続編(その2)はこちら,さらにその3
「テレビ報道職のワーク・ライフ・アンバランス: 13局男女30人の聞き取り調査から」というタイトルの本があります.メディア問題を新しい視点で分析したもので,現在の政治状況とも深くかかわります.その中から一節を紹介します.

第1章・テレビ報道職がつくられるまで,の第2節第4項,「『まっさら』なまま職につく」の部分(2節の筆者は小室広佐子氏,太字は引用者)



テレビ報道職の生育環境は、父は専門職や大企業勤務、自営業で、経済的にも文化的にも中産以上の階層に属する家庭であり、専門的職業をもつ父からは小さいころから報道についての話を聞かされ、専業主婦の母からは女性も仕事をもつよう強く背中をおされた。出身大学は一流の4年制大学で、勉強以外の習い事もこなし教育にはお金を惜しまない家庭環境にあった。



学生時代は記者を志して大学の門をたたいた者もいれば、テレビという新しいメディアに関心のある者もいた。そして報道にもテレビにも関心のなかった者も放送局に入社した。



調査を通じて、日本のテレビ報道職は、欧米のように大学や専門機関でジャーナリズムを学び、中小の放送局で実績を積むというキャリアアップシステムとは異なる供給プロセスを経ていることが確認された。すなわち、日本の放送局は、すでに持ち備えている報道職としての専門的能力を測って採用するのではなく、専門職としては色のつかない「まっきら」な状態の学卒者を、一般教養や英語など、専門性とは別の尺度の試験を課して新人として採用するシステムをとっている。