昨日,アメリカが北朝鮮の「テロ支援国家」指定を解除したというニュースがあった.北朝鮮に拉致された人の家族たちがこれに反発していると,NHKがさかんに伝えていた.「重要なカードをなくした」というのだが,ほんとにそうだろうかと思う.拉致家族の全員がそう思っているのだろうか?最後に引用する共産党の志位委員長の談話のように,緊張緩和の方に向かうことは,むしろ拉致問題の解決にも近づくのではないかと思うのだが.実際,この数年間,日本政府は「硬軟」のうちほとんど「硬」の対応しかしてこなかったが(ないし無策),何の成果も挙がっていないのだ.

この件に関して,拉致家族の人たちがブッシュ大統領に要請するシーンが何度もテレビで流される.あらゆる手だてを使いたいという家族の気持ちは全く理解できるが,やはりある種の「奇妙さ」を感じないわけにはいかない.要請の相手自身が現在まさに大量の「拉致事件」を起こしている張本人だからだ.キューバのグアンタナモ刑務所にアフガニスタンなどから拉致されてきた多数の人々が何年間も監禁されているという事実は,テレビは全くと言っていいほど報道しない.

国連の潘基文事務総長は昨年1月の公式記者会見で,グアンタナモ刑務所の閉鎖を要求している.(なぜか日本のメディアの記事は検索にかからない.)
http://japanese.cri.cn/151/2007/01/12/1@83722.htm
先代の,アナン事務総長もまた,この1年ほど前に,これが国際法違反であるとして閉鎖を要求しているのだ.(次の赤旗の記事参照)
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik4/2006-02-18/2006021807_01_0.html
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これら二人の国連事務総長の見解については,テレビだけでなく新聞も伝えていないのだろうか,それともグーグルが操作しているのだろうか,日本の主要メディアの記事が全く検索にかからない.(検索語:グアンタナモ × 国連事務総長)

頼りの「しんぶん赤旗」にしても,アナン事務総長の談話は出てくるが(上掲),最新の潘基文事務総長のものが出てこない.

また,今日のしんぶん赤旗には,この「指定解除」についての共産党の志位委員長の談話が載っている.ごく簡単に要約すると,(1)核施設立ち入りの合意と関連したこの動きを歓迎し,北の核の完全廃棄につながることを期待する(2)拉致問題解決の新しい条件となりうる(3)日本政府は主体的な外交を,というものだ.上に述べたように,拉致問題関連でもこの動きを肯定的にとらえている.

ただ,私に言わせれば,この談話もかなり奇妙だ.世界最大のテロ「支援」ならぬテロ「実施」国家であるアメリカが,他国を「テロ支援国」指定をしていたなどということ自体がそもそも笑止千万である(「仲間として認定」するのなら話は別だが).また,上に述べたように,現時点でのおそらく世界最大の拉致実行国家でもある.このことにも一応は触れて欲しかった.

(最終修正:08.10.14)