BLOG BLUESさんのブログ記事で,社会主義者の草分け堺利彦の評伝「パンとペン」を知り,さっそく購入して,3分の1ほど読みました.幸徳秋水らとの「平民新聞」が発禁となったところまでで,これから,生計のために「売文社」という,今で言えばコピーライターのような事業を興す話に入ります.これが本のタイトルの意味であり,主題です.面白くなりそう.応援のクリック歓迎

堺利彦は福岡県出身ですが,もう一人,福岡は博多出身の傑人,川上音二郎を主人公とする博多座の舞台が昨年末にありました.これはNHK福岡の放送で事後に知り,そのハイビジョン中継の再(?)放送があるというので,さっそく高画質録画し,4回ぐらいに分けて観ました.音二郎は自由民権思想を,今の言葉で言えば「ラップ」で全国に広めた人です.

印象に残ったシーンの一つですが,鋭い政府批判をする音二郎を伊藤博文が懐柔しようとして,ヨーロッパ旅行の費用を出そうと持ちかけます.これに対し音二郎は,カネは要らない,渡航許可だけでいい,と潔く答えます.そのシーンの台詞のやりとりでは,板垣退助の自由民権運動は,同様の懐柔策でやられたようで,板垣の場合はカネをもらったように描かれていました.史実はどうなのでしょうか.

いずれの主人公も,戦前の言論弾圧の中で逮捕も恐れずに(音二郎は180回以上とも)自らの思想と表現のために果敢に闘った人たちです.「パンとペン」は,買った本の奥付を見ると出版から2ヶ月で4刷でした.また博多座の舞台は地元の劇団の人たちが中心に作ったもので,NHK福岡は舞台中継だけでなくその制作過程も特集番組として放送しました.

現在,ポピュリズムや排外的ナショナリズムの横行という後退現象が目立ちますが,これら二人への人々の注目は,もう一方で,真に勇気ある人々を求める空気も社会の中に生まれているのではないか・・・そのような希望を持たせてくれます.

写真は,博多座の向かい側の川端通り商店街入り口にある音二郎の像です.ドラッグして保存し,開き直すと大きなサイズになります.