続けて昨日は「ロード・オブ・ウオー」を観た.これも秀作だ.でも観客の入りはあまりよくない.正月からシリアスな重い作品を見る気にならないという人が多いのかもしれない.武器売買の「個人商店」の話である.

このような「小者」の話で終わるのかと思ったが,映画の最後の方で主人公に「最大の武器商人は合衆国大統領だ」と言わせて,この問題の本質を突いている.ただ,「商人」だけで,武器メーカーの話が全く出てこなかったのはやや不満ではある.とは言えハリウッドがこれだけの骨太な作品を作ったのだから,120点の評価をしたい.

映画のパンフレットによると,内容が内容だけに,アメリカでの資金調達が不可能となり,「さまざまな国の支援者から協力が集ま」り,カナダの配給会社が配給に名乗りを挙げたことで制作が可能になったとのことだ.

映画の終わりに近い頃,主人公が弟を連れて,アフリカのある国の独裁者と取引をするシーンがある.交渉の席を離れた弟が,近くの難民キャンプの親子が民兵に殴り殺される現場を見てしまう.持ってきたトラック満載の武器がこのキャンプの難民の殺戮に使われると覚った弟は,商品の手投げ弾の一つを,2台のトラックのうち一つに投げ込み,爆破させる.弟はすぐに護衛の兵士に射殺されてしまうが,主人公は,弟の死を看取り,ショックを受けつつも,商談を続け,半分の代金をダイヤモンドの原石で受け取る.

このシーンを見て10年前のある事件を思い出す.イギリスからインドネシアに輸出される予定のジェット戦闘機が,東チモールの住民殺戮に使われることが明かだったので,4人の女性が機体をハンマーで破壊して輸出を止めた.ところが,何とイギリスの裁判所は彼女らを無罪としたのである.この事件のリーダーのアンジー・ゼルターさんの文章が月刊誌に掲載されている.[→「地球市民の責任」,アンジー・ゼルター,岩波「世界」,99年11月号] [→全文] (リンク修正)これの元になった文章はウェブに掲載している.

「市民社会と地球人の責任−−武器貿易と東チモール−−」,アンジー・ゼルター(リンク修正)
(実はこの宣伝をしたくてこの映画の記事を書いたようなものです.)

このような直接的な方法ではなくても,武器貿易や武器生産を止めるために市民ができることはいろいとあると思う.

その一つの例を紹介する.このアンジー・ゼルターさんが創立した反核直接行動団体で,このブログでも何度も記事にしている「トライデント・プラウシェアズ」だが,その人たちが昨年,武器メーカーの一つロッキード・マーティン社のロンドン事務所を封鎖した.

「ロッキード・マーティン、ロックアウト 大量破壊兵器メーカーの居所暴露される」(2021/9リンク修正)
 http://ad9.org/goilsupt/event04/r040518J.html

その後,ロールス・ロイス社に対しても同様の行動をおこなっている.これも「ゴイル湖運動家支援」のサイトにあるので見て欲しい.(2021/9リンク修正)
 http://ad9.org/goilsupt/goilsupt.html

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きょうは「東チモールプラウシェアズ」の10周年記念日
99年の戦闘機破壊行動の文章をアップロード 

2020/6/17追記 その後の当ブログの,アメリカの軍備問題の関連記事の一つです.いわば,「死の学問」からどう脱出するか,という問題です.
「冷戦とアメリカの科学」最終章の抜粋
2021/11/15追記 上記の「冷戦とアメリカの科学」、1月に全訳出版しています。タイトルは「米国の科学と軍産学複合体」。