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ネット上で「非暴力直接行動」という言葉がしばしば見られるようになりました.その目的は大飯原発の無法な再稼働を止めるため,あるいはオスプレイ配備のような戦争準備活動を阻止するためなど,さまざまでしょう.沖縄・辺野古では,「海上座り込み」などの直接行動で,今に至るまで基地建設を阻止して来ています.いわば辺野古の自然と住民の安全を「守る」ための直接行動です.

非暴力直接行動は,そのみかけの「過激さ」とはうらはらに民主主義の機能不全を補完する有力手段です.イギリスでは議員もこの行動に加わり,逮捕もされています.
http://pegasus1.blog.so-net.ne.jp/2007-01-11

第一次大戦の際,アインシュタインは戦争に反対して,「2%の人間が兵役拒否すれば,政府は戦争を継続できない.なぜなら政府は兵役対象者の2%の人数を収容する刑務所を保有していないからだ」と発言したと言われます.多くの若者が胸に「2%」と書かれたバッジを付けたそうです.今の日本に当てはめれば,たとえば大飯原発再稼働阻止で,準備作業を阻止するべく道路を封鎖して逮捕者が出たとしても,その数が膨大であればその逮捕者を収容する留置場を手配するのに困難が生じるでしょう.

実際,イギリス・スコットランドでは,反核運動「トライデント・プラウシェアズ」は核兵器基地の封鎖行動でそのような状況を作り出しています.あまりにも逮捕者が多いため,まともに勾留・裁判に回したら司法システムが麻痺するので,逮捕はしても「キャッチ・アンド・リリース」状態になっています.

非暴力行動のほとんど唯一の教科書(註)と言える「トライ・デンティング・イット」[リンク修正]から数枚の写真を紹介します.画像をクリックすると全画面表示になります.(第4章前半後半オリジナル)

逮捕されようとするスコットランドの教会聖職者たち.2000年2月14日(p.75)

手続きと新しい友達とを待つ.2000年2月14日(p.76)

ファスレーンでの「ディ・フェンシング」(フェンス破り).1999年5月(p.68)

逮捕されることはもちろん決して容易なことではないので,十分な準備が必要です.法的・精神的,物質的なサポート体制を事前に周到につくっておく必要があります.非暴力を貫くためのトレーニング,研修も重要です.また,逮捕によって職を失いかねないような場合はダメージが大きすぎるので全く勧められません.逆に,家庭の条件に恵まれたリタイアした人の場合は,もし裁判で有罪になっても罰金の代わりに禁固刑を選べるのであれば,むしろ生活費の節約になるかも知れません.

「ファスレーン365」と言う国際市民による英基地封鎖には日本チームも参加しました.その時の写真は次にあります.「キャッチ・アンド・リリース」の実例です.
http://www.faslane365.org/en/japanese/japanese_photo_gallery
http://faslane365.blog86.fc2.com/blog-entry-39.html
http://pegasus1.blog.so-net.ne.jp/2007-07-30
この活動をまとめた単行本"Trident on Trial"もあります.
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(註)学問的・包括的に非暴力直接行動を論じた「市民的抵抗」もとてもいい本です.
http://pegasus1.blog.so-net.ne.jp/2011-10-04