「九条の会」の知識人は,選挙の問題,政党間共闘の問題に踏み込んで発言すべきです.これまで「九条の会」は選挙にはノータッチという姿勢だったようですが,それではダメです.もちろんどれかの党派に肩入れするというのではなく,共闘を強く呼びかけるべきだということです.政党間共闘なしには改憲阻止の可能性は非常に小さくなると思います.

「国政の基本問題での一致」の条件を満たす党派の勢力は,現時点では数では少ないかも知れません.しかし共闘は「希望」という力を,そしてそれによる非線形効果を生み出すのです.「1+1は3にも5にもなる」という言葉で表現されるそれです.急いでこの「希望」に火をつけなければなりません.
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* 正しくは“アベコベノミクス”
** アンダーラインは引用者
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付録です.教基法改悪問題の時の当ブログ記事をいくつかリストします.