次は、この1〜2週間のうちに紙で発行される、「原発もミサイルもいらない 9条を活かす九州ネットワーク」(Pネット)の冊子に掲載される文章です。紙だけではサーキュレーションも限られ、また扱っている問題が切迫性のあることでもあり、先行してネットで公開します。(発行されました。toyosimaアットta2.so-net.ne.jpにメールいただければ送料込み400円でお送りします。)
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日本学術会議の会員任命拒否事件について

               豊島耕一(世話人・元佐賀大学理工学部)

            闘う君の唄を 闘わない奴等が笑うだろう
            -- 中島みゆき『ファイト!』より

            科学とは、断片的で互いに矛盾するビジョンのモザイクなのだ。
            だが、そうしたビジョンには、ひとつだけ共通点がある。その
            共通点とは、東洋のものであれ西洋のものであれ、ある地域で
            優勢な文化によって課された束縛に対する叛逆だ。
            -- F・ダイソン『叛逆としての科学』より

目次 1.違法性・法律上の前提
   2.なぜ「学問の自由」の侵犯か
   3.学術会議の「非軍事」の姿勢について
   4.拒否すべき「軍事目的研究」とは何か
   5.どう反撃するか

日本学術会議の会員任命を菅政権が拒否する事態が9月28日に発覚した。本稿執筆時点ですでに2ヶ月を経過したが、依然として事態は好転していない。多くの人が指摘するように、学問の自由そのものへの攻撃であり、つまり公然たる違憲行為であり、このままの状態が既成事実化すれば重大である。しかし10月3日の毎日新聞は、2016年の第23期の補充人事の際にも「複数人が首相官邸側から事実上拒否され」、人事介入は安倍政権も行っていたことを明らかにした。むしろ菅政権がそれを踏襲したのであろう。

発覚直後からテレビを含めメディアの報道は菅政権のやり方に批判的で、2日夜のTBS¬ニュース23では、コメンテータの堤伸輔氏が次のように発言[注1]した。
「こういう形で6人の任名が拒否されることになるとですね、今のVTRにあったように、自分達の普段からの研究や発言が何か問題があるのではないか、それによっても実際に不利益を被るかもしれない。あるいは今の政権から自分達は目をつけられるのかもしれない。そういう萎縮効果を、今回の方々だけではなくて広く学界全体に、実は及ぼしてしまうかもしれない。そういう意味合いがあると思います。」