(2018年11月2日記:先月来この記事にほとんど毎日2桁のアクセスを頂き(末尾にグラフ,2019/8/30更新),感謝申し上げます.この本の翻訳・推敲は2019年4月9日全章終了,本格的に出版社探しなどにかかりたいと思います.2020/2 出版の目処がつきました。2020/12/31: 2021年1月刊行予定)2019年9月20日現在の閲覧数27,625.2019/4/28および5/3: 以下のイントロダクションの訳を改訂しました.改訂は中程の「科学によって、第二次世界大戦は・・・」以降です.
2019/7/2: 人物・組織の相関図を各章ごとに付けました.
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今週末に筑波で,「軍事研究、『軍学共同』問題を考える」と題するシンポジウムが開催されます.
http://no-military-research.a.la9.jp/archives/215
出席できませんが,これに協賛して,アメリカのトップ大学での軍事研究の歴史を活写した本を紹介します.当ブログでも何度か紹介しましたが,SW Leslie氏の,"The Cold War and American Science" という本で,1993年出版ではありますが,今わが国がこの轍を踏みかねない状況にあることを考えると,全く「新しい」本とも言えます.

その目次です.8章までは奇数がMIT,偶数がスタンフォードについて書いてあります.
1 章 軍のまわりに分極する大学 1章相関図
2章 エレクトロニクス分野の最先端を目指す 2章相関図
3章 軍事目的の誘導・制御技術 →(2018/11/2改訂更新) 3章相関図
4章 ソニック・ブーム(衝撃波音) 4章相関図
5章 核の力 5章相関図
6章 加速器の物理学 6章相関図
7章 国家の仕事 →末尾の文学的な一節 7章相関図
8章 材料科学 8章相関図
9章 審判の日々:3月4日と4月3日 →抜粋

以下,その長いイントロダクションの全訳です.全部の章の約17分の1の要約も作っています.
関連記事:アメリカの軍事経済の度合いと変化アイゼンハワー大統領が指摘したもう一つの「脅威」会議に次ぐ会議,地平線をも隠す書類の山,そして・・・

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冷戦と米国の科学

MITとスタンフォードにおける軍産学複合体

イントロダクション

良きにつけ悪しきにつけ、冷戦は米国の科学を定義し直した。第二次大戦後の10年間に、国防総省(DOD)は、特に物理科学と工学において、また自然科学や社会科学の多くの分野においても同様に、アメリカの科学の単独の最大の後援者となった。国家安全保障をめぐる政治と、ペンタゴン(米国防総省)の、競争におけるハイテクの重要性にたいする信念を原動力として、国防目的の研究開発費の支出は朝鮮戦争の終わりまでには戦時のピーク値を超え(すでに戦前のレベルの50倍に達していたが)、スプートニク・ショックの後、1960年までには、年間55億ドルという目も眩むような金額に達していた。1950年代を通じて、国防総省は平均して連邦政府の研究開発予算全体の80%を占めていた。