映画を見たくなって何かいいのをやってないかと探してみた.Vフォー・ヴェンデッタというのが,ジョージ・オーウェルの『1984年』的な世界を描いているようで興味をそそられたので見に行ったが,実に面白かった.

第三次世界大戦後の近未来の英国はファシズム国家になっている.アメリカはどこかの国の植民地という設定はヨーロッパ映画(英独共同製作)ならではか.映画は外出禁止令を無視してロンドンの町に出たイヴィー(ナタリー・ポートマン)が自警団の3人の男に襲われるところから始まる.そこに謎の仮面の男“V”が登場する.

「テロ」対策を口実に張り巡らされる国民監視網,テレビによる民衆支配という今日的な政治のあり方と,それへの民衆の反乱がテーマだ.“V”がこれに対する革命を企てる.“V”は独裁者よりも何よりも民衆の臆病さを憎んでいるようだ.映画の始めの方でTV局を乗っ取り,全国民にアジ演説をするが,そこで「罪ある者を探すなら,鏡を見よ」と,国民の怯懦こそが犯罪だと突き放す(こあたりは映画パンフの解題からのパクリ).そして次の決定的なセリフ;

民衆は政府を恐れてはならない.政府こそ民衆を恐れるべきなのだ.
PEOPLE SHOULD NOT BE AFRAID OF THEIR GOVERNMENTS. GOVERNMENTS SHOULD BE AFRAID OF THEIR PEOPLE.

映画の中には,9−11事件を連想させるシーンもあり,またシェイクスピアの戯曲のセリフも引用される.シェイクスピアに疎い私は,読んでおけばもっと楽しめたのに,とちょっと口惜しい.

原作は,80年代のサッチャー政権への反発に動機づけられた当時の劇画ということだが,いかにも劇画由来の奇想天外さと,そして政治性とを持っている.とてもすばらしいポリティカル・ファンタジーだ.日本映画にもこのような娯楽性あふれる政治映画が欲しいものだ.わが国にもたくさんの「ガイ・フォークス」がいるのだから.

明治大学の越智道雄という人の意味深な「解題」*が載っている映画のパンフレットもオススメ.“V”の仮面は映画グッズとして売られているようだが,これを買って帰った観衆が革命を起こすかも知れない!???

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5月1日追記:再出発日記さんの.「共謀罪に反対しよう『 Vフォー・ヴェンデッタ』」という記事にあるように,この映画はそのまま共謀罪反対運動に役立ちます.多いに宣伝して広めましょう.