昨日の記事で,法政大学法学部教授会が学生の退学処分を決めなかったこと,議論が4時間にも及んだらしいことを書きました.なぜあっさり「廃案」でなく,継続審議なのでしょうか.共謀罪法案でもあるまいし・・・.

この教授会の様子について,同業者としての推測を書きます.あくまで推測で,同教授会関係者からの直接の情報があるわけではありません.

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おそらく教授会の大勢は処分案に反対していると思われます.ではなぜあっさり否決出来ないのかということですが,多分,多くの教授会に共通してみられる教授会の運営システムの問題,特に議長制度のためではないかと思います.私の所属する教授会もそうですが,たいてい議長を学部長が兼ねるのです.しかも議事運営規則もきちんと制度化されていません.議事運営委員会のようなものもありません.このため議事運営については議長つまり学部長がほぼ独裁的な権限を持っており,教授会メンバーの多数意見がどうであれ,学部長の気に入らない方向での決定は非常にされにくいのです.(国会の委員会で「確かな」野党が議長をしているようなものです.もしそうなら共謀罪法案の採決は永久にされないでしょう.この場合は好ましいことですが.)

学部長は執行機関として,学長や文部科学省の官僚システムと,一般の教員に比べて非常に近い関係にあります.私の経験では,彼らとの密室の談合での「感触」を,あたかも巫女のように教授会で宣託をあたえるということもかつてしばしばありました*.審議機関(教授会)と執行機関(学部長)の分離,教授会議事規則の明確化(もちろん民主的な大学自治の原則に則った)が重要です.

* 次の文書の1章の最後のパラグラフをご覧ください.
文部省の違法行為・従順な大学
「科学・社会・人間」53号掲載