末尾に追記あり(2019/11/6)
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社会の行方を左右する最も機微な情報というものは,その時の権力層によって最も厳重に秘匿される*.したがって想像力こそが重要なツールであって,ほとんど状況証拠だけから真実を読み取らなければならない.このようなことを,「カンを働かせる」というのだろう.

放射能,放射線の量について,テレビが「ただちに健康に影響が出るレベルではない」を繰り返し,ことの重大性を低く受け取らせるような伝え方をしていることについて,風評被害やパニックを避けるためには,ある程度やむを得ないかも知れないと,数パーセントほど「理解」してきた.もちろんメディア関係者の中には善意からそうしている人も多いだろう.しかし今やこれは,原発マフィアの既得権維持のためのプロパガンダととらえるべきだろう.

現在進行中の原発カタストロフィーにもかかわらず,原発に係わる集団はなんとかその既得権益を必死で守ろうとするだろう.そのために放射線の「確率的影響」を無視させることで,「たいしたことはない」というイメージを大衆に植え付けようとする.未来の,「統計的に必ず生じる」発病,そして奪われる命への想像力を奪い,「見殺し」にすることで,自分たちの権益を守ろうとするのだ.統計的事象であるため,因果関係が決して証明されない「完全犯罪」である.名付けるとすれば,統計傷害罪,統計致死罪.

先週水曜(3/16),地元のテレビTNCにスタジオ生出演した.わずか10分ほどの枠のために,前日深夜まで,そして当日はリハーサル直前まで,合計3時間ほどもスタッフとの「打ち合わせ」が必要だった.会議は相当ナーバスな雰囲気で,何を,どこまで伝えるべきかでスタッフたちは真剣に悩んでいた.会議室の壁からは,陰に陽に,スポンサーとキー局の「意志」が感じられる.

結局私は,「この程度の線量なら健康被害は“ない”」というのを打破するのを最低防御ラインとせざるを得なかった.しかしスタッフは方々とても好意的で,リハーサルで私がかなり控えめだったのを,「もっと言え」と勧めてくれたほどだ.打ち合わせで,「タバコ1日1本なら健康には全く影響ない,とはだれも言わないでしょう?」という例で説明したのをリハーサルで言いそこなったが,これを是非言ってくれと念を押された.

考えてみれば,スポンサーの金ですべてがまかなわれている民放で,スポンサーの「意志」が反映するのは当たり前とも言える.視聴者は費用を全く負担していないのだから.街角のフリーペーパーに重要な情報を求める人はいないだろう.それと同じことで,自分が金を出してもいないメディアに期待する方が無理,ということかも知れない.
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* 秘匿は,単に情報を隠すというだけでなく,どうでもいい情報に埋もれさせる,つまり「S/N比」を極端に低下させるという方法でも行われる.
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追記(2019/11/6)
出演前日夜の打ち合わせで局スタッフに見せた、15日に放射能プルームが関東を襲った証拠画像は、ずっと後のブログ記事で紹介しました。こちらです。
https://pegasus1.blog.ss-blog.jp/2019-03-04#yokosuka315
このデータサイトは現在でも線量をネット上に常時公開しています。
https://kanmoni.npw-monisys.jp/area/yokosuka