お気づきの方もいらっしゃると思いますが,この案には問題ありです.抜け道を後ほど提案します.(25日20時45分)

(転送・転載希望)(24日11時33分字句修正)
18日の記事「メディアに訴えるだけでなくわれわれ自身が臨時のマスメディアに」の増強版です.諸団体,著名人などに働きかけませんか.

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メディアを買い取る責任

要約
■教基法改悪を阻止するためには,少なくとも強力なテレビCMがどうしても必要だと思います.大規模な集会もメディアが意図的に無視するので,大多数の国民にとっては存在しないに等しく,世論を決定的に動かすことができないと思います.テレビCMは高額ですが,教基法擁護勢力の個人と組織にはそれだけの資金力は存在するはずです.
■この問題に取り組んでいる団体は早急に相互に協議して計画を練り,テレビ局に対して,国会期間中のCM時間枠を確保する行動に移ってほしいと思います.また,この文書を読んだ人は,護憲派の著名人や団体にこの計画をすぐに始めるよう要請してほしいと思います.
■時代を画するような重要な決戦というものは,その時代の最強の「武器」を使わなければ勝てません.教基法改悪を本気で阻止するつもりなのか,それとも「精一杯頑張った」つもりになればそれでいいのか,このことがいま問われています.

従来型の闘い方では負ける公算が大
現在,教育基本法の運命がきわめて厳しい状況となっています.よほど幸運なことがない限り,わが国は数ヶ月後には,この戦後民主主義の貴重な宝を失った未来を迎えることになります.政府・与党が「追い込まれている」とか,明確な根拠もなく,廃案に追い込むことが「十分に可能」というような,大本営発表のようなことを言っていてはいけません.教基法擁護の陣営を元気づけたいという気持ちは分かりますが,「追い込まれている」のはどちらかと言えば擁護勢力の方です.状況を冷静かつ正確に認識し,それを変えるのに「必要な」方針が必要です.本当に阻止しようと言うのなら,何かの幸運を当てにするわけには行きません.

この状態を挽回するにはよほどのことが必要だと思われます.従来からの,集会やデモ,ファクスやメールでの要請といった手段だけでは阻止は困難と思われます.過去,周辺事態法やイラク特措法など,護憲勢力は繰り返し大きな集会を開くなどの運動で対抗してきましたが,国会では負け続けました.それに比べて今回が特別に有利な状況があるという根拠はありません.これまでの轍を踏んではいけません.

必須な活動分野としてのテレビCM
「よほどのこと」とは,何と言っても教基法改悪の危険性を,短期間にしかも大多数の,数千万人の規模で国民に訴えることです.それにはどうしてもテレビCMが必須であると思われます.実際,改正案の内容や問題点はもちろん,現行の教育基本法そのものが一般にはほとんど知られていないのが実態です.これは憲法九条をめぐる状況とは全く異なります.憲法は学校で教えられますが,教育基本法はこれまで大学入試にも出たことはないでしょう.ほとんどだれも知らないと言ってもいい程です.したがって,この状況を急速に是正するにはテレビCMしかありません.

反対集会を繰り返し,それに多くの人を動員しても,それだけでは阻止することはまず無理と思われます.なぜならメディアはこれを意図的に無視するので,たとえ何万人集まっても,大半の国民にとってそれは無かったに等しいのです.メディアのこのような現状をこの一ヶ月で変えることは困難でしょう.であれば,我々でテレビというシステムの一部を買い取るしか方法はありません.繰り返しますが,集会などで盛り上げていけば止められると考えるのは「幻想」であり,危険です.法案が成立した後でいくら「メディアの責任が大きい」などと憤慨してみても何の役にも立ちません.メディアを利用しなかった私たちにも責任があるのです.

「非常事態」にふさわしい「非常手段」を
テレビCMには大きな資金が必要なため,個人や小さな市民団体ではとても不可能です.本来なら日教組などの大きな組織が動くべきです.日教組は教基法問題で「非常事態宣言」*を出しています.もしこれが言葉だけでないのなら,「非常事態」に見合った「非常手段」が取られてしかるべきでしょう.しかし今までに見られるのは,集会やデモ,ファクスやメールでの要請といった「通常手段」のみです.

