9日追記:どうやら早とちりでした.読み進めると,以下の「ニューディリー放送」というのは,太平洋上の米軍が流していたのではないかと書かれていました(124ページ).お騒がせしてすみません.

原発問題のメールリストで知ったのだが,「原爆の秘密」という本の内容は衝撃的だ.大分県在住のノンフィクション作家,鬼塚英昭氏の著作で,2008年に発行されている.国外編と国内編の2巻だてで,国内編のはじめの5分の1程まで読んだところだ.応援のクリック歓迎

驚いたことに,原爆の対日使用は事前に公知だったというのである.原爆投下の前に,「広島」の地名も含めてインドのニューデリー放送が日本への使用を伝えていたという事実を,黒木雄司著*『原爆投下は予告されていた!』(1992年)を引用して紹介している.『原爆の秘密 国内編』のp.34〜36を引用する.


6月2日(月)晴後曇 午後7時



 こちらはニューディリー、ニューディリーでございます。信ずべき情報によりますと、アメリカのスチムソン委員会は、全会一致で日本への原子爆弾投下を大統領に、ワシントン時間の6月1日午前9時、勧告書を提出しました。また別の情報によれば、米艦載機約60機が南九州地区の航空基地を主体して空襲し、銃爆撃を致しました。繰り返し申し上げます。



6月4日 (水)曇 午後3時



 こちらはニューディリー、ニューディリーでございます。信ずべき情報によりますと、先般、スチムソン委員会においては、原爆投下勧告を米大統領に進言しましたが、軍内部において軍独自に実験してみる必要が急遽発生したため、本日、実験準備命令が出されました。実験部隊、実験場所は公表されておりません。繰り返し申し上げます。




7月16日(月)雨 午後10時



 こちらはニューディリー、ニューディリーでございます。信ずべき情報によりますと、本日(7月16日)も米軍P51百機は、前日に引きつづき東海地方の各都市を空襲し銃爆撃致しました。また別の情報では昨日(7月15日)、米国ニューメキシコ州アラモゴードで、世界最初の原子核爆発の実験に成功致しました。繰り返し申し上げます。



8月3日(金)晴 午前8時



 こちらはニューディリー、ニューディリーでございます。信ずべき情報によりますと、米軍は来る8月6日、原子爆弾投下第1号として広島を計画した模様です。原子爆弾とは原子核が破裂するものであって、核の破裂にともない高熱を発し、すべてのものは焼き払われることでしょう。繰り返し申し上げます。

ラジオ放送といっても65年も前のことなので,さすがにネット検索でもこの情報を見つけることは無理だろう.しかしこの放送はBBCの中継だったとのことなので,BBCの資料を調査すれば黒木雄司氏のこの証言が事実かどうか確かめられるはずだ.軍は当然外国の放送を傍受していたはずだから,広島への原爆投下を事前に知っていたことになる.ところが,当日その時刻に広島には空襲警報さえ出されていない.軍は多くの広島市民を,そして当日集められていたという多くの軍人を見殺しにしたことになる.

BBCの情報なら当然イギリスからも放送されたのだろう.しかしドイツの物理学者は8月6日の時点でもアメリカの原爆開発の状況を全く知らなかったことが,ハイゼベルグ,ハーンら当時の著名な物理学者をイギリスの「ファームホール」に軟禁して会話を盗聴した「イプシロン作戦」で明らかになっている.つまり,このような放送が流された時には彼らはすでに逮捕されていたということだろうか?

この本には他にもいろんな情報が盛りだくさんである.原爆の歴史は塗り替えられるかも知れない.

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* この本の中では「黒木勇司」となっているが,アマゾンなど本の検索では「黒木雄司」とあるので,こちらが正解と思われる.