先日,「共産党の大会決議案について-これで九条が守れるか?」という記事を書いたが,ブログ上でこの種の記事は極めて少ないようだ.同党の党員に限らず,左翼やリベラルの人にとっては関心のある話だと思うので,意外な感じがする.地方議員など党のメンバーの人のブログもたくさんあるが,この議案について自分の意見を述べているのはあまり見かけない.党員の人があまり発言しないのは,古い規約が未だに頭から抜けていないからではないかと思われる.

実は,以下に述べるように,現行規約によると,「議案」の段階で党員が意見を公表するのは自由なので,折角のブログでもっと活発に発言してもらいたいと思う.

2000年の22回大会で改正されるまでの規約には,次のように,公開の意見表明を制限する条項がいくつかある.

(1994年規約から)
3条 党員の権利は,つぎのとおりである.
(一)党の会議や機関紙誌で,党の政策・方針にかんする理論上・実践上の問題について,討論することができる.ただし,公開の討論は,中央委員会の承認のもとにおこなう.

21条,最後の方
全党の行動を統一するには,国際的・全国的性質の問題について,中央機関の意見に反して,下部組織とその構成員は,勝手にその意見を発表したり,決議したりしてはならない.

22条 党の基本的な問題について,全党討議を特別に組織するのはつぎのばあいである.
(一)(二)(三)略
この全党討議は,中央委員会の指導のもとにおこなう.

ところが,2000年制定の規約では,これらは大幅に緩和され,議案の段階での公開の議論を制限する条文はない.

94年規約の21条と類似の規定が,現行規約の5条(党員の権利と義務)と17条1項にあるが,「勝手に発表」してはならないのは,次のように,「党の決定」や「党の全国方針」に反する意見であり,「中央機関の意見」に反する意見ではない.これは大きな違いである.

第五条 党員の権利と義務は、つぎのとおりである。
(五) 党の諸決定を自覚的に実行する。決定に同意できない場合は、自分の意見を保留することができる。その場合も、その決定を実行する。党の決定に反する意見を、勝手に発表することはしない。

第十七条第一項
全党の行動の統一をはかるために、国際的・全国的な性質の問題については、個々の党組織と党員は、党の全国方針に反する意見を、勝手に発表することをしない。

つまり,大会議案は文字どおり「案」であって「決定」ではないので,この条項による規制を受けない. また,旧3条の但し書きや旧22条に相当する規定はなくなっている.

以上をまとめると次のようになる.

党員の意見公表の制限に関する規定の比較

現行規約(2000年改正)旧規約(1994年改正)
「勝手に意見を発表」の制限「党の決定に反する意見」,「党の全国方針に反する意見」の発表を禁止「中央機関の意見に反して」の発表を禁止
「公開の討論」の規定

なし

中央委員会の承認が必要(3条1項)
「党の基本的な問題についての全党討議」の規定

なし

中央委員会の指導のもとにおこなわれる(22条)

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