九条擁護論を書くと予告しましたが,それより急いで,政治戦略論について述べたいと思います.理由は,ブログ「世に倦む日々」の半年ほど前の記事「憲法9条を守る政治戦略 ‐ 唯一の隘路としての護憲新党」に触発されて,というより,ショックを受けたからです.

 この記事は次のようなショッキングな出だしで始まります.

改憲は平和裏には行われない。改憲は謀略テロ戦争を契機にして発議され実行される。その時期は日本と米国の一握りの権力者が極秘裏に決める。謀略を承知しているのは謀略を企画し裁可したわずかな人間だけで、自民党の多数を含め、マスコミも一切真実を知らされない。・・・・

 これは決して大げさな話ではなく,全くあり得る話です.謀略によってことを運ぶという権力のやりかたは,歴史にはいくらでも例があり,最近では9.11にもその疑いが出ています.何年後かに事実が暴露されても後の祭りです.また,先日のメディア選挙を目の当たりにすれば,仮に謀略がなかったとしても,改憲キャンペーンがメディアによって本格的に展開されれば,現在なんとか50%を占める護憲世論もひとたまりもないでしょう.

 また同ブログは,社・共の護憲政党を鋭く批判してもいます.

社民党や共産党に一票投じている有権者は、確かに九条改悪の危機感から両党を支持しているのだろう。けれども二つの政党の幹部たちが本当に真面目に改憲を阻止しようと考えているとは思えないのであり、改憲の現実性をどこまで認識、実感しているのか不明なのだ。危機感が無い。本気で改憲を阻止する意志があるなら、すぐにでも合同新党の準備を進めるべきではないか。

 党の合同は無理でしょうが,少なくとも小選挙で「競い合う」余裕などなかったはずです.これは「刺客」などと内部対立で自陣営を盛り上げられた自公民など体制側の場合とは状況が全く違います.「世に倦む日々」子が言うように,社・共の幹部が本気で改憲を阻止するつもりがあるのか,たしかに疑いたくなります.共産党の選挙結果のまとめ「総選挙の結果について」を読んでも,あまり危機感が感じられません.

やはり,このブログ記事が主張するように,次の国政選挙が鍵になるでしょう.

現実の目標は来年の参院選で公明党を凌ぐ1千万票超の票を獲得すること。「9条の会」の発起人や賛同者に名を連ねた著名人が候補者になればよい。赤瀬川隼、天野祐吉、池澤夏樹、石坂啓、永六輔、大江健三郎、大塚英志、大谷昭宏、岸田今日子、小林亜星、ちばてつや、湯川れい子、吉永小百合。共産党や社民党の古臭い看板が変わり、党利党略ではなく護憲が真の目的となれば、必ず多くの国民がそれに応えて一票を投じることだろう。新党を立ち上げ、護憲のモメンタムを上げ、衆院を解散させ、憲法を争点にした総選挙で百議席を取る。民主党を二つに割って護憲派を吸収し、そして創価学会と乾坤一擲の護憲協定を結ぶのだ。

要するに,「精一杯頑張った」ですまされるのはアマチュアで,プロなら結果を出さなければいけません.つまり,「改憲阻止」という結果をまず絶対条件として,そのためには何が必要か,という「逆算」をしなければならないのです.道徳的,法的に許されるありとあらゆる方策を俎上に乗せて検討すべきです.ところがそのような「企画書」をまだ見たことがありませんし,それを作ろうという努力もいまのところよく見えません.

組織というものは社会運動に不可欠のものですが,同時に,大量の「指示待ち人間」を作ってしまう危険もあります.多くの独創性が眠らされるのです.「中央が最大限,いろいろ検討した結果のはずだから,この方針しかないのだろう」と思って「安心」してしまうのです.メンバーが指導部を信頼するのはいいのですが,同時に懐疑心も持たないと危険です.あたりまえのことですが,幹部といえども全知全能ではないのです.実はこのことは政党における内部民主主義のイロハのはずですが,意識的に努力しないとしばしば蔑ろにされてしまいます.

私も,国立大学の独立行政法人化問題で,何度となく東京に足を運び,いろんな団体の人々と接触しましたが,その経験から得たのは,何でも東京が優れているとは限らない,東京を買い被ってはいけない,ということでした.実際,国立大学の教職員組合の連合組織(やはり東京にあります)は,本気で独立行政法人化を阻止する気持ちは持っていなかったのです.

政党に限らず,市民団体でも,たいてい本部は東京にあるでしょう.東京を買い被らないこと,あるいは組織幹部を買い被らないこと,自分の感覚,感性に自信を持つこと,このことを訴えたいと思います.ひらめきやアイデア,そして真実へのささやきは,決して「組織」に現れるのではない,一人ひとりの心の中にしか現れないのです.

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