(旅行の土産話の続きです.)
ロンドン滞在中に,都心部から北へ5キロほどのところにあるハイゲート墓地に,マルクスの墓を訪ねた.10月3日の暖かい午後だった.地下鉄のアーチウェイ(Archway)という駅で降りて,直線距離で1キロもないのだが,曲がり角を間違えたりするとロスが大きいので,地元の人と思われる50才前後の男性に道を聞いた.すると,「自分もこのあたりはよく知らない」と言いながら,なんと,親切にもスマホを出して調べてくれた.(実は私自身もレンタルのスマホとルーターWiFiとを持っていたのだが,その時まで使っていなかった.)

彼と同じ方向だったので歩きながら話をした.道を尋ねる時,自分の手帳を見ながら通りの名前を言ったので分かったのか,「日本からか?」と訊かれる.「いま自分の国では核戦争の危険がある.とても心配だ」というと,「北朝鮮を静かにさせなければ」という反応.やはりそう来るのか,と思った.「でもトランプも静かにさせないといけない」と応じると,「確かにそうだ」と.

その人によると,マルクスの「本当の墓」は別のところにあるという.「墓」として有名なのは実は記念碑ということらしい.入り口でもらった地図にも,別の場所に“Marx(original)”とある.こちらが「本当の墓」なのか,それとも移転する前の墓ということなのか,よく分からないが,こちらも探してみることにした.

有名な「墓」には,高校生らしい10人ほどのグループが,先生(?)に連れられて来ていた.先生が集合写真を撮った後,自分も含めて撮ってくれ,というのでスマホを渡された.
“original”の墓の方は見つけにくかったが,なんとか探し当てた.地面に埋め込まれた墓石にマルクスの名前が彫られているが,いくつにも割られていた.実際の墓ならこんな状態で放置されるはずはないだろうから,やはり移転した跡,ということだろう.

折から,今年はロシア革命100周年だが,日本では,テレビはもちろん,新聞でもその関連の記事はわずかのようだ.11月7日のロシアTV(Russia 24)が革命100年を記念しての世界の共産主義者のデモを紹介していた(NHK-BSの,世界のニュースの録画放映による)。いつもは「プーチンチャンネル」といっていいような内容なので驚いた。
https://www.vesti.ru/doc.html?id=2951743&cid=7#
Russia 24のサイトからそれらしいページをキャプチャしたのがこの写真.ロシア共産党のジュガーノフ党首が中央.放送で彼は,次の大統領選に出馬し,いい勝負をするぞ,と言っていた.

ソ連の崩壊から26年経過し,それにともなう「共産主義(社会主義)全否定」の風潮に対しても,人々が相対化して見られるようになりつつあると思う.あるいは,その風潮を経験しない世代が増えている.同時に,資本主義の行き詰まり感も,このところ強まっている.マルクスが新しく甦る日も遠くないだろう.
グランドピアノの形をした珍しい墓石もあった.Thorntonの文字があるので,このピアノメーカーの関係者の墓と思われる.
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2018/7/8追記:後日の関連記事 映画「マルクス・エンゲルス」