三四郎日記さんが国立大学人件費の5年間5%削減の問題を取り上げておられました.当事者でもあり,書かなければいけない問題とは思っていましたが,これに触発されてキーを打ちます.
ここで問題にしたいのはそれに対する国立大学の対応についてです.5%削減の是非そのものの議論は,はじめたらきりがないという気もしますので.
昨年末の閣議決定で,公務員の削減と抱き合わせで,独立行政法人となった国立大学の人件費削減の方針が出されたのですが,まだそれが法案にもなる以前に,おそらくほとんどの国立大学がその「中期目標」(註)
人員削減の問題に関しては,これまた独法化の時の宣伝文句として,「国家公務員の枠から外れれば定員削減の対象から外される」というものがありました.これまた「ガセ」だったわけですが,当時これを,政府の口移して宣伝した大学人はどう責任を取るつもりでしょうか?
似たような,国家機関,要するに「お上」に対する極端な従順さ,「権力者への思いやり」とも言えるほどの態度は,4月からの実質的な賃下げに対する国立大学教職員や組合の対応にも見られます.公務員ではなくなったので「人事院勧告」とは無関係になったはずなのに,文部科学省はその勧告,つまり賃下げを国立大学にも適用しようとしました.これは使用者側による一方的な不利益変更であり,労働者側がノーと言える十分な法的根拠があるにもかかわらず,労働組合は口先だけの「反対」でほとんどが実質合意をしています.国立大学・高専の組合の連合体の全大教(全国大学高専教職員組合)は相変わらず何の指導力も発揮していません.
独法化問題そのものについては,私が事務局長を務めた「全国ネット」のサイトをご覧頂ければ有り難いです.
以下4月11日追記.
註:中期目標
「中期目標」とは,各国立大学法人の6年間の達成目標として文部科学大臣が定めるもの.
しかし,衆議院の付帯決議では「大学の自主性・自律性を尊重」すべしとあり,さらに参議院の付帯決議では,「中期目標の実際上の作成主体が法人である」とまで書かれている.
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フランスでのCPE撤回のニュースに接しての感想です.いったん法律になってしまったものまで世論の力で撤回させるフランス,これに比べ,法案さえない,単に政府が方針を出した(閣議決定)だけで,それを先取りしてまで従順に受け入れる日本(の国立大学),これを雲泥の差と言うのでしょう.CPEが解雇自由という,労使関係の根幹に触れる重大問題という,事柄の性質の違いはもちろんあります.それにしてもフランスの労働者・市民,それに高校生も含めた学生の連帯の力は賞賛に値すると思います.何かの記事で書いたと思いますが,これは「連帯」という言葉の占める位置と関係があるのかも知れません.ヨーロッパでは公的文書にもこの言葉が積極的な意味で使われます(例えば「高等教育世界宣言」).つまり「連帯-solidarity」はヨーロッパでは徳目の一つとなっているようです.「ジコセキニン」の代わりに「レンタイ」という言葉を流行らせれば,少しは事態が好転するかも・・・.