どのくらいの費用が必要か私自身は不案内ですが,仮に1億円としても(松坂投手の「入札額」のわずか60分の1!),もし個人カンパなら1万人×1万円で達成できます.教育関係の労組は数千万円を出すべきです.反対勢力の個人と組織にそれぐらいの資金力は絶対あるはずです.素晴らしい印象的なCMであればだれでも惜しまずにお金を出すはずです.

そのCMの内容ですが,この法案が成立したらいかに息苦しい社会になるかということを,鮮やかに印象づけるようなものでなければなりません.そして話題性も持ち引きつけるものです.そのための有能なCM制作の人材を見つけなければいけません.このようなプロジェクトの成否はひとえにCM作家の才能にかかっています.護憲勢力ないしその手が届くところにもそのような作家はいるはずです.

保守層に浸透するテレビCMを
私なりにそのCMのイメージをスケッチして見ました.

現行教基法の抽象的な規定(人格の完成)と,徳目を強制する改正案を対比させる.
現行法が施行されたあとの日本と北朝鮮のイメージを重ねる.
現行法が「人格の完成をめざす」と抽象的であるのに対し,改正法案では,次に掲げる目標を「達成するよう行われるものとする」とあることを表示する.
  伝統と文化を尊重し(1), 我が国と郷土を愛する
(1)の「実例」として,茶髪は「伝統」に反するとして,丸刈りにされるシーンなど.

これは若者向けを想定しましたが,他に中高年保守層向けなど,数種類のものが必要でしょう.排外主義の危険があろううとも,やはり北朝鮮のイメージ(たとえばあの極端に整然とした軍隊の行進)を使うことは今日決定的に重要だと思います.戦前の日本をオーバーラップさせるのがオーソドックスかも知れませんが,しかしこれでは“いつものサヨクのメッセージ”とフィルターされる可能性が大です.不可欠なのはやはり北朝鮮のイメージと思います.これこそがいま大量の人々の脳に,情報にスティグマを付けてインプットする最強の「ベクター」(生物学用語.細胞に目的の遺伝子を導入するための遺伝子の運び屋ウイルス)です.要は,保守層の人々に浸透するCMにしなければならず,そのためには保守層や右派の語彙やイメージを使用することが重要だと言うことです.

その時代の最強の「武器」で闘わなければ勝てない
優れたテレビCMが大きな効果を持つということはだれもが認めるところだと思いますが,護憲勢力は今までほとんどこれを使っていません.これは新聞の意見広告とは対照的です.その理由はまず第一に,費用が極めて高額なことが挙げられるでしょうが,それだけでなく,テレビやそのCMというものを蔑視する心情があって,そのためこの分野のことをあまり考えようとしないということもあるのではないでしょうか.しかし,民主主義は国民の多数の意見で動くものであり,そのためには国民の大多数にメッセージを届けなければなりません.集会や駅頭での宣伝だけでは,情報やメッセージをこの「大多数」に届けるのは困難です.現在のところテレビを超えるメディアはありません.インターネットがテレビの影響力に追いつくのは,この一ヶ月では無理です.ですから支配層はこれまでテレビを操って思うように事を進めているのです.彼らは,われわれがテレビに目を付けないことを「バカなやつらだ」,「しめしめ」と思っているかも知れません.

アメリカのメディア広告では商業目的とそれ以外とで料金設定が違うと聞きます.日本では,新聞広告の場合は名目料金は同じで,「値引き」というかたちで意見広告を安くしているようです.同様のことはTVでも行われるべきですし,この価格交渉も「メディア対策」の運動の一局面でしょう.さらに,アメリカのように名目でも別立ての料金設定を目指すべきでしょう.

教基法擁護勢力の「愛国心」が試されている
教基法に「愛国心」を盛り込むという教基法改悪に反対する人々こそが実は「愛国者」だと思います.つまり,この国を,国が法律で徳目を決めるような『イデオロギー国家』に転落させてはならない──私もそうですが,教基法改悪反対で立ち上がった人たちにはこのような思いがあるはずだからです.まさに「体制擁護勢力」の「愛国心」が試されていると思います.この貴重なる「国家財産」を保全するための一億円程度の「広告費」を惜しんではいけません.(2006年11月23日)

* 日教組の「非常事態宣言」
http://www.jtu-net.or.jp/news/06/10/26n1_1.html