いろいろ書きたいことがたまっていますが,とりあえずトリチウム問題について.
先月の科学者会議九州シンポで,鹿児島大学理学部の生物の方が原発からのトリチウム放出に触れていました.九電のサイトを見ると,確かに出ています.次の,「放射性液体トリチウム放出実績」のグラフです.
http://www.kyuden.co.jp/nuclear_radiation_waste.html

対数目盛りなので,普通のリニア目盛りに書き直しますと,次のようになります.

だいたい3〜10×10^13ベクレル/年になります.

福島原発事故で初期に放出された放射性セシウムが3ないし4×10^16ベクレルとされているので,年間でこれの千分の1程度となります.現在(数ヶ月前?)の福島第一の常時放出量が毎時1千万ベクレルなので,年間にすると8.76×10^10ベクレル,これに比べると千倍になります.いずれにせよ結構な量です.旧単位だと,年間1000キュリーのオーダーです.(ちなみに,病院で放射線治療に使われるコバルトが3000キュリー程度)

原子力資料情報室によると,「リチウムのような軽い元素と中性子の反応および三体核分裂によって生じる」とのことです.(三体核分裂とは,ウラン235が2つではなく3つに分裂すること)
http://www.cnic.jp/modules/radioactivity/index.php?cat_id=1

どうもこのことと,原発周辺で白血病が多いという話が結びつくような気がしてなりません.トリチウムは非常に低いエネルギーのベータ線しか出さないため,ベクレルに対して,外部被ばくはもちろん内部被ばくも非常に小さな値にしかなりません.したがって「シーベルト」で効くと言うより,ECRRの最新報告にあるように,元素転換効果が大きな役割をしているのではないでしょうか.

トリチウムは化学的には水素と変わらず,生体は区別しないと思われます.崩壊すると(ベータ線を出すと),水素だったはずが突然ヘリウムに変わるので,水素結合や生体分子に組み込まれた水素だった場合,その分子が壊れてしまうでしょう.言ってみれば分子という組織の中での原子の「裏切り」,「寝返り」.水分子にはまっている時は,突然OH+(OH-でなく)が残されるので,活性酸素が生じるかも知れません.
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