(末尾に,ソマリア沖派兵問題での伊勢崎氏のビデオコメント)

小沢秘書の逮捕問題では,少なくとも次の3つの要素に目を配らなければならないと思う.
1. 検察の政治性
2. 容疑事実の検証,つまり「実質的な」違法性の有無
3. 「政治悪」としての企業献金

まず,「国策捜査ではないかという意見に対する批判」という現象があるが,これはむしろ奇妙だ.検察が無色透明で政府から完全独立などというのはおとぎ話の世界であろう.これは第2の点にも関係する.

「たたけばほこりが出る」集団から恣意的に逮捕者を選び出すとすれば権力の濫用だが,実際には権力の常套手段としてよく行われる.ウオルフレンが,たしか「日本 権力構造の謎」の中でだったと思うが,検察が選択的,恣意的に政治家の「汚職」を暴いて,それがアメリカの日本コントロールの手段になっていると述べていた[註].
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今回の小沢の件で,アメリカが絡んでいるかどうか分からないが,自公政権の影響が全くないと考えるのは無理があろう.したがって,(もし小沢氏の側に犯罪性があれば)犯罪性を問題にしながら,このような検察の政治性(の疑念)も同時に公の議論に乗せなければならない.犯罪も問題だが,捜査権の不公正な行使という検察の政治利用も等しく問題だからである.

これらは政治家の話で一般のわれわれには関係ないかと言えば,決してそうでもない.日常的に車を運転する人で,制限速度や法定速度を完全に守っている人はまずいない.そのように,運転者全部を違反者にするように制限速度が設定されている.だから警察はだれでもしょっ引くことができる.道交法が政治利用されることは少ないだろうが,ほかの,些細な違法行為が「別件逮捕」に利用されることはよく見られる.

最後に3の企業献金の問題がある.言うまでもなく,現行法で許される政党支部宛であろうと,企業献金は政治の企業による買収であり,「政治悪」として排除しなければならない.残念ながら法はそうなっていない.検察は「倫理」では取り締まれないので,法に照らして対応するだろうが,その場合も形式犯に過大に対応するとすれば,やはり権力の濫用であろう.このような問題については,ヤメ蚊さんの次の記事が参考になると思う.

読売新聞が、小沢民主党党首周辺への捜査が国策捜査であることを裏付ける記事を掲載〜政党支部であれば合法
http://blog.goo.ne.jp/tokyodo-2005/e/ea06ba7a477ed291eb79a4b7c78a4d0b

小沢民主党党首秘書逮捕は政治的なものだという批判をなぜメディアはしないのか?
http://blog.goo.ne.jp/tokyodo-2005/e/7d3452a83e2ecf3e55bbc35726450486

小沢氏の件が犯罪になるのかどうか分からないが,民主党はその党首が多額の企業献金という政治悪に染まっていることは暴露された.そのぶん,これに染まっていない政党,つまり共産党や,社民党には注目や支持が集まっていいはずだ.「確かな野党」のスローガンを廃止したのはいいが,もはや,政権奪取,つまり「確かな与党」を打ち出すべきだ.

一方で,岐阜基地へのPAC3配備や自衛隊ソマリア派兵の重大な問題性をメディア全くと言っていいほど報道しない.
ソマリアへ自衛隊、めちゃくちゃ違憲!伊勢崎賢治

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[註] 正確にその箇所をまだ見つけていないが,近い記述としては次がある.

「日本のスキャンダルは操作されている.・・・・」
「日本/権力構造の謎」,文庫版・下巻,378ページ.

「・・・でも政治家は腐っているのだから,検察が狙った政治家の身の上にその後起こったことは当然の報いだ,とあなたはおっしゃるかも知れない.もう一度申し上げるが,これは日本の政治制度への誤解のなかでも最大のものの一つだ.」
「人間を幸福にしない日本というシステム」,114ページ.
なお,このすぐ次のページには,まさに自動車の速度違反の例が挙げられている.