当日のえり子さんの話で聞き逃せないものに,現在のテレビの状況についてのものがある.放送でしゃべる時の内容の制限である.憲法や九条のことなど言ってはいけないと事前に指示されるというのである.ある番組でのエピソードを紹介した.えり子さんの郷里の人との会話の際のこと,先日こちらにこられましたね,との問いに答えた後,さらに,何の用で,というので,講演,それではそのテーマは,というので,憲法のことだと返事したが,これが後で局からクレームを付けられたと言うのである.(録音したわけではないので,細かい点は正確ではないかも知れません.)

 大勢の前で話す時には多かれ少なかれ制限が加わるというような一般的な話ではない.憲法について触れるだけで文句をつけられるというのだから尋常ではない.しかも,えり子さんは憲法を守る,つまり「現体制を擁護する」という立場であり,そのような人の発言が制限されるというのだから,もはやかなりの程度クーデターが進行していると言わざるをえない.

 このような放送局の姿勢の原因の最大のものとして,スポンサーの態度があると言っていた.つまり番組スポンサーに「降り」られてしまうと局としてはどうしょうもないということだ.実際,テレビ東京での事例が挙げられた.(何の番組かは忘れたが,テレ東はスポンサーなしで予定通り放送したというから偉い.)

 しかし疑問に思うのだが,なぜスポンサーはそのような態度を取るのだろうか?大半のスポンサー企業は九条改憲派なのだろうか?軍需関連産業がそうなのは理解できる.しかしそれは全体から見れば少数だろう.やはり,我が国特産の「空気」によるものではないだろうか?つまり,ノーと言えば言えるのに,それは「自粛」するものだという思い込みである.別の言葉で言えば,ミクロな「水戸黄門の印籠」*が,社会集団の間や,個人の間でのすべての境界面で働いているのではないだろうか.つまり文化的なものではないのか,というのが私の意見である.

 排外主義の危険を冒しながらもどうしても隣国のことを比喩に使いたくなってしまうが,中味で嘘をつくだけでなく,「言論は自由です」という嘘も重ねている,つまり二重に嘘をついているという意味で,日本のテレビは朝鮮中央テレビよりも悪質ではないだろうか.(さらに続く予定)
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