裁判員制度について私はこれまで,いろいろ問題はあろうが国民の裁判参加の方向で一歩でも進むならいいのではないか,と,およそこのように思っていたのだが,少し調べてみたらこれがとんでもない制度だと分かった.これは中止して,制度設計を一からやり直すべきだ.

まず,裁判員が係わる事件は.死刑か無期の刑に当たるような重罪事件だけだ.これは,最高裁の統計によると,06年に行われた裁判のわずか2.9%に過ぎない.例えば先日のグリーンピース職員の逮捕事件のような場合や,ビラ配り逮捕事件などは全く対象外なのだ.つまり,非常に重い心理的負担を強いられる重罪事件だけを背負わせて,最も「素人の常識」が求められるような事件からは初めから市民は排除されるのだ.

また,裁判員制度は,陪審員制度よりヨーロッパの参審制に似ているようだが,これらの国では死刑が存在しない.つまり,「裁判員制導入後,日本は先進国中で唯一,市民が市民に死刑を言い渡す国になる」のである.(巷間哲学者の部屋:死刑のある国の裁判員制度

「市民参加」によって法廷で「素人」の常識が力を持ち,非暴力直接行動に対するイギリスでの無罪判決も日本で可能に,などと考えたのは全くの幻想だった.そもそもこのような事件では初めから市民は締め出されていたのだ.

他にもいろいろと重大な問題がある.「裁判員制度はいらない! 大運動」を全面支持する.
http://no-saiban-in.org/index.html
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ちなみに,グリーンピース職員の「窃盗」は,いわゆる「違法性阻却」に当たり,正当行為であり無罪だと思う.法律家の意見を聞きたいものだ.

参考にしたサイト
日弁連
http://www.nichibenren.or.jp/ja/citizen_judge/about/goku.html

ウイキペディアの対象事件の項

平成18年裁判員制度対象事件数(最高裁のサイト)
http://www.saibanin.courts.go.jp/shiryo/pdf/03.pdf

巷間哲学者の部屋 死刑のある国の裁判員制度(上掲)
http://philosopher.cocolog-nifty.com/blog/2007/11/post_e589.html